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7.52024

不動産の基礎知識(代理人とは?)

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 代理権の種類
  • ■ 代理人の種類
  • ■ 法定代理
  • ■ 任意代理
  • ■ 法人の場合 
  • ■ 代理による署名記名押印の方法
  • ■ まとめ

■ はじめに


不動産の契約において、売買であれば「売主」、「買主」、賃貸借であれば「賃貸人」、「賃借人」の署名欄に署記名押印の調印を行うことにより契約は、完全に成立したことになります。

この契約には代理人が本人に代わり契約を行うこともあります。

ただし、言うまでもありませんが、その代理人に売買であれば「売主」、「買主」、賃貸借であれば「賃貸人」、「賃借人」の本人の代理を権限があることが必要です。

今回は、「代理人」が契約書にどのように署記名押印するのかなど代理人の権限と併せてご説明させていただきます。

■ 代理権の種類


法律上、代理権限があるときは有権代理、代理権限がないときは無権代理といいます。無権代理のときは、その契約に効力はありません。

ただし、無権代理でも「表見代理」として有権代理と同様その契約に効力が認められます。

その表見代理とは次のとおりです。

●本人が代理人に代理権限を与えたことを表示しておきながら、実際には代理権限を与えていなかった場合。

※委任状を作成し、交付しておきながら、代理権を与えていないような場合です。

●代理人が本人から与えられた代理権の範囲を超えた行為してしまった場合。

●代理権が与えられていたが、代理権が消滅し現在は権利がないにもかかわらず、代理人として行為を行ってしまった場合。

【注意点】

上記事項が重複した重畳類型も表見代理として認められます。

なお、表見代理が成立しても無権代理であることに変わりはなく、相手方は無権代理の他の効果を主張することも可能です。

例えば、契約を取り消したり、無権代理人に責任追及することもできます。

■ 代理人の種類


代理人は大きく分けて「法定代理人」と「任意代理人」の2つがあります。
法定代理人は、成年後見人や未成年者の親権者等の法律で定められた代理人のことです。

それに対して、任意代理人とは法定代理人以外の任意で委任された代理人のことを指します。
任意代理人は本人が自由に指名できるため、誰でもなることができます。

※代理人=使者ではない。
使者とは、本人の意向を伝えるだけの人であり、その場で判断はできない人になります。

一方で、代理は本人に成り代わって法律行為ができる人であり、その場で判断をすることが可能です。

■ 法定代理


●未成年者の場合

未成年者とは年齢が18歳に達していない者をいいます。

未成年者は法定代理人の同意がある場合を除いて不動産の売買・賃貸借の契約をすることはできません。しかし、親権者である両親が法定代理人として売買することは可能です。

【注意点】

●両親が離婚している場合、親権者である親が法定代理人となります。

●両親が死亡している場合、裁判所が選任した後見人が法定代理人となります。

●両親は共同親権として共同で行う必要があるため、戸籍謄本の確認は必須となります。

●両親がこの不動産を売却することについて禁止されていません。

(財産の管理及び代表)

第824条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

●親が買主となる場合、利益相反行為として禁止されています。

ただし、年齢が20歳未満であっても、婚姻により法律上は成年と扱われ、単独で不動産売却などの契約を行なうことができます。

(利益相反行為)

第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

●成年被後見人の場合

成年後見人とは、成年被後見人に代わって、法律行為の支援補助をする法定代理人のことです。

成年被後見人とは、精神上の障がいで判断力が著しく低下した方や、財産の管理が難しい方が該当し、「精神上の障害により判断能力を欠くとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人」となります。

成年後見制度は、精神上の障がいにより事理を弁識する能力が十分でない者に対する保護制度で、障がいの程度により「成年被後見人」「被保佐人」「被補助人」の3種類に定められており、行為能力がそれぞれ制限されています。

成年被後見人の場合

不動産の売買等法律行為を行う際には、成年被後見人は売買ができないので法定代理人である後見人が代理して契約締結することになります。

成年被後見人が単独で売買契約したときは、取消の対象となり、自宅売買の場合は、家庭裁判所の許可を得なければ無効となります。

※被後見人であるか否かは、後見人が確認できる後見登記事項証明書によって確認することになります。

被保佐人の場合

被保佐人が不動産の売買をするには保佐人の同意が必要となります。ただし、代理権付与の審判により、保佐人が一定の法律行為について代理権を得ることもできます。

被補助人の場合

被補助人は、原則として法律行為をすることができます。ただし、家庭裁判所が補助人の同意を要するとした不動産の売買等の法律行為については、補助人の同意が必要となります。
※補助人は、保佐人と同様に、一定の法律行為について代理権を得ることができます。保佐人及び補助人は、その権限については事前の確認が必要となります。

