目次
- ■ はじめに
- ■ 「前払い」と「後払い」とは
- ■ 「前払い」と「後払い」の違い
- ■ 「前払い」・「後払い」は選択可能なのか
- ■ 法的に見た賃料の支払い方法
- ■ 前払いを採用している目的
- ■ 賃料をまとめて支払うことは可能なのか
- ■ まとめ
■ はじめに
賃貸物件において毎月支払うべき賃料。「前払い」と「後払い」があり、多くは「前払い」になっているのではないでしょうか。
「どうして賃料を先に支払うの?」と疑問を感じている方も多いはずです。
そこで、今回は「前払い」と「後払い」の違いについて考えてみます。
■ 「前払い」と「後払い」とは
「前払い」とは、借主が貸主に対し、賃料を前の月に先払いする払い方を言います。
例えば、9月分の賃料であれば、前月(8月)の指定日に翌月(9月)分を支払ことになります。
【賃貸借契約の参考例】
(賃料等およびその支払い方法)
第●条 賃料および管理費等は表記のとおりとし、乙は、甲に表記支払い日にその翌月分を表記支払い方法で支払うものとしますしま
す。なお、支払いが銀行等の金融機関の振込みによる場合にはその振込みにかかる費用は乙の負担とします。
2 1か月に満たない賃料および管理費等はすべて当月の日割計算とします。日割計算の結果、1円未満の端数がでた時は、その端数を四捨五入するものとします。
※本コラムでは賃料と管理費・共益費など毎月支払う金銭をまとめて指すものとします。
一方、「後払い」とは、借主が貸主に対し、賃料を当月内に支払う払い方を言います。
例えば、9月分の賃料であれば、当月(9月)分を当月(9月)月末までに支払うことになります。
■ 「前払い」と「後払い」の違い
「前払い」と「後払い」との違いは簡単にまとめますと、入居時にかかる費用が増えるのか、または退去時にかかる費用が増えるのか、という点です。
賃料の「前払い」では、入居時の負担が大きくなり、退去時の負担が軽くなることになります。
「前払い」では、翌月分の賃料を前月に支払うため、退去する月の賃料は、前月に支払っていることと翌月分はすでに退去していますので翌月分の賃料を支払う必要がないという点からです。
一方、賃料の「後払い」では、入居時の負担が少なくなり、退去時の負担が大きくなることになります。
賃料の「後払い」では、「前払い」と違い初期費用を用意する場合、賃料を支払わなくても済むことにより、入居時の初期費用が負担を少なくなります。
また、「後払い」では、当月分の賃料を当月月末までなどに支払うため、退去する月の賃料は、退去時に賃料を支払う必要が生じることになります。
■ 「前払い」・「後払い」は選択可能なのか
借主が賃料の「前払い」か「後払い」かを選択できる可能性について考えます。
お伝えしたとおり、入居時の初期費用を抑えたい場合には、「後払い」が有利なため、「後払い」にしたい。とお考えの方もいると思います。
しかし、賃料の支払い方法等は、その賃貸物件ごとに定められており、借主から「前払い」・「後払い」かを選択することはできません。
貸主の指定により支払い方法等は定められていますので、物件の紹介を受ける際、確認しておく必要があります。
■ 法的に見た賃料の支払い方法
賃料の支払い方法は、民法でも定められています。民法第614条に次のとおり規定されています。
(賃料の支払時期)
第614条 賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。
また、賃料の支払い方法についても民法に定められています。
(弁済の場所及び時間)
第484条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
よって、民法に従えば賃貸物件の賃料は「後払い」にて支払うのが原則となります。
しかし、日本には「契約自由の原則」というものがあり、この条文は当事者が合意すれば変更できる任意規定であるため、借主と貸主の間で合意により、賃貸借契約は「前払いの特約」を加えることにより「前払い」を可能にしているのです。
では、賃貸借契約の多くは「前払い」となっているのが、どうして「前払い」が賃貸借契約の多数を占めているのでしょうか。
■ 前払いを採用している目的
「前払い」を採用している目的は大きく2つです。
「賃料を確実に回収する目的」と「退去時のトラブルを減らす目的」です。
賃料を確実に回収する目的というのも、前払いを採用することにより翌月分の賃料を前月内に支払いを受けることにより、入居者が賃料を滞納せざるを得ない場合でも突然滞納となる心配がなくなり、貸主にとって滞納リスクを減らせることになるのです。
また、退去時のトラブルを減らす目的として契約者が退去する場合、退去日までの家賃は日割り計算となります。
「先払い」の場合、退去日までの家賃を前月に支払っているため、退去する月に賃料の支払いは発生しません。しかし、「後払い」の場合は、退去する月の退去日までの賃料が発生するため、徴収するのを忘れた、と言ったことや入居者が支払いを忘れた、といいたトラブルを避けることが可能となります。
このようなことから、賃貸物件では、賃料の「前払い」が基本となっているのです。
■ 賃料をまとめて支払うことは可能なのか
借主によっては毎月の支払いが煩わしい方や振込手数料を抑えたい方など、半年分、1年分の賃料をまとめて支払いたい、と希望される方もいると思います。
この場合、貸主や管理会社に確認をする必要があります。貸主や管理会社によってはまとめ払いを認めている場合もあります。
このまとめ払いは貸主や管理会社ごとに異なるため、その都度契約前に確認する必要があります。
■ まとめ
賃料の支払い方法は「前払い」と「後払い」があります。しかし、「前払い」を採用していることが多数です。
これは、「賃料を確実に回収する目的」と「退去時のトラブルを減らす目的」なため、「後払い」をお願いをすることは難しく避けた方が無難です。
また、賃料を半年や1年分まとめてまとめ払いしたい場合、貸主や管理会社へ確認する必要があります。
賃料の支払い方法は、管理業務を複雑化させるため、各部屋単独では変更できません。
賃料の支払い方法は、募集の段階ですでに決められていますので必ず確認し、トラブルのないご注意してください。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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