
目次
- ■ はじめに
- ■ 預貯金の「調査」と「残高証明」の取得
- ■ ゆうちょ銀行を税務署は必ずチェックを行う
- ■ どのような書類が必要なのか
- ■ 相続における預貯金相続の注意点
- ■ まとめ
■ はじめに
相続における預貯金の調査と書類集めは、亡くなられた方の相続税の財産評価・相続税額の算出、口座凍結を解除し、名義変更や払い戻しを行うために不可欠です。
また、必要な書類は、金融機関への照会、残高証明書の取得、実際の解約・名義変更の段階で異なるため、相続になれない方には大変な作業となります。
そこで、今回は 「預貯金の調査と書類集め」について考えてみます。
■ 預貯金の「調査」と「残高証明」の取得
亡くなられた方の財産がどこの金融機関にあるのか不明な場合、まずは金融機関に対し、調査が必要となります。
1.金融機関が判明している場合
手掛かりとして亡くなられた方の遺品より通帳、キャッシュカード、銀行からの通知、確定申告書を探します。
次に金融機関での調査を行い、残高証明を取得することになります。
※必要書類:
被相続人の除籍謄本・原戸籍(死亡〜出生)
相続人全員の戸籍謄本
来行する相続人の本人確認書類(運転免許証など)
来行する相続人の印鑑証明書と実印
通帳・カード(あれば)
注意点: 残高証明は「亡くなった日の残高」を依頼します。
※被相続人の除籍謄本・原戸籍(死亡〜出生)の代わりに法定相続情報が便利です。
※書類収集の効率的な方法
法定相続情報一覧図の作成: 法務局で「法定相続情報一覧図の写し」を取得すると、多くの金融機関で戸籍謄本の束の代わりに提出でき、手続きが大幅に簡略化されます。
ゆうちょ銀行の活用: ゆうちょ銀行は口座調査が比較的スムーズです。
預金口座の一覧表作成: 生前に作成しておくとスムーズですが、亡くなった後は通帳の履歴から過去の取引をたどります。
相続税申告が必要な場合、通帳履歴は過去5〜10年分程度を確認しておくのが安心です。
2.通帳・カードが見当たらない場合の調査方法
通帳やキャッシュカードが見当たらない場合、次の順で調査を進めることになります。
①亡くなられた方への「郵便物」などから探す方法
通帳が見当たらない場合、金融機関からはがきや封筒が届くはずです。
金融機関からのダイレクトメール、カレンダー、ポケットティッシュ、年金振込の通知、保険料の引落とし通知、残高報告書が届いていれば、それを頼りに調査を行うことも可能です。
※ 亡くなられた方にはネット銀行(楽天、SBI、PayPay銀行など)の可能性もあるため、スマートホンやパソコンのメールアプリで「銀行」「口座」「ログイン」などのキーワードで検索する方法も考えられます。
② 「全店照会(名義照会)」をかける方法
郵便物より金融機関が絞れた場合、近くのその金融機関に出向き「全店照会」を依頼します。
方法: 支店名がわからなくても、その銀行の「全支店」に亡くなった方の名義があるか一括で調べてくれます。
※地元の地方銀行、信用金庫、農業協同組合(JA)、ゆうちょ銀行は必須です。
※「相続時預貯金口座照会」は、通帳がない口座を見つけるための強力な手段ですが、マイナンバーとの紐付けが条件となる点に注意が必要です
※この照会により、口座の有無は判明します。ただし、口座の有無についてのみであるため、残高などはわかりません。紹介による回答後、各金融機関に対し、個別に対応してもらうことになります。
③過去の「確定申告書」や「源泉徴収票」を確認する
亡くなった方が確定申告をしていた場合、還付金の振込先や、利子所得・配当金の支払元として銀行名が記載されていることがあります。
④証券会社や保険会社からの書類
株や保険の配当・給付金の振込先として、必ずどこかの銀行口座が指定されています。証券会社からの通知があれば、その裏側に銀行が隠れています。
⑤全銀行 照会サービスを利用する方法「相続時預貯金口座照会制度」
相続時の預金口座・残高照会(個人・一般向け)
故人の名義でどの銀行に口座があるか分からない場合、以下の制度を利用して全金融機関へまとめて照会できます。
本人開示の手続き | 全国銀行個人信用情報センター | 一般社団法人 全国銀行協会
特徴: 銀行協会が、全加盟銀行に対して「相続人の口座が存在するか」を照会ができる。
対象: 全銀協に加盟する銀行(ネット銀行含む)。
利用方法: 全銀協の公式サイトから申請を行います。なお、戸籍謄本や本人確認書類が必要となります。
費用: 1回1,100円(税込)※2025年4月に開始された制度で私は実際に使用したことがありません。
■ ゆうちょ銀行を税務署は必ずチェックを行う
相続税が課税される場合、税務署は独自の権限で金融機関を調査します。ゆうちょ銀行は調査対象の筆頭です。
家族が把握していない口座に数万円入っていただけでも「申告漏れ」を指摘されるリスクがあるため、必ず照会をかける必要があります。
ゆうちょ銀行は全国どこにでもあるため、子供の頃に親が作ってくれていたり、昔の給与振込や公共料金の引き落としに使っていたりするケースが非常に多い金融機関です。
通帳が見当たらない場合、全国の店舗に亡くなった方の名義があるか一括照会できます。
また、2007年の郵政民営化以前に預けた「定額貯金・定期貯金」などは、満期から20年経過すると権利が消滅し、引き出せなくなるため、確認をしておく必要があります。
※普通預金(通常貯金)は消滅することはありません。
※ゆうちょ銀行の場合、現存照会を依頼すれば、通帳がなくても全国の口座の有無を調査してもらえます。
