目次
- ■ はじめに
- ■ 賃貸借契約における期間内解約の原則
- ■ 貸主からの期間内での解約
- ■ 契約期間の妥当な期間
- ■ 契約の更新
- ■ 更新手続きの注意点
- ■ まとめ
■ はじめに
賃貸借契約において契約期間と更新手続き。そして解約の手続きというのは常について回るものです。
更新手続きは、契約期間満了後も物件に住み続ける場合に必要な手続きです。
管理会社から事前に通知をおこない、更新日時前に更新料や火災保険料などを支払うのが一般的です。
また、更新料は法的に決められているわけではありません。ただし、契約時に合意した場合は支払い義務が生じます。
では、どのようにして契約期間が決められており、いつまでに解約の手続きをしなければならないのか。今回は、建物賃貸借について考えてみたいと思います。
■ 賃貸借契約における期間内解約の原則
賃貸借契約の解約についての原則は、民法および借地借家法となります。
民法では、建物賃貸借契約を解約することができるか否かは、期間を定めていない契約なのか、または、期間期間を定めた契約であるのかにより、異なった規定となっています。
(1) 期間を定めない建物賃貸借の期間内解約
民法は、当事者が賃貸借の期間を定めなかった場合の解約申入れについては、民法617条に以下の定めをしています。
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 一日
2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
民法では、期間を定めない建物賃貸借はいつでも解約の申入れができ、解約申入れの日から3カ月の経過をもって終了すると定められています。
よって解約したい場合には退去しようとする日の3カ月前までに解約予告を行うことにより解約することができることになります。
※民法は、この期間内解約は「貸主」と「借主」の両当事者が解約できることを定めていますので、民法上は、「貸主」も3カ月の予告をもって期間内解約ができるかのように読めますので注意してください。
(2) 期間を定めた建物賃貸借の期間内解約
これに対し、期間を定めた賃貸借の期間内解約については民法618条に定められています。
(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第六百十八条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
この規定の意味が少しわかりにくいので補足いたします。
当事者である貸主と借主は、期間を定めた賃貸借契約を締結した場合、「その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したとき」は、前条(617条)の規定のとおり3カ月の予告をもって、いつでも賃貸借契約を解約できるという意味となります。
「解約をする権利を留保」とは、期間内解約をすることができる旨を合意したという意味ですので、建物賃貸借契約書において、期間内解約条項を設けたときのみ適用される、ということです。
民法では、期間を定めた場合にはその期間内での解約はできません。ただし、貸主と借主との間で期間内でも解約できる条項があれば、期間内での解約をすることができます。ということです。
この場合には前条(617条)が準用されて3カ月の予告をもって期間内でも解約をすることができると定めています。
また、期間を定めた場合に期間内での解約条項を定めていなければ、当事者は期間内での解約をすることができないということになります。
■ 貸主からの期間内での解約
民法の規定からすると期間を定めた賃貸借契約であっても、期間内解約条項において、貸主からも期間内での解約をすることができるかのように読めます。
しかし、貸主が期間内解約権を行使することについては、民法の強行法規である借地借家法において特則が定められています。
1点目は借地借家法27条であり、賃貸人が建物賃貸借の解約を申し入れた場合、建物の賃貸借は解約申入れの日から6カ月を経過することにより終了する旨が定められています。
2点目は、借地借家法28条であり、賃貸人による建物賃貸借の解約の申入れは正当事由がなければ、解約することができない旨が定められています。
この借地借家法により貸主による期間内での解約は、民法に規定する期間内での解約条項とおりには効力を生じないことになります。
【賃貸借契約書に記載されている条文】
第●●条(解約予告)
貸主は、契約期間満了前6ヶ月以上の予告期間をもって書面により借主に通知し、本契約を解約することができるものとします。ただし、その申出について正当な理由がない限り、その効力は生じないものとします。
