
目次
- ■ はじめに
- ■ 敷金の定義
- ■ 敷金の返還時期義の変更を届け出ない場合
- ■ 退去時の敷金返還の流れ
- ■ まとめ
■ はじめに
賃貸物件を賃借する場合、「敷金」・「礼金」を支払うと思います。
「礼金」というのは、賃貸借の契約時に、一度限りの一時金として借主から貸主に対し、支払われる金銭であり、借主から貸主に対するお礼の意味合いで返還されない金銭です。
一方、「敷金」とは、礼金と異なり、賃貸物件を退去する際、返還されるには条件があるものの返還される金銭です。
この「敷金」は、賃貸物件を退去した後、貸主から借主に対し、返還されるもののどのような条件でいつ頃返還されるのでしょうか。
今回は、この敷金の返還条件といつ頃返還されるのか、を考えてみます。
■ 敷金の定義
敷金については、2020年に民法改正によってどのような性質なものであるか明確化されました。
賃貸借契約が終了し、借主より貸主に対し、賃貸物件が返還された時点で敷金返還債務が生じること、
その返還される金額は預託された敷金の額からそれまでに生じた金銭債務の額を控除した残額であるこ
となど基準が明確化されました。
民法
第622条の2 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
では、敷金の額からそれまでに生じた金銭債務とはどのようなものか、その金銭債務は、大きく分けて次の2つとなります。
①賃料の不払いや未払いの補填
②入居中の不注意、または故意で発生した汚損、毀損(傷や汚れ)などの退去時の修繕負担義務
敷金は、賃料の不払いや未払いの補填や入居中の不注意、または故意で発生した汚損、毀損(傷や汚れ)などの損害賠償、借主が貸主に対して負う債務に充当されることになります。
そのため、敷金の返還を請求できる金額は、預け入れた敷金から、契約終了時点における債務(例:未払賃料等)を差し引いた残額ということになります。
※敷金によって担保されるもの
・家賃の不払い
・原状回復とされている借主の毀損・汚損に対する損害賠償
・借主が無権限で行った工事の復旧費
・賃貸借終了後、明渡までの賃料相当額の損害金
※通常使用による損耗や劣化に関しては、入居者の負担義務ではありません。しかし、「故意」、「過失」の場合には貸主の負担となります。
※敷金精算は、国土交通省の「原状回復をめぐるガイドライン」に基づき処理されます。
【国土交通省のガイドライン】
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html
※原状回復
賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること。
■ 敷金の返還時期
敷金の返還時期については、法律上の解釈が明確にされており、次の2つの要件が条件となります。
①賃貸借契約が終了していること
②賃貸物件の返還(明渡し)が完了していること
契約の解約だけでは要件として認められず、賃貸物件の返還(明渡し)が完了していることが必要となります。
賃貸借契約書では、敷金について次のとおり条文がきさいされています。
第●条(敷金)
借主は、本契約締結と同時に、表記敷金を貸主に預託します。
2 敷金は本契約が終了し、借主が本物件を完全に明渡しを完了したときに、貸主は借主に対し敷金を全額無利息で返還します。ただし、借主の本契約に基づく債務が残存する場合は、貸主はその敷金をもって借主の債務の弁済に充当することができるものとします。
3 以下省略
このように敷金の返還時期は賃貸借契約書で期限が明記されていませんが、1カ月から2カ月以内には返還されることが一般的とされています。
■ 退去時の敷金返還の流れ
賃貸物件の退去から敷金返金までの一般的な流れについては次のとおりです。
退去
引っ越しを完了後、賃貸物件立ち会いを行い、汚損・破損などを確認します。
見積もり
汚損・破損など発見された場合、貸主・管理会社が原状回復費用の見積もりを行います。
精算書の内訳確認
貸主・借主の費用負担(クリーニング費用や修繕費、家賃未納分など)を計算し、精算書を作成のうえ、貸主・借主に郵送されます。
不明点などの問い合わせ
精算書の内容に不明な点や質問などがあれば、管理会社へ確認を行います。
敷金の返金
精算書に問題がなければ、精算書に記載された時期(一般的には退去後1カ月から2カ月以内)に、差し引かれた金額が返金されます。
■ まとめ
「敷金」の返還条件といつ頃返還されるのか、を考えてみました。
賃貸に物件に入居すると、いうことは退去も必ずあります。
退去時に故意・過失や賃料の未払いなどがなければ大半の敷金は戻ります。敷金の注意点や流れを理解していただければと思います。
また、ご不明な点などありましたら必ずご質問をするようにしてください。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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