目次
- ■ はじめに
- ■ 売主の本人確認
- ■ 通常の売買契約における「売主」と「登記名義人」異なる場合
- ー登記事項証明書記載内容の登記名義人の氏名、住所が異なる場合
- ー相続により、売主と登記名義人が異なる場合
- ー他人物売買により、売主と登記名義人が異なる場合
- ■ まとめ
■ はじめに
不動産の売買契約において「売主」と「登記名義人」とが同一人であることが前提条件となります。
しかし、売買契約の締結時において「売主」と「登記名義人」とが異なる場合があります。
また、契約当事者以外の者が売買対象物件占有している場合も、買主が使用収益するうえで重大な支障が生じるため、買主はその占有の内容を把握しなければなりません。
それらを博したうえで売買契約等に臨み、不利益を被らないようにする必要があります。
そこで、売買契約において「売主」と「登記名義人」とが異なる場合など実際の注意点などを紹介いたします。
「占有者」がいる場合については後日、改めて紹介いたします。
■ 売主の本人確認
本人確認とは、売主が当事者本人かどうかを確認することです。
売主が個人の場合には運転免許証などの公的な身分証明書、登記済権利証や登記識別情報などと併せて提示いただき確認することになります。
また、当事者が法人の場合には、法人の登記事項証明書・印鑑証明書のほか、代表者または取引担当者の本人確認をおこないます。
※本人確認は書類だけの確認となりますが、売主という立場の場合に必要なことは自宅や事務所に訪問し、そこに本人が所在することを確認することが必要となります。
■ 通常の売買契約における「売主」と「登記名義人」が異なる場合
(1)登記事項証明書記載内容の登記名義人の氏名、住所が異なる場合
■ 氏名が異なる場合
氏名が異なる場合の理由としては、結婚による氏名変更、離婚による氏名変更、養子縁組による氏名変更などが考えられます。
通常、売買契約の締結前に氏名変更登記を行いますが、登記申請から完了まで2週間もあれば完了しますので売買契約締結後に行うこともあります。
ただし、売買契約締結後に氏名変更を行う場合、売買契約締結時にどのような理由により氏名変更を行うか、その証拠となる資料を買主へ提示する必要があり、買主は仲介業者より説明を受け、かつ資料を確認のうえ売買契約を締結するようにしてください。
売買契約時に氏名変更が未了の場合の提示資料
住民票(氏名変更の伴う従前の氏名が記載されている場合)
従前の氏名が記載されていない場合には戸籍謄抄本
※売主から見て氏名変更の場合、他人に内容を知られることになりますので売買契約締結前に登記申請を行うほうが良いかもしれません。
■ 住所が異なる場合
住所が異なる場合の理由としては、引越しによる住所変更などが考えられます。
住所変更も売買契約の締結前に完了してお必要がありますが、意外と疎かにするされている方少なくありません。
そのような理由から売買契約締結後または、所有権移転時に所有権移転登記と併せて依頼することもあります。
売買契約時に住所変更が未了の場合の提示資料
住民票
数回にわたり住所を変更している場合には戸籍の附票
■重要事項説明書に記載される内容
氏名・住所の変更登記が未了の場合にはつぎの説明が重要事項説明書に記載されます。
●婚姻等による氏名・住所変更
売主と登記名義人は同一人ですが、住所・氏名の変更登記が未了です。
●住所変更が未了の場合
売主と登記名義人は同一人ですが、住所変更登記が未了です。
■売買契約書に記載されている条文
(所有権移転登記等)
第●条 売主は、買主に対し、売買代金全額の受領と同時に本物件について、買主の名義に、所有権移転登記申請手継きをします。
2 前項の登記申請に要する費用は、買主の負担とします。ただし、本物件に関する所有権登記名義人の住所、氏名の変更登記を要する場合の費用は、売主の負担とします。
(2)相続により、売主と登記名義人が異なる場合
相続により、売主と登記名義人とが異なっており、相続登記が未了である場合です。
相続税の申告は、被相続人が亡くなった日より10ヶ月となります。相続人の確定資料、相続税に関する資料、そして相続税を収めるためにどの土地を処分するかなど慌ただしくなり、相続登記まで完了する時間がないのが現実です。
しかし、買主から見れば本当にほかの相続人は、売主名義に登記することを同意しているのかが不安材料です。
そこで、他の相続人が売主にその物件を相続させることを同意していることが問題となります。
その同意の証として遺産分割協議が確定しており、遺産分割協議書が締結済であるが売買契約の要件となります。
売買契約時に相続登記が未了の場合の提示資料
遺産分割協議書(実印押印)
印鑑証明書(相続人全員)
■重要事項説明書に記載される内容
登記名義人は被相続人であり、売主は相続人として遺産分割により対象不動産を取得済です。
■売買契約書に記載されている特約
(相続登記に関する特約)
特約第●条 売主は、所有権移転登記の時期までに、その責任と負担において本物件につき売主名義の相続登記を完了しなければなりません。
(3)他人物売買により、売主と登記名義人が異なる場合
他人物売買とは、対象不動産は未取得(所有権移転登記をしていない)ですが、売買契約は締結済等の場合です。
売主が所有権を取得していないものは他人物となります。
例えば、主は売買契約を締結済ですが、売買代金の支配時期が未到来の場合です。
他人物売買の場合の提示資料
取得契約の売買契約書
※できれば仲介業者より取得契約の売主へのヒアリング
■重要事項説明書に記載される内容
対象不動産の現所有者は登記名義人であり、売主は同所有者との間で令和●年●月●●日付売買契約を締結済です。
■売買契約書に記載されている特約
(第三者所有物件に関する特約)
特約第●条 売主は、本物件取得のため、現所有者●●●●との間で令和●年●月●●日付にて売買契約(以下、「取得契約」という。)を締結済ですが、令和●年●月●●日までに取得契約にもとづき、本物件の所有権を取得し、引渡しを受け、かつ、令和●年●月●●日までに売主を権利者とする所有権移転登記を完了しなければなりません、
■ まとめ
今回は、売主と登記名義人が違う場合の代表的な内容や確認が必要な書類を紹介しました。
買主は安心して売買契約を締結するためにも売主と登記名義人が違う場合には仲介業者に必要な種類を提示してもらい納得のうえ売買契約を締結するようにしてください。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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