
目次
- ■ はじめに
- ■ 貸主・借主とは
- ■ 貸主・借主の役割・義務
- ■ 借主の守らなければないないこと
- ■ まとめ
■ はじめに
賃貸借において貸主と借主がそれぞれどうような役割を担っているのか、知っておくことは重要なことです。
借主としては、貸している物件を管理することや修繕する義務などもあります。
一方、借主は貸主へ賃料等を支払い、原状回復の義務などがあります。
今回、繁忙期の今、貸主と借主の役割と義務、賃貸借契約における注意点などを考えていきます。
■ 貸主・借主とは
●貸主とは
貸主とは、賃貸借契約において不動産を貸す人(法人)のことを言います。
大家とも呼ばれることもあり、賃貸人=貸主、大家
※賃貸人とは、賃貸物件を賃貸する人(法人)を言い、貸主、大家と同じ意味であり、呼び方が異なっているだけで役割は同じです。
●借主とは
借主とは、賃貸借契約において不動産を借りる人(法人)のことを言います。
店子(たなこ)とも呼ばれることもあり、賃借人=借主、店子
※賃借人とは、賃貸物件を貸借する人(法人)を言い、借主、店子と同じ意味であり、呼び方が異なっているだけで役割は同じです。
■ 貸主・借主の役割・義務
●貸主の役割・義務
貸主の賃貸借契約から生じる義務は以下のとおりです。
①使用収益させる義務
②必要な修繕を行う義務・
③借主が必要費、有益費支出した場合の償還する義務
① 使用収益させる義務
貸主は、借主から賃料を受領する代わりに、借主が物件を使用できる状態で賃貸する義務があります。
この使用収益させる義務には、物件以外にエントランス・共用廊下・駐車場・駐輪場・ベランダなどの共用部分となる場所も含まれています。
② 必要な修繕を行う義務
物件や共用部分に破損などがみられた場合、貸主は破損等ある部分を修繕する義務があります。
物件を適切な状態で使用させる義務は貸主にあるため、修繕に要する費用は貸主の負担となります。
③ 借主が必要費、有益費支出した場合の償還する義務
貸主が物件に対し、なんらかの故障などによる費用を支払った場合、その費用は貸主が負担する義務があります。
この場合の償還義務が生じるケースは、必要費と有益費です。
必要費とは、物件の保全にかかわる費用のことです。
例えば、雨漏りの補修や部屋に備え付けられていたエアコンの修理費用などが該当します。
有益費とは、物件の価値を増加させる費用のことです。
一般的に通常の生活では必ず必要とはならないものであり、借主の要望により利便性を高めるための費用が有益費のことです。
例えば、トイレの便座を温水洗浄便座に変える、窓を防犯性の高いものにリフォームするなどです。※一般的に賃貸借契約で禁止事項となっておりますので借主はご注意ください。
■ 借主の役割・義務
貸主の賃貸借契約から生じる義務は以下のとおりです。
①賃料の支払い義務
②善良な管理者としての保管義務
③原状回復の義務
① 賃料の支払い義務
借主は貸主に対して賃料を支払う義務があります。
賃料の支払い方法は、翌月分を前月末日までに前払いで支払うように定めることが多く、決められた期日までにその支払い方法で支払うことになります。
② 善良な管理者としての保管義務
賃借した物件を破損させたり故障させたりしないように、注意をもって使用する義務です(善管注意義務)。この善管注意義務に違反して、過失によって破損、故障させた場合、借主は貸主に対して損害賠償責任を負うことになります。
※借主は物件を貸主に対し、契約が終了するまでの間、善良な管理者の注意を払い、その物件を保存しなければならない規定があります。
民法第400条「特定物の引渡しの場合の注意義務」に規定されています。
【民法第400条】
(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第400条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
③ 原状回復の義務
借主は、契約が終了した場合、物件に備え付けたものを取り外したうえで、もとの状態(原状)に戻してから返還する義務を負います。
たとえば、エアコンを取り付けた場合は、そのエアコンを取り外し、前の状態に戻してから明け渡さなければいけません。
■ 借主の守らなければないないこと
借主、物件を借りると善管注意義務などが生じますが、それ以外にも賃貸借契約において以下のような「管理規約・使用細則等の遵守」、「借主の禁止事項」、「貸主への通知義務」などが規定されていますので注意が必要です。
「管理規約・使用細則等の遵守」、「借主の禁止事項」、「貸主への通知義務」などを契約書に記載されている条文は以下のとおりです。