2 借主が本契約を解約するとき、または表記契約期間満了により終了させようとするときは、●ヶ月の予告期間をもって書面により甲に通知するものとします。ただし、借主は●ヶ月前の予告にかえて、●ヶ月分の賃料および管理費等を支払うことにより、即時本契約を解約することができるものとします。
※借主の解約予告期間は、地域や一般家庭・学生などにより異なる場合が多いようです。一般家庭であれば急な転勤などを考慮して1カ月前、学生などは次に入居が予定される新入生のお部屋探しを考慮して2カ月前や3カ月前となっているようです。
■ 契約期間の妥当な期間
賃貸借の契約期間について居住用の賃貸借契約の場合、2年とされている場合が一般的です。
この理由として、普通賃貸借契約の場合、契約期間が1年未満と定めた場合、借地借家法29条の「期間の定めがない建物の賃貸借」とみなされてしまい、当初の契約条件と異なってしまうからです。
期間を定めない建物賃貸借とみなされた場合、解約申入れの日から3カ月の経過をもって終了すると定められてしまい、貸主・借主ともに不利になります。
また、借主の立場から見て、賃貸物件を借りる人たちのライフサイクルを考えた場合、3年では長すぎる場合があるとの意見から2年となっていることが多いようです。
■ 契約の更新
賃貸借契約の更新とは、賃貸借契約を契約期間満了後に継続するための手続きです。
借主から見て賃貸借契約が満了する前に、借主は賃貸借契約を継続するのか、解約するのかを決める必要が生じます。
賃貸借契約継続するのであれば、更新手続きをおこなう必要があります。
反対に解約するのであれば、契約期間内に退去のうえ、立会を行う必要があります。
賃貸借契約を継続する場合の更新手続きでは賃料などの契約内容に変更が生じる場合があります。
賃料の改定は契約書に記載されるのが基本であり、以下のような内容が賃貸借契約書に記載されています。
【賃貸借契約書に記載されている条文】
第●条(賃料等およびその支払い方法)
賃料および管理費等は表記のとおりとし、借主は、貸主に表記支払い日にその翌月分を表記支払い方法で支払うものとします。なお、支払いが銀行等の金融機関の振込みによる場合にはその振込みにかかる費用は借主の負担とします。
2 1か月に満たない賃料および管理費等はすべて当月の日割計算とします。日割計算の結果、1円未満の端数がでた時は、その端数を四捨五入するものとします。
3 本物件にかかわる土地もしくは建物に対する公租公課その他負担の増徴または経済情勢の変化により、また管理費等が改定された場合には、貸主は前項の賃料および管理費等の改定を請求することができるものとします。
※賃料を改定する際は借主と貸主の合意が必要なため、貸主が一方的に賃料を上げたりはできませんので安心してください。
また、更新手続きの際には、基本的に更新料や更新手数料が発生します。
■ 更新手続きの注意点
賃貸借契約書に契約期間が定められており、その更新時は更新料を支払う必要も生じます。
更新料の相場は地域ごとに差があり、更新料がない地域もあります。
また、賃貸契約の更新料は民法など法律として定められているものではなく、貸主、借主の双方が更新料の支払いに合意していた場合に更新料の支払いが生じます。
なお、更新料の滞納は「契約解除の正当な理由」になりえることから更新料を支払わなければ契約を解除される可能性があるため、滞納しないように注意が必要です。
※東急住宅リース株式会社/ダイヤモンドメディア株式会社「全国の賃貸マンションの一時金共同調査結果」(2020年2月27日公表)において敷金・礼金・更新料などの都道府県別の平均設定がまとめられておりますのでご参考にしてください。
■ まとめ
民法では、期間を定めた場合にはその期間内での解約はできず、貸主と借主との間で期間内でも解約できる合意があれば、期間内での解約をすることができます。
この場合には前条(617条)が準用されて3カ月の予告をもって期間内でも解約をすることができることになります。
また、期間を定めた場合に期間内での解約条項を定めていなければ、当事者は期間内での解約をすることができないということになります。
賃貸物件の場合、当初の契約期間後も現在の住まいに住み続けるには、契約の更新が必要となります。
更新は、更新手続きが必要となり、更新時には一定の支出が伴うことになります。
賃貸借契約における契約期間と更新手続き。そして解約の手続きは、貸主や管理会社が独断で決めているわけではありません。
そこには民法の原則、慣習、貸主・借主の立場にもとづき決められています。万一、不明な点はかならず管理会社などに確認してからご契約に臨むようにしてください。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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