■ 目次
- ■ はじめに
- ■ 戸籍とは
- ー 戸籍そのものに関する情報
- ー戸籍に記載されている人の身分関係に関する情報
- ■ 従前からの請求制度
- ー本人等請求
- ー第三者請求
- ー職務上請求
- ■ 広域交付制度のより可能となった請求方法
- ー最寄りの市区町村の窓口での請求
- ー本籍地が複数ある場合、1か所の市区町村(最寄りの市区町村役場)の窓口での出生まで
- の戸籍を請求
- ■ 広域交付制度により請求できる戸籍と請求できない戸籍
- ー請求できる戸籍謄本
- ー請求できない戸籍謄本等
- ■ 戸籍証明書の「広域交付制度」を利用する際の注意点
- ー請求者本人が、市区町村の戸籍担当窓口に出向いて請求すること
- ー本人確認書類の提示
- ■ まとめ
■ はじめに
「戸籍謄本の広域交付制度」をご存じでしょうか。
相続手続において相続人が苦労されることに戸籍謄本の収集があります。
亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、相続人の確定をする必要があるためで本籍地を複数回にわたり異動されている方は、亡くなられた方の死亡日の本籍地の戸籍謄本を取得し、従前戸籍を順次さかのぼり、その本籍地の市町村役場の窓口に対し、出生までの戸籍謄本を申請のうえ取得しなければなりません。
この戸籍謄本の収集に関して、令和6年3月1日から「戸籍証明書の広域交付制度」が開始し、最寄りの市区町村の窓口に請求者本人が出向いて、複数の本籍地(全国各地の市町村)の戸籍謄本をまとめて請求できるようになりました。
※3月1日から広域交付制度が開始されていますが、各市町村役場により交付までの日数などに相違がありますので必ず担当部署へご連絡のうえ申請手続きを行ってください。
今回は、「戸籍謄本の広域交付制度」をわかりやすくご説明させていただきます。
法務省:戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行) (moj.go.jp)
■ 戸籍とは
戸籍とは、日本国籍を有する者(国民)が生まれてから死亡するまでの出生、婚姻、離婚、養子縁組、認知、死亡、身分関係などを登録し、公に証明(公文書)するためのものです。
そして、戸籍には「戸籍そのものに関する情報」と「戸籍に記載されている人の身分関係に関する情報」の2つの情報が記載されています。
●戸籍そのものに関する情報
本籍地、戸籍の筆頭者の氏名
戸籍が作られた理由と日付、戸籍が閉じられた理由と日付
●戸籍に記載されている人の身分関係に関する情報
戸籍に記載されている人の氏名、生年月日、父母の氏名、父母との続柄
出生、養子縁組、婚姻、離婚、死亡などの身分事項
では、戸籍はどのようなときに使われるのでしょうか。例えば、相続手続きで言えば、次に記載した場合に必要となります。
●有価証券の名義変更
●不動産の名義変更
●相続税の申告
●生命保険の請求
●預貯金払い戻し
●車の名義変更
相続手続きにおいて手続き可能である法務局、税務署、金融機関などでは手続きに来た方が、亡くなられた方の相続人であり相続権があるのか否か、不明なため、相続人であることを証明するために亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍と、相続人とのつながりを証明するために相続人全員の戸籍が手続きを行うためには必要となります。
これは、相続人を確定させない限り相続に関する法律関係を確定させることができないからです。
※相続手続きにおいて提出する書類は、法律上で規定されているもの、と金融機関によって求められているものと、が違う場合がありますので提出先に確認のうえ、書類を用意してください。
※法定相続人に関する情報を家系図のように一覧図にしたもので法務局に申請を申請を行うことにより、以後5年間、法務局の証明がある法定相続情報一覧図の写しの交付を受けることができるようになる制度で法定相続情報を提出することにより戸籍等を提出することがなくなります。
■ 従前からの請求制度
戸籍の請求制度については、本籍のある市区町村役場の窓口での直接請求、郵送による請求、代理人による請求が認められています。(広域交付制度開始後も変更ありません。)
(1)本人等請求
請求者本人、配偶者、直系尊属、直系卑属が対象。
※兄弟姉妹などは対象外のため、委任状が必要となります。