第●条(管理規約・使用細則等の遵守)
借主は本物件を含む建物・敷地全体および付属施設等に関する管理規約・使用細則等がある場合には、その規約・規則等を遵守しなければなりません。
第●条(借主の禁止事項)
借主は、つぎの事項をしてはなりません。
①本物件を表記使用目的以外に使用すること。
②本物件および付属施設について修理等が必要になったとき、立会いが必要にもかかわらず、正当な理由なく拒否すること。
③本物件の賃借権を譲渡すること。
④本物件の一部または全部を第三者に転貸(同居、共同使用等の行為を含む。)若しくは占有させること。
⑤本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供すること。
⑥本物件に反社会的勢力を居住させ、または反復継続して反社会的勢力を出入りさせること。
⓻本物件または本物件の周辺において、著しく若しくは乱暴な言動を行い、または威勢を示すことにより、付近の住民または通行人に不安を覚えさせること。
⑧本物件に釘打ちおよびシール等の貼り付けを行うこと。本物件に付帯する集合ポストおよび玄関ポスト等へ投函される新聞・チラシ等を放置すること。
⑨近隣に迷惑となるテレビ・ステレオ・カラオケ等の操作および楽器等の演奏を行うこと。
⑩本物件に同居人・入居者以外の者に宿泊施設として利用させること。
⑪本物件の内外の排水管を腐食させるおそれのある液体を流すこと。本物件の内外において危険な火気・可燃物の取り扱いをすること。
⑫本物件を本店又は支店として商業・法人登記を行うこと。
⑬麻雀・集会を行うこと。
⑭指定場所・指定日以外にゴミを捨てること。
⑮自動車・オートバイ・自転車等の保管場所が指定および付帯されている場合にはその指定場所以外に駐車・駐輪等をすること。
⑯階段・廊下等の共用部分を占用し、または物品等を設置すること。また、階段・廊下等の共用部分に看板・ポスター等を掲示すること。
⑰立入り禁止区域がある場合、その場所へ立入ること。
⑱公序良俗に反する行為をなすこと。
第●条(貸主への通知義務)
借主または連帯保証人は次の一に該当するときは、ただちに書面により貸主へ通知しなければなりません。
①表記記載の緊急連絡先の変更をするとき。
②借主が表記期間内に引続き1ヶ月以上にわたり不在のとき。
③表記記載の鍵(複製した鍵を含む。)を紛失または破損させたとき。
④後見開始、保佐開始、補助開始の審判を受けたとき。
⑤破産、再生手続、会社更生、清算等の申立てがあったとき。
⑥本物件の改築・改造・模様替えその他現状を変更すること。
⓻鍵(シリンダー錠を含む)の追加設置、交換をすること。
⑧借主以外の名義(表札等)を表示すること。
⑧大型の金庫その他の重量の大きな物品等を搬入・設置すること。
第●条(名義または入居者等の変更)
借主は次の各号の一に該当するときは、貸主に書面にて通知をし、承諾を得なければなりません。
①借主・同居人・入居者・連帯保証人・残存物引取人に変更が生じた場合。
②法人契約の場合で入居者に変更が生じた場合。
第●条(借主の火災保険加入)
表記賃貸借期間中、借主または入居者は自己の負担において貸主の指定する代理店を通じて借家人賠償責任担保特約・修理費用担保特約・個人賠償責任担保特約付の賃貸住宅総合保険に加入しなければなりません。
■ まとめ
貸主、借主には守らなければならない義務がそれぞれにあります。
特に借主には多くの守らなければならない義務がるため、うっかりなどで義務を怠ってしまう場合があります。
このような場合、貸主から契約を破棄される、思われる方もいるはずです。
しかし、すぐに契約が解除されるわけではありません。
賃貸借契約は、ある一定の期間、継続することが前提となっているため、貸主・借主間の「信頼関係」が基礎となっています。
そこで判例は、借主が契約違反行為を行った場合でも、貸主と借主との信頼関係が破壊されたといえなければ、貸主は簡単に契約を解除することができないとしています。
万一、義務違反を指摘された場合には素直に謝罪し、指摘された義務違反を直せば良いことです。
常習的に義務違反を行っている方は、言い訳できません、約束事あっての契約です。
わからないことは管理会社に確認して、揉め事のない生活を送っていただきたいものです。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。


●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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