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12.22024

貸主側の都合で立ち退きを求める場合の注意点、を考える

目次

  • ■ はじめに
  • ■ なぜ?立退きを求められるのか
  • ■ 正当事由とは
  • ■ 立ち退き要求が来た場合の対応
  • ■ 貸主からの立ち退きを求める場合の流れ
  • ■ まとめ

■ はじめに


賃貸物件において建物の老朽化に伴い、入居者に立ち退きを求め、建替えを行うケースが増えてきました。

貸主が借主に立ち退きを求める場合、何らかの理由を伝えると思います。

しかし、借地借家法では、貸主側の一方的な理由で賃貸借契約を解除することは認められておらず、借主の権利が保証されています。

借地借家法では貸主が入居者に立ち退いてもらうという権利を行使するには、「正当事由」が必要となるのです。

そこで、今回は、貸主側の都合で立ち退きを求める場合の手順などどのような対応をするべきなのか、を考えてみます。

■ なぜ?立退きを求められるのか


立退きを求めるのは、貸主側です。貸主として賃貸収入があり、わざわざ借主に立ち退きを求めるには当然ながら理由が発生したと考えるべきです。

貸主が借主に立ち退きを求めるには、貸主の個人的な事情などがあります。

貸主の個人的な事情について次のようなものがあります。

①老朽化・強度不足による建て替え

②貸主が自分で建物を使用する事情がある

③経済的な理由による売却

④借主による家賃滞納や契約違反

このような理由を一般的に考えて「仕方ないよね。」と考える方は少なくありません。

ただし、以上の理由のうち④借主の契約違反による立ち退きについては問題とはなりませんが、①~③などの事情による貸主が借主に対し、立ち退きを要求する場合、その立ち退き要求には「正当理由」と言うものが必要となります。

■ 正当事由とは


正当事由とは、次のとおり借地借家法にて定められています。

【借地借家法28条】
建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として、又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

条文を見ると、正当事由の要因は5つにわけることできます。

①賃貸人と賃借人の建物の使用を必要とする事情

②建物の賃貸借に関する従前の経過

③建物の利用状況

④建物の現況

⑤建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出

貸主から借主に対し、立退きを要求し、裁判となった場、上記の5つの事情等を総合的に判断されることになるようです。

その中でもっとも重視されるのが①賃貸人と賃借人の建物の使用を必要とする事情であり、もともと賃貸借契約は、「継続」することが原則であるという点が問題です。

借主にとっては、更新などの手続きを正当に行っていれば継続して借りることができるという反面、貸主にとっては土地・建物の「賃貸借契約」を締結すると、簡単には立ち退きを請求できないということです。

■ 立ち退き要求が来た場合の対応


万一、貸主から借主に対し、立ち退きを要求されても、借主は落ち着いて対応されるべきです。その理由として挙げられるのは、借主に賃貸借契約書などの過失がなければ強制力がないからです。

では、具体的にどのように対応されるべきか、お伝えいたします。

貸主から立ち退きの要求が来た場合、立ち退きの内容を確認する必要があります。

確認する事項としては、

①なぜ、立ち退く必要があるのか

②立ち退く時期

③引越しにかかる費用の負担

④引越しまでの賃料

⑤退去における原状回復の費用

などが挙げられます。

参考までに居住用物件の立ち退き費用は法律で定められているわけではありませんが、目安として新たに借りる賃貸物件の賃料の7ヵ月分程度と言われています。

この理由として、新たに賃貸物件を借りる場合に要する費用が新たに借りる賃貸物件の賃料の家賃5ヵ月分ほどであることが挙げられ、プラス引越し費用と考えられるためです。

このように借主側から見れば、貸主の立ち退きを求められても落ち着いて対応をすることが大切です。決して対立するような対応だけはされるべきではなく、反対に損をされることが考えれます。

■ 貸主からの立ち退きを求める場合の流れ


貸主は借主に対し、立ち退きについて合意解除のうえ明け渡してもらいたい旨の通知をすることになります。

貸主によっては、賃貸借契約がどのような性質をもっているのか、立ち退きには借主の協力なくして成り立たないことを理解しないまま、郵送で通知をされたり、中には内容証明郵便での通知をされる方もいます。

このように郵送で送る方法もありますが、直接持参された方が、立ち退きについての意図が伝わりやすくなります。

まずは、貸主から借主へ連絡を入れ、貸主から解約の申し入れを行い、立ち退きしていただく理由と条件を直接説明することが大切です。

また、借主としては、現在の物件が気に入っている、転居の費用や手間をかけたくない、新たな入居先が見つかるか不安を感じているなど退去したくない事由があるはずですので借主の立場で親身に話を聞き、理解することが大切です。

※入居者には、遅くても立ち退きを希望する日の半年前までには通知しておきます。入居者は次の入居先を探すなど、準備する期間が必要なためです。

万一、直接ご説明が難しい場合、書面で立ち退きの要求を通知することになります。ただし、書面にて通知した場合、可能な限り早めに借主へ直接説明を行うようにします。

※書面のみの説明だと立ち退きを要求する理由や意図を伝えきれず、トラブルに発展してしまう場合が多く、書面での通知される場合、なるべく早い段階で直接説明しておくことをオススメします。

次に借主の事情も確認することができた後、立ち退き料や立ち退き時期について交渉することになります。

そして、立ち退き料や退去日の調整が整った場合、退去に必要な手続きを行い、引渡しを行います。

※調整がうまくいかずに難航した場合、調停や裁判などの手段によって解決せざるを得ない場合には弁護士への依頼費用など出費がかさみますので貸主としては慎重に進めるべきです。

■ まとめ


立ち退きを求める場合、借主と真摯に向き合うことが最も大切なことです。そうすることで借主側から見ても貸主に協力しよう、と言う気持ちが出てくるものです。

しかし、立ち退きを求めることは出費が伴います。立ち退き費用料の相場は法律で定められていません。そのため、貸主と借主との間にて協議によって決めることになります。

協議によって金額が決まることを考えれば、貸主は書面だけの通知や借主側の事情を一切考慮しない調整は考えられません。

最悪の場合、調停や裁判にもつれ込んでしまう場合もあります。

調停や裁判などの手段によって解決せざるを得ない場合には弁護士への依頼費用など出費がかさみますので貸主としては慎重に進めるべきです。力していただくことをお願いいたします。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

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