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2.142025

遺産分割協議!代償分割による注意点、を考える

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 4つの分割法
  • ■ 代償分割のメリット
  • ■ 代償分割のデメリット
  • ■ 代償金の注意点
  • ■ 相続税の計算方法
  • ■ まとめ

■ はじめに


相続における遺産の分け方をどのようにすればよいのか、悩む方少なくありません。

相続財産の遺産の分け方には、「代償分割」、「換価分割」。「現物分割」、「共有分割」4つがあり、この4つの遺産の分け方のうち代償分割は、相続財産を分けることが難しい場合に選ばれる分け方です。

そこで今回は、この「代償分割」についてメリット・デメリットをはじめ、代償分割を選んだ場合の注意点を考えてみます。

■ 4つの分割法


遺産を分ける方法には、以下の4つ

があります。

①現物分割

②換価分割

③代償分割

④共有分割

①現物分割

現物の遺産をそのままの状態で分割する方法であり、現金、預金、土地、家屋、株式などをそのまま相続します。ただし、財産ごとの価値が異なり公平性に欠けることも多い。

②換価分割

不動産などの遺産を売却し、税金・諸経費を差し引いた売却代金を相続人の間で分けます。

現金以外の財産を売却して現金化して分けるため、公平性は保つことが出来ます。ただし、相続人の中に相続財産の売却に反対の方がいる場合、売却はできないことになります。

③代償分割

相続財産を特定の相続人が相続し、他の相続人に対し、代償金を支払います。

④共有分割

相続人が相続財産を共有にて取得します。

相続財産を共有名義で相続するため、管理や使用方法、売却などに関して一人の相続人では決めることはできません。

■ 代償分割のメリット


代償分割を選んだ場合の主なメリットは、以下のとおりです。

①相続人同士で公平に分けることができる

③不動産を共有状態にしなくて済む

④相続税の負担を軽減できる場合がある

①相続人同士で公平に分けることができる

相続財産の多くの割合を不動産が占めている場合、公平に分けようと話し合いを行っても話し合いがこじれてしまう場合があります。このような場合、代償分割により、相続財産を相続人の一人が相続し、ほかの相続人に代償金を支払うことにより遺産分割を行うことができます。

②残したい不動産(自宅・畑など)を売却せずに済む

被相続人の名義である不動産に、被相続人と相続人のうち一人の相続人が同居していた場合、自宅を売却して代償分割をするとその相続人は住む場所を失ってしまうことになります。

また、被相続人名義の不動産で商売や農業を行っていた場合、換価分割をするとその商売や農業をその相続人は困ってしまいます。

このような場合、代償分割を選ぶことにより残したい不動産を売却しなくて済み、相続人が住む場所や商売や農業を行うための不動産を残しておくことが可能となります。

③不動産を共有状態にしなくて済む

相続財産が自宅の土地・建物と預貯金である場合など相続人間で共有分割を選ばれることもあります。しかし、共有分割をすると、家族や親族間でさまざまなトラブルが生じる可能性が生じるため、共有状態で相続は避けるべきです。

代償分割により、不動産の共有状態を避けることで、トラブルが生じないようにすることが可能です。

④相続税の負担を軽減できる場合がある

被相続人名義の不動産で同居していた相続人が、その不動産の宅地等(土地や敷地権)を取得した場合、所定の要件を満たすと「小規模宅地等の特例」が適用され、宅地等の評価額が最大80%減額され、被相続人名義の農地を相続人が取得して農業を引き継げば、「農地の納税猶予」の適用を受けられることになります。

一方、換価分割をして不動産を現金化して相続をすると、小規模宅地等の特例や農地の納税猶予などは受けられず、特例や控除の要件を満たす相続人が代償分割を選択して財産を取得することにより、相続税の負担を軽減させることができます。

■ 代償分割のデメリット


代償分割を選んだ場合のデメリットは、以下のとおりです。

①代償金は支払わなければならない

②代償金の決め方で揉める場合がある

①代償金は支払わなければならない

代償分割を選ぶということは、相続財産を相続する相続人が他の相続人に対し、代償金を支払うことが必要となるということです。

相続財産を相続した相続人が他の相続人に代償金を支払う能力がない場合、この代償分割は適さないと言えます。

②代償金の決め方で揉める場合がある

代償分割における代償金の決め方に明確な決め方はありません。相続人の話し合いで決まります。

極端に言えば、1000万円支払うべきところを代償金100万円として合意があれば遺産分割協議は整うことになります。

しかし、このような極端なケースは少なく不動産の価格を適切に評価したうえで、代償金の金額を決めることをオススメします。

不動産の評価方法には1物4価として時価、公示地価、相続税評価額、固定資産税評価額があります。

一般的に取り入れられている評価方法は、「時価」となります。

理由としては、時価が各相続人にとって一番公平であると考えられるためです。

「時価」が公平であることは間違いのないことですが、相続人全員の合意により、相続税評価額や固定資産税評価額をもとに代償金を決めることも可能です。

相続人全員で話し合いで合意が得られることが大切です。

■ 代償金の注意点


1.遺産分割協議書へ代償金記載事項の注意点

代償分割により相続人の間で財産を贈与しても相続税の課税対象であるため、贈与税はかかりません。

ただし、代償分割で受け取った代償金であることが証明できなければ、贈与とみなされて、贈与税の課税対象になる場合があります。

そのため、代償分割によって代償金を受け取る際には、「相続人○○○○は代償金として○○○○に○○○○年〇月○○日までに金○○○○万円を支払うものとする」といった「誰が誰に、いつまでに、代償金をいくら渡すのか」を遺産分割協議書に明記しなければなりません。