■ 任意代理


本人が第三者に代理権を与え、その者が代理人として売買等を行う場合です。

通常は、代理となっているケースは、ほとんどの割合で任意代理と思われます。

代理人の資格は原則ありません。そこで、代理人が代理権を持っているどうかを調べることが厄介になります。

一般的には、代理人が相手方に本人の印鑑証明書付の委任状を示して代理権の存在を証明することになります。

 ただし、不動産の取引のような重要な取引に当たっては、委任状だけでは不充分であり、最低限面談・電話等により、本人の意思を確認する方法をとる必要が生じます。万一、この最低限の確認方法を怠り、損害が生じた場合には媒介業者の責任が発生することは覚悟しなければなりません。

■ 法人の場合


当事者が法人の場合は前記の代理と同じ問題が生じます。

法人の意思は、その代表者の意思により決定されます。そこで、代表者と称している者が代表権を持っているのか、を調査しなければなりません。これには、履歴事項証明書で判断します。

【ご注意】

現在事項証明書履歴事項証明書があります。

現在事項証明書とは現在有効な登記内容が記載されている証明書で、会社の現在の事業目的、資本金、役員などが記載され、現在は有効でない過去の会社の登記内容は基本的に記載されていません。

履歴事項証明書は、現在有効な登記内容に加えて、証明書を請求したときから3年前の年の1月1日以降に抹消された、過去の登記内容についても記載されている証明書です。

約3年分の登記の変更履歴について記載されているため、どのような変更履歴があったかを証明することができます。

履歴事項証明書が、一番情報量の多い証明書となります。そのため、法人登記簿の提出を求められた場合は、基本的には履歴事項証明書を取れば記載内容が不足することはないはずです。

■ 代理による署名記名押印の方法


1.法定代理

●未成年者の場合(売主の場合)

売主 住所 藤沢市亀井野1丁目●●番地の●

   氏名 亀井野 太郎

   上記亀井野太郎法定代理人   

藤沢市亀井野1丁目●●番地の●

親権者 亀井野 一郎  (実印)

親権者 亀井野 花子  (実印)

●成年被後見人の場合

売主 住所 藤沢市亀井野1丁目●●番地の●

氏名 亀井野 太郎

   上記亀井野太郎成年後見人   

藤沢市藤沢2丁目●●番●号

藤沢 次郎  実印・資格印

2.任意代理

売主の場合

売主 住所 藤沢市亀井野1丁目●●番地の●

   氏名 亀井野 太郎

   上記亀井野太郎法定代理人   

藤沢市亀井野1丁目●●番地の●

亀井野 一郎  (実印)

3.法人の場合

売主の場合

売主 藤沢市亀井野3丁目●●番地の●

   ●●●●株式会社

   代表取締役 藤沢 太郎  (会社の代表者印)

■ まとめ


代理人は大きく分けて「法定代理人」と「任意代理人」の2つがあります。
法定代理人は、成年後見人や未成年者の親権者等の法律で定められた代理人のことです。

それに対して、任意代理人とは法定代理人以外の任意で委任された代理人のことを指します。
任意代理人は本人が自由に指名できるため、誰でもなることができます。

法定代理人は種類によって与えられる権限は異なりますが、不動産を売却することは可能です。ただし、居住用不動産か非居住用不動産かによって、手続きが異なる場合もあるため、注意が必要です。

任意代理人は不動産の取引のような重要な取引に当たっては、委任状だけでは不充分であり、最低限面談・電話等により、本人の意思を確認する方法をとる必要が生じます。そして売却の売主の場合、「媒介」「契約」「決済」と最低限3つの委任状が必要となります。

すべての委任状において専門的知識が必要となりますので、代理行為が生じる場合には専門家へご相談いただくことをオススメします。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。

●ご売却をご検討の方は、こちらをご参照ください。

●賃貸をご検討の方は、こちらをご参照ください。

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