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3.82024

コラム

賃貸物件の「室内の修繕拒否」をすることができるのか、を考える

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 貸主の修繕義務
  • ■ 借主の協力義務
  • ■ 民法改正による明文化
  • ■ まとめ

■ はじめに


賃貸住宅において貸主や管理会社は、借主から賃貸している建物の一部に故障等の連絡をいただくと、一刻も早く修繕しなければ、と考えるものです。

どのような状態なのか、借主の立ち合い日時、業者への手配など早急な対応が必要となります。
ところが、早急な対応が必要であるにもかかわらず、「帰りは遅い」「家族も出かけていない」「休みは出かける」などの理由で借主が修繕のための立ち入りの日程を先延ばしにされた場合、周りの入居者などに迷惑がかかるおそれもあります。

そこで、賃貸住宅において借主が正当な理由なく修繕を拒否した場合、どのようなことが生じるのか、について考えてみたいと思います。

■ 貸主の修繕義務


民法において貸主には借主に対し、賃貸借の目的となる建物を使用・収益させるだけでなく、そのために必要な修繕を行う義務もあります。

そのため、借主に支障が生じるような不具合が発生した場合、早急に修繕をしなければなりません。

階段や外壁の修繕・塗装工事などは室内に立ち入らずに工事を実施することができますが、室内に立ち入り工事を行わなければならない場合もあります。

室内への立ち入りが必要な場合、借主の予定、業者の予定等を確認のうえ、修繕工事を行います。場合によっては上下階の入居者の室内への立ち入りをお願いしなければならないこともあります。修繕を行うためには、借主の協力が不可欠な場合があるのです。

しかし、借主が自身の都合を一方的に押し付けてきた場合には、いつまで経っても修繕ができず、故障による傷みや修繕箇所が広がり、建物の経済的価値を減少させることになります。

■ 借主の協力義務


貸主は借主に対し、賃貸借物件の修繕について義務として実行しなければならないものであり、借主が修繕してもらうこと自体を放棄しているのであれば、修繕自体を実施しないという対応も考えられます。

法的にいえば、借主が修繕請求権を放棄していると判断するということです。

しかし、貸主から見て自分が所有している不動産に損傷が生じ、その損傷から破損や汚損が拡大していくおそれもあります。

そして貸主からして自身の所有する不動産を健全に保つべき、自由に修繕できて当たり前であり、貸主の立場から考えると、修繕することを権利としても考えることができます。

このことは民法606条1項及び2項に規定されております。

貸主は、借主に修繕義務を負う一方で、借主は建物の保存に必要な行為を拒むことはできないとされています。

よって、借主は貸主からの修繕の実施を拒むことはできないと考えられています。

※借主に無断で立ち入ることができず、協力的でない場合には一時退去請求を行い、一時退去も拒まれた場合には賃貸借契約の解除を求めることができると考えられています。

■ 民法改正による明文化


2020年4月に民法が改正され、賃貸人の修繕義務について厳格化・明文化されています。

【条文】民法第606条 「賃貸人の修繕義務」

 【改正前】

(賃貸人による修繕等)
1.賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2.賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

【改正後】

 (賃貸物の修繕等)
1.賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
2.賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

今回の改正で、賃貸人は修繕義務を負うが、賃借人の帰責事由のある場合に修繕義務を負わないことを明文化しました。

■ まとめ


民法改正により借主が修繕等に協力的でない場合には貸主の対応を明確したことになります。

貸主は、建物の保存と安全を確保するために必要な修繕を行う権利があり、民法第606条の定めにより借主はこれを拒むことができません。しかし、この規定があるからと言って、借主の都合も聞かずに対応することも貸主には認められていません。この規定は、修繕の日程を数日選択できるにもかかわらず、全く対応しない場合です。

また、貸主は借主に建物の維持管理の協力をしていただけるよう、契約書などに明確な条項を設けるが大切となります。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

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