2.不動産で代償したときの注意点

代償金の資金がないときは、不動産など現金以外で代償することもできます。

ただし、代償金のかわりに不動産を譲渡したときは売却と同様に扱われるため、代償金を支払う側に譲渡所得税が課税される場合があります。

3.被相続人の生命保険金で代償金を支払う場合の注意点

相続対策として生命保険を活用する方法があります。しかし、この生命保険の契約方法によっては贈与税が課税される場合がありますので注意が必要です。

①代償金に贈与税が課税されない場合

被相続人:父親、相続人は長男と次男。遺産は3000万円の自宅と長男が受取人の生命保険4000万円のみで、長男が自宅を相続する代わりに生命保険金のうち3500万円を次男に渡す。

生命保険金はみなし相続財産として相続税の対象になりますが、受け取った死亡保険金は受取人の固有の財産になるため遺産分割の対象にはなりません。長男固有の財産なので次男に代償金として渡すことができます。

②代償金に贈与税が課税されてしまう場合

被相続人:父親、相続人は長男と次男。遺産は3000万円の自宅と長男が受取人の生命保険4000万円のみで、二男が自宅を相続し、長男が代襲相続として生命保険金のうち500万円を次男に渡す。

この場合、次男が自宅を相続しており、長男には相続財産がありません。

代償分割とは相続による取得遺産の価額を調整する分割方法であり、相続財産を相続していない長男には代償分割の余地がないことになります。

また、長男が受け取った死亡保険金は相続財産ではなく男の固有の財産となり、遺産分割の対象とはなりません。

結果、長男が次男に渡した500万円は、単に長男が次男に贈与したとみなされて贈与税の対象となります。

代償分割で生命保険を活用する場合、贈与税に注意が必要です。

代償金は、相続財産を相続した相続人がその相続財産の額を調整するものであるため、遺産を相続する人を死亡保険金受取人にしておく必要があります。

4.代償金を支払う期限を決めておかない場合の注意点

代償金の支払期限に法的な決まりはありません。遅くとも遺産分割協議書の締結日より2年以内で支払期限を決めるのが一般的です。

代償金の支払方法は一括払いではなく、合意があれば分割払いも認められますので早めに支払いが完了するよう努力が必要となります。

また、代償金の支払い方法は、現金でなくても問題はありません。

代償金として価値にある不動産を譲渡するということでも問題はありません。

ただし、相続財産ではなく、保有していた土地や株式などの金銭以外のもので代償金を支払うと譲渡所得があったとみなされ、譲渡所得税が課せられることがありますのでご注意ください。

また、遺産分割協議書にて代償金の定めは記載があるものの支払い期限が定められていないものが多く存在します。

代償金とは、一般債権と同様に時効があり、2020年4月以降に発生した債務の消滅時効は、「債権者が権利を行使できる時期」から換算して5年とされていますので注意が必要です。

■ 相続税の計算方法


代償分割したときの相続税の課税価額計算方法は、不動産を時価で評価したか、相続税評価額を使って評価したかによって異なります。

例/
被相続人:父 相続人:長男・二男の2人
相続財産/自宅の土地・建物:相続税評価額4,000万円、時価5,000万円
長男は自宅を相続、二男に代償金として現金2,000万円を支払う

①相続税評価額をもとに代償金を決定した場合の相続税の課税価格

【相続税評価額を使って評価した場合】

●代償金を払った人の課税価格

課税価格=相続税評価額―代償金額

●代償金を受け取った人の課税価格

課税価格=相続税評価額+代償金額

※相続税を計算するときの代償金の金額は、実際に支払われた代償金と同じになります。

【長男の相続税課税価格】
相続税評価額4,000万円-代償金2,000万円=2,000万円

【二男の相続税課税価格】
相続税評価額0円+代償金2,000万円=2,000万円

②代償財産の時価をもとにして代償金を決定した場合の相続税の課税価格

【時価を使って評価した場合】

●代償金を払った人の課税価格

課税価格=相続税評価額―代償金額×(相続税評価額÷代償分割時の時価)

代償金を受け取った人の課税価格

課税価格=代償金以外に相続した遺産があればその価額+代償金額×(相続税評価額÷代償分割時の時価)

※相続税を計算するときの代償金の金額は、受け取った代償金の額に相続税評価額の時価に対する割合を乗じることになります。

【長男の相続税課税価格】
相続税評価額4,000万円-(代償金2,000万円×(相続税評価額4000万円/代償分割時の時価5,000万円))=2,400万円

【二男の相続税課税価格】
代償金2,000万円×(相続税評価額4000万円/代償分割時の時価5,000万円)=1,600万円

相続税の課税価格の総額は、いずれの計算方法でも4,000万円となりますが、どちらの価額を基にして計算するのかによって各相続人の相続税のかかる価額に違いが出てきます相続税評価額と時価に大きな差がある場合は、相続人間でよく話し合うことが重要です。

■ まとめ


相続財産の多くが不動産(自宅のみなど)で、預貯金や現金はほとんどないという場合は少なくありません。

このような場合、代償分割は相続人同士で公平に分けることができる、

残したい不動産(自宅・畑など)を売却せずに済む、

不動産を共有状態にしなくて済む、

相続税の負担を軽減できる場合がある

などのメリットがある一方相続財産を多く取得する人に代償金を支払えるだけの資力が必要となり、場合によっては想定外の税金が課せられる場合もあります。

不動産の評価方法で相続人の間での意見が分かれたりする場合や代償金の取決めをしたにもかかわらず、代償金を支払ってもらえない、時効を盾に相手にしてもらえないなどトラブルも多くあります。

相続対策とはどのように分けて、どのように支払って、どのように減らすのか、が大切です。

相続対策は、早めに専門家に相談してみることをオススメします。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

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