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10.212024

売買の注意点(地中埋設物の負担責任)

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 地中埋設物とは
  • ■ 契約不適合責任が認められる基準
  • ■ 地中埋設物に関する売主の法的責任
  • ■ どこまで除去すればよいのか
  • ■ トラブルを回避するために
  • ■ まとめ

■ はじめに


不動産の売買において売主は、買主が土地を取得後、建物建築を始めたところ、地中から建築の障害となる地中埋設物が発見されたため、買主からその地中埋設物の撤去費用を請求される場合があります。また、地中埋設物撤去により地盤改良が必要となる場合、その費用も併せて請求され、紛争となる場合があります。

そこで、今回は、地中埋設物とは何か、売主にどのような責任が生じるのかを、考えてみます。

■ 地中埋設物とは


地中埋設物とは、土地の地下に埋まっている物全般を意味します。

たとえば、建物の基礎部分やコンクリート片、屋根瓦などの建築資材、そして必要となくなった上下水道管、浄化槽、井戸、庭石など、地中に埋まっている廃棄物などとなります。

では、なぜ?このような地中埋設物が埋設されているのか。

現在では、産業廃棄物に対する規制が厳しく、建物を解体する場合にも資材の仕分けや処分する場所など厳しく規制されています。

しかし、現在ほどそれらの規制が厳しくなかった時代には、たとえば、建物を解体する場合など、その解体作業から発生する庭の岩や建物の基礎、屋根、瓦などをそのまま地中に埋め戻すことが行われていました。

このような土地に建物を建築しようとする場合、基礎工事の阻害要因となり、不動産の売買では地中埋設物は売主と買主にとって大きなリスクとなる可能性が生じるのです。

※建物を建築する場合、支障のない従前建物の基礎杭や水道管などは撤去しなくても問題ない物と判断されています(ケースによっては撤去する場合もあります。)

また、不動産の売買契約を締結する場合、現地を確認しても地中埋設物の存在を確認するのは難しいと言わざるを得ません。

売主が過去における埋設物の有無を知っていれば別ですが、新築住宅を購入している場合、中古建物を購入している場合など、その売主が告知していなければわからないはずです。

つまり、地中埋設物は、売主・買主、仲介する不動産会社にとって、厄介なものです。

■ 契約不適合責任が認められる基準


不動産売買において売主が地中埋設物の存在を知りながら、その事実を告げずに売却した場合、売主に対し、「契約不適合責任」が問われることになります。

では、地中埋設物によってどのような場合、売主は、「契約不適合責任」が問われるのでしょうか。

多くの場合、地中埋設物によって支障をきたすのは、建物を建築する場合です。

建物を建築する場合、地中埋設物によって買主が計画していた建物が建築できないなど契約目的に適合しない場合、契約不適合責任が生じる可能性があります。

ただし、地中埋設物が発見された場合、そのすべてに対し、契約不適合責任が発生するとは限らず、地中に土以外の異物が存在していた場合、それがただちに土地の瑕疵(欠陥)にあたるとはいえないことに注意が必要です。

少し難しい表現になりますが、契約不適合責任に該当するかについては、地中埋設物の質や量が大きく影響し、かつその埋設物の毒性が強い、大きい、除去しにくいものである場合、契約不適合責任に該当する可能性が高くなります。

反対に地中埋設物の質や量が大きく影響が小さく、簡単に除去できるものであれば、契約不適合責任には該当しないと判断される可能性が高いようです。

■ 地中埋設物に関する売主の法的責任


地中埋設物の存在が土地の利用に悪影響を及ぼす場合、売主は買主から法的に責任を追及されることになります。

売主が買主に対し、地中埋設物による契約不適合責任を負うことになり、買主は以下のいずれかの方法により、売主の契約不適合責任を追及することになります。

①履行の追完請求(民法562条)

契約の内容に適合する完全な目的物を引き渡すように請求できます。

地中埋設物の場合、売主側で撤去工事を実施したうえで改めて引渡しを行うことになります。

②代金減額請求(民法563条)

相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に売主が履行の追完をしない場合は、契約不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。

