相続実例⑪
■ 会ったこともない父親の相続
目次
- ■ 相続人関係図
- ■ 相続財産
- ■ 依頼までの経緯
- ■ 依頼内容
- ■ 対応と結果
- ■ ポイント
■ 相続人関係図
相続人は、長女1名。
■ 相続財産
① 自宅(土地・建物)
銀行預金・生命保険等は一切不明
■ 依頼までの経緯
ご相談者は、相続人のAさん。
亡くなられたお父様とお母様はAさんが1歳のときに離婚をされ、Aさんはお母様と暮らされていた。その後一度もお父様とお会いした記憶がなく、お母様は2年前に亡くなられています。
亡くなられたのは、相続人のお父様。お父様の死亡理由は自宅の火災。
法務局に確認したところ、居住されていた土地・建物はお父様名義。その他の預貯金などは自宅が全焼ではなかったのですが、大半が火事で燃えてしまっていたため、財産関係の書類はすべて焼失してしまったようです。
相続人は、相続をどのように行えばよいのかわからず、ご相談にお越しになられました。
■ 依頼内容
今回は、亡くなられたお父様が自営と言うこともあり、相続財産がプラスなのか、マイナスなのかも含めて相続財産の調査から始めます。
① 相続財産の把握。
② プラス財産とマイナス財産の整理。
③ 相続税有無の確認。
④ 相続税が発生した場合の税理士の紹介。
⑤ 名義変更手続きの補助
⑥ 自宅の売却。
■ 対応と結果
今回の問題点は相続財産を把握することです。そして自営を行っていたということもあり、会社の運営状況や未収金や滞納分など、亡くなられたお父様の生前の状況確認から把握することから始めました。
まず、会社の申告書が見つかり、申告書をもとに税理士へ会社の経営状態や保険の加入・債務・取引銀行の確認。
※税理士は過去2年依頼を受けたのみで親しくお付き合いはないようです。
個人の相続財産を確認するため、
①申告書に記載されていた取引銀行へ個人の普通預金・定期預金等の照会。
②申告書に記載されていた生命保険会社へ個人の保険の加入等の照会。
③申告書に記載されていた債権者に債務残高と個人の財務の有無の照会。
④ご自宅最寄駅と会社最寄り駅の全ての銀行・信用金庫支店宛の照会、郵便局への照会。
※現在では、法定相続情報で相続関係を説明できますが、この当時はすべて戸籍の原本を持参して還付を受ける時代ですので窓口回るだけかなりに日数を要しました。
以上の財産調査を行った結果、
相続財産は、自宅の土地・建物、銀行預金(3行)、生命保険(Aさん宛のもの)、債務は個人はなく、会社のもので少額です。
相続税は基礎控除以内で相続税はかからずひと安心です。
相続財産は判明しましたが、すべての預貯金と債務を把握できたとは限らないため、年末の通知が来る可能性もあり転送手続きを行い、年が明けるまで様子を見ることにしました。
1月中旬まで様子を見て銀行・証券会社や債権者等の通知もなく、自宅の売却を行い、今回の依頼は完了しました。
■ ポイント
今回の事例のように火事により相続財産の根拠となる資料がすべて焼失してしまう件というのは稀です。
しかし、今回の事例のポイントとして同居人がいなかったという点です。
同居していない相続人は、亡くなられた方の通帳や印鑑その他の財産関係が全く分からないという事態が起こります。
亡くなられた方の名義になっている不動産は、法務局等で調査すれば分かりますが、預貯金や生命保険、株式等については、同居人しか分からない事が多いのです。
離婚や高齢による配偶者の死亡など様々な理由でひとりで暮らしている方が多い時代です。すべてを知人につたえることも問題がありますが、何らかの形で相続人に相続財産を伝える方策を考える時期に入っているのかもしれません。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
■ 資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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