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2.262024

コラム

知っておきたい不動産知識(使用貸借の注意点)

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 使用貸借とは
  • ■ 使用貸借と賃貸借の違い
  • ■ 当事者が死亡した場合どうなるのか
  • ■ 借主が死亡した場合の建物はどうなる?
  • ■ 貸主が第三者へ譲渡した場合 
  • ■ 税務の問題
  •  -贈与税の疑問
  •  ー相続税への疑問
  • ■ まとめ

■ はじめに


使用貸借契約という言葉を耳にされたことがあると思います。この使用貸借とは、貸主が借主に無償で何らかのモノを引き渡し、借主が使用収益後に貸主に返還する契約のことをいいます。

使用貸借契約において契約期間を定めた場合は、借主はその定めに従い借りたモノを返還しなければなりません。

使用貸借契約に契約期間を定めない場合は、使用や収益を終えたあと、すみやかに貸主に返還しなければなりません。

この使用貸借とは借地借家法の適用ではなく、民法に基づくものです。

今回は、「使用貸借契約」に関する土地の無償での貸し借りについて、基本的な内容や、適用される条件、実際の注意点などを紹介いたします。

■ 使用貸借とは


使用貸借とは、所有している土地や建物などの不動産を金銭などの対価の発生がなく、無償にて貸すことをいいます。

土地の使用貸借において最も多いケースは、親子間での使用貸借です。

親の所有している土地に、子や子の配偶者が自宅を建築するというケースは典型的ではないでしょうか。

親子間の使用貸借とは別に、隣接地や友人など他人に土地や建物を使用貸借するという場合もあります。

■ 使用貸借と賃貸借契約の違い


使用貸借と賃貸借との違いは、土地や建物を貸す場合に金銭などの対価が発生しているのか、という点です。

無償で貸し出すなら「使用貸借」賃料(地代)として対価の発生があるなら、「賃貸借」となります。

また、使用貸借では、借主は対価を無償でその目的物を使用することができます。その反面、契約期間や使用収益する期間についての定めがない場合には、貸主の申し出により、いつでもその契約を解除できるなど、借主の権利は賃貸借よりも限定されています。

一方、賃貸借の場合、一方的に契約を解除することはできません

特に、土地の賃貸借契約においては、借地借家法に規定された「借地権」という手ごわい権利が認められています。

■ 当事者が死亡した場合どうなるのか


使用貸借の貸主と借主のどちらか一方が死亡した場合、使用貸借はどうなるのでしょか?

民法の規定によれば、使用貸借が終了する事由として以下のとおりとなります。

貸主と借主の間で定めた期間が満了した時
使用目的を果たした時
借主が死亡した時

※使用貸借は貸主と借主との「特別な関係に基づいていること」を考慮しているとされています。

※この同条による規定は、任意規定・補充規定であるため、特約によって排除することが可能であり、「借主が死亡した場合、借主の相続人はその地位承継する。」などの定めることも可能であり、一定の事情がある場合には使用貸借は終了しないと考えられていますので注意が必要です。

貸主が死亡した場合は、契約終了事由に該当しないため、原則的に使用貸借契約は終了せず継続します。

ただし、使用貸借契約書に「貸主が死亡した場合には使用貸借は終了する」といった定めをしておけば、貸主が死亡すると同時に使用貸借契約も終了します。

■ 借主が死亡した場合の建物はどうなる?


借主が死亡した場合、借主の建物を相続した人がいた場合はどうなるのでしょうか。

前記しましたとおり民法の原則的な考え方は、借主が死亡すると使用貸借は終了する。となります。

そのため、借主の相続人が使用貸借を相続することはできない。との判断です。

建物自体は相続することは可能であっても、その土地は貸主に明け渡さなければならなくなります。

しかしこれでは、建物を相続した借主の相続人は、相続するだけで建物を利用できなくなります。

そこで、「建物の所有を目的とする使用貸借」など一定の条件を満たす場合には借主の相続人が使用貸借の借主の地位を承継することが認められる場合もあります

ただし、この一定の条件は、借主と貸主の意見が対立してトラブルになる可能性もありますので契約書を作成して文書を明確にしておく必要があります。

使用貸借の終了事由は民法に規定されていますが、貸主・借主間のトラブルを避けるため、契約書でその時期や目的を明確に記載しておくことが大切となります。

■ 貸主が第三へ譲渡した場合


土地の賃貸借であれば、建物の登記を行うことにより第三者に対する対抗要件となります。
これは、借地借家法にて規定されています。しかし、使用貸借の場合は、借地借家法が適用外であり、第三者への対抗要件はありません