地中埋設物の場合、撤去工事費用相当額の代金減額が認められる可能性が高いです。

③損害賠償請求(民法564条、415条1項)

契約不適合が原因となって、買主が被った損害の賠償を請求できます。

地中埋設物の撤去工事を買主側で行った場合、撤去工事の費用などが損害賠償請求の対象となります。

④売買契約の解除(民法564条、541条または542条)

売買契約上の債務を完全に履行することが不能である場合などには、売買契約自体を解除することが認められます。

※地中埋設物の撤去工事が事実上不可能であり、かつ地中埋設物の存在によって土地の利用に具体的な悪影響が生じている場合に限り、売買契約の解除が認められると考えられます。

※売主の契約不適合責任を追及できる期間は、原則として買主が地中埋設物の存在を知った日から1年間です。(民法566条)

ただし、売主が引渡し時にその地中埋設物の存在を知り、または重大な過失によって知らなかった場合には、期間無制限で売主の契約不適合責任を追及できます。(民法556条但書)

■ 地中埋設物を撤去する理由は?


地中埋設物が発見されても何か問題でもあるのか?と考えられる方も少なくありません。地中にある埋設物をそのまま放置した場合、地盤の強度が弱周り、地震の際など被害が拡大される可能性が非常に高くなります。

また、建物を建築する場合、その埋設物により基礎工事が進められないなど支障をきたします。

※廃棄物に関する法律に規制は厳しく、地中埋設物がある場合にはリサイクル法に従い、撤去しなくてはなりませんので、注意が必要です。

■ どこまで除去すればよいのか


地中埋設物の撤去する深さについて法的な見解は現在ではありません。

買主の建築しようとする建物基礎の深さなどを考慮して取り決めるのが一般的となっており、専用住宅の建築を前提とするならば、約1~2m程が目安となります。

ただし、売主より、地中3m程に埋設物を埋めたと聞いているなどと言う場合には、建築する側の建築士と相談ぬえ、決めていくべきと考えられます。

■ トラブルを回避するために


実際に地中埋設物があるのか、調査で確かめることが大切です。とは言え、中古建物が現存しており、その建物を含めて売買する場合には調査で確かめる方法として次の3点が考えられます。

①土地歴調査

②レーダー探査

③ボーリング調査

①土地地歴調査

過去に遡って売買する不動産のの「履歴」を確認することです。一番簡単な地中埋設物の調査で、昔の住宅地図や登記簿謄本などを参考に、地中埋設物のリスクを以前の土地の使用状況から推測するものです。

②レーダー探査

レーダー探査は、現地で地中埋設物の有無を確認する調査です。非破壊検査とも呼ばれるレーダー探査では、電磁波などで地中埋設物や空洞の有無などを調査します。

③ボーリング調査

ボーリング調査は、地面に穴を開け、土地の打撃調査やサンプリング調査を行います。

※レーダー探査、ボーリング調査は、建物が限していた場合、限られた部分の調査となりますので、説明を受け、依頼をすることが必要です。また、費用についても見積もりを取るようにしてください。

■ まとめ


地中埋設物が発見されると、撤去費用が必要となります。また損害賠償を請求されるとその費用も必要となります。

しかし、不動産売買において引渡し後に地中埋設物が発見されると、買主から撤去費用と不利益を被ったことによる損害賠償も求められる場合があり、売主と買主との間にてトラブルとなることがあります。

トラブルが起きないためにも地中埋設物の有無の調査や知り得る情報については隠さずに売買契約に付随する物件状況報告書などで買主に伝えることが大切となります。

通常、不動産の売買には仲介業者がいるはずですので、仲介業者の指示に従って進めていただくことをオススメします。

【地中埋設部に関する判例(一部)】

売主は物件状況報告書で説明を、地中埋設物の存在について買主の瑕疵担保責任請求を棄却した事例

地中に大量の産業廃棄物が埋設されていることが判明し、売主の説明義務違反による不法行為責任が道められた事例


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。

●ご売却をご検討の方は、こちらをご参照ください。

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