【 目次 】
- ■ はじめに
- ■ 月極(つきぎめ)とは何?
- ■ 単なる車庫証明を取得するための契約は要注意
- ■ 月極駐車場の法令上の扱い
- ■ 宅地建物取引業法は適用されない
- ■ 契約期間について
- ■ 契約期間内の途中解約について
- ■ 更新について
- ■ 貸主の管理責任
- ■ まとめ
■ はじめに
不動産の購入やお部屋を借りて引っ越し先が駐車場付きの物件でない限り、近隣の月極駐車場を探されるのが一般的と思います。
月極駐車場は、不動産の購入や賃貸を借り受ける場合と違い、手続きも簡易的で早ければ今日申し込んで今日から車を停められる状況になる場合もあります。
月極駐車場は月極と呼ばれている割には契約期間を1年間と年単位で定めているケースが大半を占めています。
また、貸主からも1ヶ月前の解約予告により解約される場合や短期契約の禁止など借りる方から見て「なんで?」と思われる多いのではないでしょうか。
そこで今回は月極駐車場の契約期間内での解約や短期契約の是非など月極駐車場に関する契約について考えてみました。
■ 月極(つきぎめ)とは何?
車を購入する場合、「自動車の保管場所の確保等に関する法律」(車庫法)により、原則として自宅から半径2km以内に車を保管するスペースを確保しなければなりません。
自宅に車を保管するスペースがない場合には、どこかに駐車場を探さなければなりません。
そこで思いつくのが、「月極駐車場」です。
この月極駐車場の月極とは、1ヶ月単位という意味から月単位での契約と思われている方は多いはずです。しかし、1ヶ月のうち数日のみ利用しますと言われても、1ヶ月分の賃料は負担いただきます。という意味合いで「月極」という言葉が使われています。
月極駐車場の契約期間は、通常1年単位が多く、短期契約は敬遠されてしまいがちです。
■ 単なる車庫証明を取得するための契約は要注意
車を購入する場合、名義変更をする場合、車の保管場所を変更する場合には車庫証明書が必要となります。この車庫証明の取得には主に4つの条件があります。※警視庁ホームページによる車庫証明取得のための要件。
①駐車場、車庫、空き地等道路以外の場所であること。
②使用の本拠の位置から2キロメートルを超えないこと。
③自動車が通行できる道路から、支障なく出入させ、かつ、自動車の全体を収容できること。
④保管場所として使用できる権原を有していること。
この4つの条件のうち④保管場所として使用できる権原を有していること。の証明として月極駐車場の場合、保管場所使用承諾証明書(記載事項が充足されていれば契約書の写しでも可)が必要となります。
この保管場所使用承諾証明書を取得するために月極駐車場を1年契約で締結し、その際に車庫証明を取得した後、解約するケースがあります。
これは、いわゆる「車庫飛ばし」と言われ懲役又は罰金が発生しますので注意が必要です。
このような「車庫飛ばし」を防ぐために、管理会社の中には車庫証明の発行に必要な保管場所使用承諾証明書の発行をする場合、一定期間駐車場を解約できない条文を取り入れた契約としているところもあります。
※虚偽の届け出の車庫証明が発覚した場合、10万円の罰金をかけられます。
■ 月極駐車場の法令上の扱い
月極駐車場の法令上の扱いは民法に基づくものとなります。
これは、月極駐車場には土地を賃借する場合などに適用される借地借家法が適用されない、と言うことです。
借地借家法に基づくものであれば、貸主が解約しようとする場合は借主が保護されることになります。しかし、月極駐車場として契約を締結する場合、借地借家法は適用されず、借主が保護されないことになります。
■ 宅地建物取引業法は適用されない
駐車場として利用することを目的とする土地の貸借の媒介は、宅建業法の趣旨及び規制の実益等を考慮して、業法上の問題としては取り扱わない運用がなされています。
宅地建物取引業法が適用されない理由として次のとおりです。
①駐車場は「建物」ではない
②土地の一時使用に過ぎない
③占有権が発生しない
月極駐車場は、単に車を保管する場所を提供するサービスとみなされ、土地や建物の賃貸借とは異なる扱いを受けます。そのため、宅地建物取引業法の規制対象外となっているのです。
■ 契約期間について
月極駐車場など駐車場の賃貸借契約には借地借家法が適用されないため、民法が適用されることになります。
借地借家法の適用対象は、次の2つとなります。
①建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権
②建物の賃借権
建物の賃貸借の場合は原則として借地借家法が適用されますが、土地の賃貸借の場合は「建物所有を目的とする」賃貸借でなければ借地借家法は適用されないことになります。
民法が適用されることにより、契約期間は貸主・借主の当事者間で期間を自由に定めることが可能となります。
また、民法において貸主から更新の拒絶や解約をすることが認められています。
よって、貸主から更新の拒絶や解約をする場合、借主に対し、立退料を支払う義務も生じないことになります。
この民法の規定により駐車場の賃貸借契約において貸主から借主に対し、1カ月前の予告で解約できる旨の特約が設定されている場合にはその特約が適用されることになります。
■ 契約期間内の途中解約について
民法では、期間の定めのある賃貸借契約は、契約期間満了によって終了することが原則となります。
たとえば、契約期間が1年の場合、貸主・借主は契約期間1年間の駐車場賃貸借契約を締結し、その契約期間である1年間は賃貸借契約を解約することができないことになります。
ただし、賃貸借契約書において期間内解約の特約を定めた場合、特約で定めた期間で賃貸借契約は終了することになります。
たとえば、解約申し入れから1カ月で契約を解約することができる旨の特約を定めた場合、解約申し入れから1カ月で契約は解約されることになります。
■ 更新について
月極駐車場には借地借家法が適用されないため、「契約の更新」、「法定更新」の制度は存在しません。
契約期間の満了後において更新が可能か否かは賃貸借契約で定められることになります。
また、更新料の有無についても賃貸借契約書に記載されている更新料が適用されることになります。
■ 貸主の管理責任
駐車場内でトラブルが発生した場合、貸主や管理会社に責任を追及できると考えられているは少なくないはずです。
例えば、車上荒らし、窃盗、当て逃げ、イタズラなどによる損害賠償責任はその加害者に対し、請求されるもので、貸主や管理会社に対し、報告や相談は可能となりますが、責任を問うことはできません。
ただし、貸主が駐車場の管理者責任を問われる事由として、「駐車場状態と契約時の内容」により異なり、次の2つがあります。
①盗難の場合、車の鍵を預かる、防犯カメラなど防犯設備の充実を謳い、実際には防犯カメラなどダミーだった場合など、防犯設備の充実を条件としている場合は、管理責任を問われる場合がある。
②事故の場合、駐車設備の故障や想定し得る危険に対し、対応処置を取っていない場合、それを原因に発生した事故は責任を問われる可能性がある。
■ まとめ
月極駐車場は車の保管場所としてなくてはならないものです。しかし、月極駐車場は簡単に借りられる、という考えもありますが、貸主との間には契約期間内での解約や短期契約の是非など月極駐車場に関する契約には様々な制限などもあります。
月極駐車場を借りる場合、賃貸借契約書の内容を確認してトラブルのないようご注意ください。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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