※旧住所や旧姓で通帳を作られている場合もあるため、それらも伝えて照会することをおススメします。
■ どのような書類が必要なのか
金融機関に照会を依頼し、口座が見つかった場合、相続税申告や遺産分割のために申請していただきたい書類は主に以下の3点です。
1.残高証明書
亡くなられた方の死亡日時点で、その金融機関にどれほどの金銭があったかを証明する書類です。
※死亡日(相続開始日)現在のものを取得してください。
※普通預金、定期預金、外貨預金など、すべての口座の残高証明書が必要です。
2.既経過利息計算書
この既経過利息計算書は、普通預金では取得する必要がありません。定期預金や定額貯金がある場合に必要となります。
亡くなられた方の死亡日に解約したと仮定して、それまでの利息(税引後)を計算した書類です。
※相続税では定期預金、定額貯金の場合、「元本+利息」の合計額を財産として申告します。
※普通預金に数億円といった残高があり、利息も相当な額となる場合には利息をの計算が必要になることもあります。
※金融機関によっては残高証明書の中に利息額を併記してくれる場合もあります。
3.取引推移証明書
「通帳の履歴」を金融機関に発行してもらう書類です。
税理士によって異なりますが亡くなられた日から遡って過去5年〜10年分を依頼します。
生前贈与や名義預金(家族名義だが実態は被相続人の資金)がないかをこの履歴からチェックします。
※過去5年~10年分の通帳がある場合には、取得する必要はありません。
■ 相続における預貯金相続の注意点
預貯金の相続で、預貯金の注意すべきポイントは以下の3点です。これらは大変注意しなくてはなりませんのでご注意ください。
1.「名義預金」とみなされる場合
税務調査で最も指摘されやすい項目が名義預金です。預金口座の名義は「妻」や「孫」となっているものの、実際に預貯金は亡くなられたのものであり、通帳や印鑑も亡くなられた方が管理していた場合です。実態が亡くなられた方の財産であれば、相続財産に含めて申告する必要があります。
2.葬儀費用などの「引き出し」履歴
亡くなられた方の入院費や葬儀費用のために引き出した現金が手元に残っている場合、その残額は「預金」ではなく「現金」として相続財産となります。
入院費や葬儀費用として引き出した場合、必ず使途を明確にするため領収書などを整理し、残った額を正確に把握しておく必要があります。
3.「振込専用口座」や「ネット銀行」の漏れ
通帳を発行しないネット銀行(楽天銀行、住信SBIネット銀行など)、証券会社との連携口座は見落とされる事案がここ数年多くあるようです。
亡くなられた方のスマホのアプリや、登録されているメールアドレスの受信履歴をチェックし、金融機関からの通知がないか確認することも大切です。
4.亡くなる直前(直近3〜5年分)の通帳履歴をチェックされる
実務上の目安として「1回50万円以上」の出金です。
税務署は亡くなる直前(直近3〜5年分)の通帳履歴を細かくチェックします。特に以下の場合は、使途を説明できるようにしておく必要があります。
①調査対象になりやすい金額の目安
50万円〜100万円単位の出金: 葬儀費用、入院費の精算、生前贈与、あるいはタンス預金など隠し財産ではないかと疑われます。
※10万円〜30万円を頻繁に引き出している場合、生活費としては多すぎでは?とみなされ、使途を聞かれることがあります。
②「使途」を証明するために残しておくべきもの
金額の多寡にかかわらず、以下の領収書やメモを保管しておくと安心です。
医療費・介護費: 病院や施設への支払い領収書。
葬儀関連: 葬儀社への支払いだけでなく、お布施や会食代。
※お布施はメモ下記で問題ありません。
自宅のリフォーム費用・家電購入費用などの領収書。
※生活費: 公共料金の引落とし以外、まとまった現金の使い道。
③「亡くなる直前」の出金
亡くなる直前(数日前〜当日)に引出した金額は、葬儀費用のために使用したとしても、「亡くなった瞬間には口座に入っていた現金」として相続財産に計上したうえで、「葬儀費用」として差引く処理が必要です。
※使途が思い出せない場合、税務調査での指摘を避けるため、一旦「手許現金(タンス預金)」として相続財産に含めて申告するのが最も安全な方法です。
■ まとめ
相続税申告のため、預貯金の手続きを、「やること・集めるもの・注意点」の3つにまとめると以下の3点となります。
1.やること(銀行・郵便局の窓口で)
「相続税の申告に使うので、亡くなった日時点でこれらをください」と依頼します。
残高証明書(全ての口座)
既経過利息計算書(定期・定額貯金がある場合)
取引推移証明書(過去5〜10年分の入出金履歴)
※通帳が手元にない場合は必須です。
2.集めるもの
金融機関の窓口へ行く際に必要な「必要な証明書」です。
亡くなった人の除籍謄本(死亡の事実確認)※法定相続情報
窓口に行かれる方の戸籍謄本(相続人である証明)
窓口に行かれる方の本人確認書類(免許証など)
実印・印鑑証明書(念のため持参)
発行手数料(数千円程度)
3. 注意点
書類が集まったら、以下の「数字」を整理します。
ゆうちょ銀行: 通帳がなくても「現存調査」で必ず照会を行う。
名義預金: 家族名義でも「中身が亡くなった人のもの」なら申告に含める。
大きな出金:50万円単位など使途不明の出金は、領収書を探すか「手許現金」として計上する。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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