全30回連載

第9回:「介護を頑張ったから多くほしい!」は通用する?(寄与分のお話)
前回の第8回では、ケーキのように切ることができない「実家(不動産)」のせいで、普通の家庭ほど相続の分け方に困ってしまうというお話をしました。
今回は、家族の話し合いの中で特にもめごとになりやすい「家族の頑張り」にスポットを当てていきます。
例えば、年老いたおじいちゃんやおばあちゃんの介護を、長年つきっきりで頑張った長女がいたとします。
一方で、遠くに住んでいてたまにしか顔を見せなかった長男がいます。
おじいちゃんが亡くなったとき、長女が「私はこれだけ介護を頑張って尽くしたんだから、何もしてこなかったお兄ちゃんより多く財産をもらう権利があるはず!」と主張するのは、一見すると当然のことに思えますよね。
果たして、この「頑張り」は法律上、認められるのでしょうか?
今回は、法律が定めるご褒美のルール「寄与分(きよぶん)」について解説します。
法律が認める頑張りへのご褒美「寄与分」とは
結論から言うと、法律には「亡くなった人の財産の維持や増加に、特別な貢献(頑張り)をした人がいる場合、その人の取り分を少し増やしてあげましょう」というルールがちゃんと存在します。
この増える取り分のことを「寄与分(きよぶん)」と呼びます。
もし寄与分が認められれば、長女の取り分は増え、長男の取り分は減ることになります。
これだけ聞くと、「よかった、法律はちゃんと頑張りを見てくれているんだ!」と思いますよね。しかし、ここからが法律の非常に厳しい現実です。
実は、大人の相続トラブルにおいて、この「寄与分」を法的に認めてもらうのは、信じられないほどハードルが高いのです。
なぜ「介護の頑張り」は認められにくいのか?
なぜ、一生懸命やった介護の頑張りが認められにくいのでしょうか。理由は大きく2つあります。
1.法律には「家族は助け合わなければならない」という大前提があるから
日本の民法という法律には、「直系血族(親と子など)は、お互いに扶養し(助け合い)なければならない」というルールがあらかじめ書かれています。
そのため、裁判所などは「子どもが親の介護をするのは、法律で決まった身内の義務の範囲内だよね」と判断することが多いのです。
寄与分として認められるためには、義務の範囲をはるかに超えた「特別な貢献」でなければなりません。
例えば、自分の仕事を完全に辞めて、24時間ノーギャラでプロの介護士並みの介護を何年も続けた、というようなレベルが求められます。
2.「頑張り」を証明する証拠が残っていないから
もし裁判所などで「私の頑張りを認めてください」と主張する場合、口頭で「大変だった」と言うだけではダメで、客観的な証拠が必要です。
何年何月何日にどんな介護をしたかという毎日の詳細な日記や、介護にかかった費用の領収書、医師の診断書などをすべてきれいに保管していなければなりません。
普通の家族の間で、そんな証拠を最初から集めている人はほとんどいませんよね。
結局、「言ったもん勝ち」のケンカになってしまう
このように、法律上の「寄与分」はハードルが高すぎるため、話し合いの場で「私はこれだけやった!」「いや、お前は親の年金を使っていただろう!」と、泥沼の言い合い(感情のぶつかり合い)に発展してしまうケースが後を絶ちません。
これに対する事前の解決策は、実はただ1つしかありません。
それは、介護をされていた親本人が、生きているうちに「介護をしてくれてありがとう。だから○○に財産を多く残します」というメッセージ(遺言書など)をハッキリと残しておくことです。
親の言葉に勝る証拠はありません。
まとめ:「頑張り」は親からのバトンで報いるべき
家族の間での「私はこれだけ尽くした」という思いは、どれだけ正しくても、親が亡くなった後にきょうだい間で認め合うのは非常に難しいのが現実です。
だからこそ、親が元気なうちに、その頑張りに感謝し、将来もめないような分け方を親子で準備しておくことが大切なのです。
さて、頑張りとは逆に、「過去に親からたくさんおねだりして、お金をもらっていた人」がいた場合はどうなるでしょうか。
次回は第10回:「お兄ちゃんだけずるい!」過去の仕送りや結婚資金(特別受益のお話)」をお届けします。過去の「もらいすぎ」をめぐる不公平を正す法律のルールを学びましょう!
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■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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