これは使用貸借が無償であるため借地借家法は、その保護を目的としていないためです。
原則、使用貸借により借りている土地が第三者に譲渡された場合、第三者である譲受人に対抗できず、その譲受人には使用貸借となる関係を主張できないことになります。よって譲受人からの建物収去請求、明渡請求を受けた場合、その主張が認められることになります。

ところが、使用貸借の目的となる土地が第三者へ譲渡された場合、その第三者からの明渡請求が権利濫用とされ、認められない場合があります

判例では、借主が使用貸借を締結するに至った経緯、使用状況、明渡請求を認めた場合の借主が被る不利益、取得した土地の価格、借主についての調査の有無や借主、借主の占有権限についての調査の有無や購入時の認識、借主との交渉状況等を考慮のうえ、明渡請求が権利濫用に当たるのか否かを総合的に判断しているようです。

また、明渡請求が権利濫用とされ、認められる場合、借主に使用料相当額の支払いを命じる判例があり、補償金・立ち退き料を支払い明渡しを認めている判例もあります。

これ全ては個別判断となるため、すべてが適用されるわけではありませんのでご注意ください。

■ 税務の問題


●贈与税への疑問

土地が親名義であり、その土地を子が自宅建物を建てて住むとします。

この場合、子は親から土地を借りることになりますので、子から親に権利金や地代を支払うことになります。(賃貸借)

しかし、使用貸借の場合には子から親に権利金や地代を支払いません。

ここで疑問が発生します。子からすれば、権利金や地代など支払うべきものが免除されている=経済的利益を受けている、ことになりますので、権利金や賃料を親から贈与として受けているのではないか?ということです。

結論からお伝えしますと、相続税法基本通達9-10(無利息の金銭貸与等)において「経済的利益の金額が少額である場合または課税上弊害がない場合は、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。」という内容が規定されています。

ただし、個人的な見解として「課税上弊害がない場合」と言うのがどのようなどのようなことを指すのかは疑問ですが、今までの見解は、この通達を根拠に家賃等のやり取りをしなくても問題がないとされています。

なお、子が土地の固定資産税相当額のみを親に支払うケースもあります。この場合には使用貸借の範囲内という見解のうえで支払いは認められており、使用貸借となります

しかし、反対に賃料が固定資産税相当額の1.5倍~2倍を支払っているので、「賃貸借」と考えられている方もいますが、これには無理があり、賃貸借とは認められません

また、当初は使用貸借により親から無償で土地を借り受けて数年後に賃貸借契約を締結して、賃料を支払うケースもあります。

問題なのは、賃料を支払うということ自体ではなく、当事者の関係(親族間など)、賃貸借契約にした経緯や目的、地代が近隣の相場水準であるのか、賃貸借契約の締結時に権利金の支払があったか、などが考慮されて使用貸借か賃貸借かの判断がされています。

●相続税への疑問

使用貸借により土地を貸している親が死亡した場合、その土地の相続税評価はどうなるのでしょうか?

親の土地を子が無償で借りて建物を建てている場合、土地の相続税評価額は自用地評価額となります。

自用地評価額による評価とは、土地の評価にあたって使用貸借により、親自身が使用していると同様の扱いとされ、他人名義の建物があるからと言って評価上減額対象とはなりません

よって、使用貸借により建物が建築されている場合、自用地評価額によって評価されることになります。

※賃貸借の場合では土地の相続税評価額は、自用地評価額から借地権の評価額を控除した価額となります。

※使用貸借契約から賃貸借契約に変更した場合、変更した時期に親から子へ借地権の贈与があったとみなされて子に贈与税が課税されてしまう場合があります。

※借主が法人の場合

税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出しているか否かによって土地の評価方法が異なります。

① 無償返還届出書を提出している場合

無償返還届出書を提出している場合には、土地の相続税評価額は自用地評価額となります。

税務署に無償返還届出書を出している場合も、自用地評価額となる

② 無償返還届出書を提出していない場合

無償返還届出書を提出していない場合、土地の相続税評価額は、自用地評価額から借地権の評価額を控除した価額となります。

■ まとめ


土地の使用貸借は、土地の所有者の死亡によっても終了せずに相続人に承継され、借主の死亡により終了することが原則です。

使用貸借は、口約束など契約書を作成せず、実行されることが多く、その契約書を作成していないことにより、貸主、借主のいずれかの死亡により、相続人が対応に困ることが多くあります。

そもそも、使用貸借なのか賃貸借なのかの区別がわからず相続税評価、使用貸借のまま相続が発生した後の、借主との問題など、契約書の作成方法により様々な問題を引き起こす可能性のある契約です。

「使用貸借は問題は起きない」と言われる方、少なくありません。問題が生じてからでは解決が大変です。使用貸借される場合には必ず専門家へご相談ください。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

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