(2)第三者請求
正当な理由がある場合に限り請求が可能です。
※相続人となった者が、相続人同士にあたる兄弟姉妹などの戸籍謄本を取得する場合等。
(3)職務上請求
弁護士、司法書士、税理士など8士業による特定事務受任者に認められた第三者請求。
※受任した事務等に関する業務遂行に必要がある場合に限り、職権で必要な戸籍謄本等の請求が可能。
■ 広域交付制度のより可能となった請求方法
令和6年3月1日から、広域交付制度開始に伴い、次の請求方法が可能になります。
(1)最寄りの市区町村の窓口での請求
本籍地が遠くにある場合でも、最寄りの市区町村の窓口に本人が出向いて戸籍謄本を請求できるようになりました。
※住所地等にかかわらず全国どの市区町村の窓口でも可能です。
※広域交付制度を利用する場合は窓口対応のみであり、郵送による請求はできません。
(2)本籍地が複数ある場合、1か所の市区町村(最寄りの市区町村役場)の窓口での出生までの戸籍を請求
令和6年2月までは複数ある本籍地(又は過去の本籍地)の市区町村役場に対して、本籍地ごとに請求する必要がありました。
■ 広域交付制度により請求できる戸籍と請求できない戸籍
(1)請求できる戸籍謄本
「本人」、「配偶者」、「直系尊属(例、父母、祖父母など)」、「直系卑属(子、孫など)」の戸籍謄本
(2)請求できない戸籍謄本等
①「兄弟姉妹」、「おじおば(伯(叔)父、伯(叔)母)」、「甥、姪」などの戸籍謄本
※相続人同士にあたる兄弟姉妹の戸籍謄本は「広域交付制度」では請求できませんので従来とおり第三者請求での取得方法となります。
② コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍
コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍謄本は市区町村間のネットワークで共有できず、請求できません。
※従前どおり本籍地所在地の市区町村役場へ請求する必要となります。
③ 戸籍抄本(一部事項証明書、個人事項証明書)
戸籍抄本とは、戸籍に記載されている人のうち一人又は複数人の情報が記載されたものです。
④ 戸籍の附票(住所の履歴が記載されているもの)
戸籍の附票は戸籍法の改正(広域交付制度)とは関係なく、取得できません。
■ 戸籍証明書の「広域交付制度」を利用する際の注意点
(1)請求者本人が、市区町村の戸籍担当窓口に出向いて請求すること。
郵送や代理人による請求、士業による職務上請求はできません。
(2)本人確認書類の提示
本人の顔写真付きの身分証明(運転免許証、マイナンバーカードなど)を提示する必要があります。
■ まとめ
戸籍は、1872年(明治5年)に旧戸籍法が施行され、1947年(昭和22年)に民法が全面改正されています。
1947年(昭和22年)に全面改正されると、戸主とその家族ごとに作成されていた戸籍が、夫婦とその子ども単位で作成されるようになりました。
【戸籍の方式の違い】
- 明治5年式戸籍(1872年(明治5年2月1日)施行、壬申戸籍)
- 明治19年式戸籍(1886年(明治19年12月1日)施行)
- 明治31年式戸籍(1898年(明治31年7月16日)施行)
- 大正4年式戸籍(1929年(大正4年1月1日)施行)
- 現行戸籍(2011年(昭和23年1月1日)施行)
- コンピューター戸籍(1994年(平成6年12月1日)施行)
その後、2011年に起きた東日本大震災を契機に戸籍副本データ管理システムを導入し、法務省管轄により戸籍の副本を管理することになりました。
今回の広域交付制度は、この戸籍副本データ管理システムを発展させて活用することにより、1か所の市区町村(最寄りの市区町村役場)の窓口で出生までの戸籍を請求できることになりました。
ただし、3月は各市町村においても繁忙期であり、また、各市町村によってシステムの稼働状況が異なるようです。よって、広域交付制度にもとづき申請は受理されますが、各市区町村によって交付までに日数を要する場合がありますので窓口に事前に連絡のうえ、申請を行ってください。場合によっては従来とおり本籍地へ郵送による取得したほうが早い場合もあります。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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