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5.102024

不動産売買の注意点(売主による抵当権の抹消)

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 抵当権の抹消に関する条文
  • ■ 売主は、抵当権の抹消をいつまで行うのか
  • ■ 実務に関連する留意点
  • ■ まとめ

■ はじめに


決済とは、不動産売買契約書にもとづいて購入する物件の残代金を支払い、その物件の所有権の移転登記と引渡しを受け取ることです。

つまり、不動産の決済というのは通常「残代金の支払い」「所有権の移転登記」「物件の引渡し」の3点を同時に行うことが原則となります。

また、残代金の支払いと併せて公租公課(不動産の場合:固定資産税・都市計画税、マンションでは管理費等)の分担にもとづく清算や売主が抵当権の抹消を行う必要がある場合にはその抵当権の抹消も行う必要があります。

そこで、今回は「決済」に付随する「売主による抵当権の抹消」の実際の注意点を売買契約書の条項を含めて紹介いたします。

■ 抵当権の抹消に関する条文


不動産売買契約書には、次のとおり抵当権の抹消についての条項があります。

(抵当権等の抹消)

第●条 売主は、買主に対し、本物件について、第●条の所有権移転時期までにその責任と負担において、先取特権、抵当権等の担保権、地上権、賃借権等の用益権その他名目形式の如何を問わず、買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を除去抹消します。

この条項から確認できるのは、「売主が」、「買主のために」、「所有権移転時期までに」、「抵当権など買主の完全な所有権を阻害する一切の負担を除去抹消しなければならない」、となります。

もっとわかりやすく言い換えるのであれば、「売主が買主の完全なる所有権を約束する」条項となります。しかし、「所有権移転の時期までに」とは、具体的にはいつの時期なのか、ということです。

■ 売主は、抵当権の抹消をいつまで行うのか


不動産売買契約書には、次のとおり所有権移転の時期について規定されています。

(所有権の移転の時期)

第●条 本物件の所有権は、買主が売主に対して売買代金全額を支払い、売主がこれを受領した時に売主から買主に移転します。

2 本物件の所有権は、買主が売買代金全額を支払ったとき(不動産売買では残代金支払いのとき)、に買主に移転します。

民法では、所有権の移転は当事者の意思表示のみで移転する旨の規定(617条物件の設定及び移転)があります。この条項は特約となりますが、当事者の公平の見地からみて相当であるということは言うまでもないと思います。

結論からして売主は(所有権の移転の時期)の条項から「所有権移転の時期までに」は、「買主が売買代金の全額を売主に支払うまでに」となります。

■ 実務に関連する留意点


抵当権等の除去抹消は、所有権移転の時期まで=買主が売買代金の全額を売主に支払うまでに抹消しなければならない。ということが理解できました。

しかし、売主が自己資金または受領した手付金等により債務を完済し、決済前までに抵当権等を抹消できる場合は良いのですが、実際には買主から受領する残代金の一部を利用して債務を完済する場合がほとんどです。

この場合、あらかじめ金融機関(債務者)と打ち合わせのうえ、残代金支払い日に残代金の授受、債務の完済、抵当権の抹消、所有権移転の手続きを司法書士立ち合いのもとで同時に行う同時抹消が一般的となっており、売買契約書に定める条項とは異なる流れになります。

【決済時における同時抹消の流れ】

1.司法書士による①売主側の抵当権抹消登記手続き書類の確認、②買主への所有権移転登記手続き書類の確認、③買主側の抵当権設定登記手続き書類が不備なく全て揃っているかを確認します。

2.金融機関による買主へローン融資を実行します。

3.買主は売主に売買代金を支払い、売主は買主からの売買代金を充当して債務を完済します。

4.司法書士により売主の抵当権抹消・買主への所有権移転の登記、買主の抵当権設定登記を同日に同時申請を行います。

■ まとめ


以上のとおり売主は買主からの残代金受領の前までに抵当権を抹消しなければなりません。しかし、実務的には同時抹消が一般的になっており、債務者である金融機関・買主が借り入れを予定している金融機関・司法書士との調整が非常に大切なことになります。

また、不動産売買契約書の条項と実務とが異なることから、トラブルに発展する場合もあり、次のとおり特約として売買契約書へ記載する必要も生じますので抵当権抹消については売買契約書締結以前に仲介業者を介して確認しておくことが必要となります。

【特約】

売主、買主は、本契約書第●条(抵当権等の抹消)の定めにかかわらず抵当権等の担保権の除去抹消については、売主が買主から受領する残代金を利用して、その債務を完済のうえ、抹消することを確認するものとします。ただし、この抵当権等の担保権の除去抹消に要する費用は売主の負担とします。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

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