全30回連載

第6回:借金も引き継がなきゃいけないの?(「相続放棄」という選択肢)
前回の第5回では、相続する財産には現金や家などの「プラスの財産」だけでなく、借金や未払いの税金などの「マイナスの財産」もあるという、少し怖いお話をしました。
「何も知らないと、親の借金を自動的に引き継いでしまう」のが法律の基本ルール(単純承認)です。
しかし、世の中には「親がどれだけ借金を抱えていたか知らなかった」「自分が知らないところで大きなローンを組んでいた」というケースもたくさんあります。
そんなとき、残された家族が一生その借金に苦しめられるとしたら、あまりにもかわいそうですよね。
そこで日本の法律には、マイナスの財産から自分の人生を守るための最強の防衛術が用意されています。
それが「相続放棄(そうぞくほうき)」です。今回は、この家族を守るための重要なルールについて解説します。
相続放棄ってどんな仕組み?
一言でいうと、相続放棄とは「私は今回の相続のバトンを一切受け取りません!」と宣言して、最初から相続人ではなかったことにする手続きのことです。
相続放棄をすると、借金やローンなどの「マイナスの財産」を1円も引き継がなくてよくなります。
ただし、注意しなければならないのは、セットで「プラスの財産(現金や実家など)」を受け取る権利もすべて消えてしまうということです。
「借金は要らないけれど、実家だけはほしい」という都合の良いことはできません。すべてを引き継ぐか、すべてを諦めるかの2択になります。
一般的には、あきらかに「プラスの財産」よりも「マイナスの財産(借金)」の方が多い場合に、この相続放棄という選択肢を選ぶことになります。
絶対に忘れてはいけない「3ヶ月」のタイムリミット
相続放棄は、口頭で「私は要りません」と言うだけでは認められません。
必ず、亡くなった人の住所地を管轄する「家庭裁判所」という場所に、正式な書類を出して認めてもらう必要があります。
そして、ここには非常に厳しいルールがあります。
それが「自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内」に手続きをしなければならない、というタイムリミットです。この3ヶ月の期間のことを、法律では「熟慮期間(じゅくりょきかん)」と呼びます。
人が亡くなると、お葬式やさまざまな手続きで、家族は本当にバタバタと忙しい日々を送ることになります。悲しみに暮れているうちに、あっという間に3ヶ月が過ぎてしまい、後から借金が見つかって絶望する……という大人のトラブルは本当に多いのです。
だからこそ、第5回でお話しした「財産のリストアップ(調査)」を、最初の3ヶ月以内に急いで行う必要があるのです。
手続きをする前の大失敗!「やってはいけないこと」
もう一つ、高校生のみなさんにも絶対に知っておいてほしい罠があります。
それは、3ヶ月以内であっても「亡くなった人の財産に少しでも手をつけてしまうと、自動的に借金を引き継いだ(相続放棄できなくなった)とみなされる」というルールです。
これを法律で「法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)」と言います。
例えば、以下のような行動をすると、もう相続放棄はできなくなってしまいます。
1.亡くなったお父さんの銀行口座からお金を下ろして、自分のために使った
2.お父さんが乗っていた車や、集めていた私物を勝手に売ってしまった
3.お父さん宛てに届いた督促状を見て、可哀想だからとお父さんの口座のお金で借金を一部返済してしまった
良かれと思ってやったことや、「これくらいなら大丈夫だろう」という軽い行動が、取り返しのつかない事態を招くことがあります。
もし家族に「もしも」のことがあり、借金があるかもしれないと思ったときは、とにかく「遺産には一切触らず、すぐに専門家に相談する」のが鉄則です。
まとめ:法律は知っている人の味方になる
相続放棄というルールは、亡くなった人の借金によって、残された家族のこれからの人生が壊されてしまわないように守るための「セーフティネット(安全網)」です。
法律は、知っている人にとっては心強い盾になりますが、知らない人にとっては容赦なく牙をむくことがあります。
高校生のみなさんがこの「3ヶ月のルール」と「財産に触ってはいけないルール」を知っているだけで、将来、周りの大人や大切な家族を救うことができるかもしれません。
次回からは、いよいよ今回のコラムシリーズの核心である「もめない家族」編に入っていきます。
まずは第7回「なぜ『普通の家族』ほど相続でもめてしまうのか?(よくある誤解)」をお届けします。お楽しみに!
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■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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