
目次
- ■ はじめに
- ■ 強い、という根拠
- ■ 固定金利と変動金利とは
- ■ 変動金利と固定金利、選択するポイント
- ■ マンションvs一戸建て
- ■ 居住用物件と投資物件との違い
- ■ インフレ率の指標
- ■ まとめ
■ はじめに
現時点の予測では、日本は今後、緩やかなインフレ(物価上昇)傾向が続くと見られています。
日銀は2%程度の安定的なインフレ目標を掲げており、多くの予測で2%前後の上昇率が維持される見通しです。物価上昇、賃上げ、消費行動の変化という構造変化が進んでいます。
昔からインフレには「不動産」が強い、と言われ続けてきました。しかし、このインフレには「不動産」が強い、ということはどこからきているのでしょうか。
そこで、今回は、インフレには「不動産」が強いのか、そして注意点なども含めて考えてみます。
■ 強い、という根拠
「インフレになると不動産が強い」と言われる主な理由は、不動産が「現物資産」としての性質を持ち、現金とは逆の動きをしやすいからです。
現金とは逆の動き、というのは大きく分けて次の3つと思われます。
1.資産価値そのものが上昇する(キャピタルゲイン)
インフレとは「モノの価値が上がり、お金の価値が下がること」であり、不動産は「モノ(現物)」であるため、物価上昇に合わせてそのものの価格もスライドして上がっていく傾向があります。
現金を現金のまま保持していた場合、価値が目減りすることになり、不動産に変えておくことで資産価値を保持(インフレヘッジ)できるということです。
2. 賃料も上昇する(インカムゲイン)
物価が上がると、給与や生活コストも上昇します。それに伴い、賃貸物件の賃料も上昇していくのが一般的です。
貸主にとっては、収入もインフレに合わせて増えるため、実質的な収入を維持しやすくなります。
3. 借金の「実質的な負担」が減る
不動産を購入する場合、多くの方が金融機関によりローンを組むと思われます。インフレでお金の価値が下がると、過去に借りた「1,000万円」の重みが相対的に軽くなります。
極端な例となりますが、物価が2倍になれば、1,000万円の価値は500万円くらいに感じられます。
※返済額は変わらず1,000万円ですのでご注意ください。
※インフレ時には通常金利も上昇しますので、変動金利でローンを組んでいる場合、支払額が増えることになります。そのため不動産投資が無条件で「強い」とは限りません。
■ 固定金利と変動金利とは
1.固定金利
固定金利の最大の特徴は、「将来の安心を今、確定させてしまう」ことにあります。
インフレ下では、世の中の物価が上がり、食料品や電気料金などの光熱費が上がった場合でも住宅ローンの返済額に変化は生じません。
反対にお金の価値が下がるインフレ下では、高い価値の時のお金で返済額を固定しておくことは、実質的な借金を減らすことになります。
固定金利は、将来において金利が上昇することに神経を使いたくない方、お子様の教育費など、将来の支出が決まっていて家計を安定させたい、というライフプランをお持ちの方に向いています。
2.変動金利
一方、低金利という武器で、手元の現金を最大化できるのが変動金利です。
現在の日本の変動金利は、インフレ率を下回る実質マイナスの状態です。
利息を払うよりも物価が上がるスピードの方が早いため、その浮いたお金をNISAなどの資産運用に回せば、金利差以上の利益を狙える可能性があります。
ただし、インフレが激しくなれば金利も上昇するため、返済額が上昇しても運用益や年収アップでカバーできるという余力は必要です。
変動金利は、低金利を徹底的に活用したい方、金利が上がったら繰り上げ返済できる貯金があるという方など資産運用・効率重視派の方に向いています。
結論として固定金利・変動金利どちらの選択が正しい、ではなく、どちらが「眠れるか」であり、インフレ下で「固定金利は保険料込みの安心」「変動金利はリスクを取ったリターン」と言い換えることができます。
大切なのは、金利そのものよりも、どちらの選択をしたほうが、10年後、20年後に枕を高くして眠れるか、という視点です。
不動産を購入することが「ゴール」ではなく、その後の人生を豊かにするための「手段」であることを忘れずに選択する必要があります。
また、固定金利・変動金利の選択に迷っている場合、ミックスローン(固定と変動を半分ずつ)という、中道を行く選択肢もあります。
金利のタイプを選ぶことは、自分が『将来の日本経済』をどう予測するかという、一つの決意表明なのかもしれません。
■ 変動金利と固定金利、選択するポイント
「固定金利」にすることで、金利上昇による返済額アップのリスクを封じ込めることができます。
インフレ局面において、固定金利で不動産を持つことは非常に強力な戦略になります。その理由は以下の通りです。
1.支払いは固定、収入は増加
固定金利の場合、金利がどれだけ上がっても、毎月のローン返済額は変わりません。一方で、インフレによって「賃料収入」や「自分の給料」が上がれば家計や事業収支におけるローンの負担感は軽くなっていきます。
2.借金の実質目減り
返済の重みが軽くなるメリットを、最も確実に享受できるのが固定金利です。
変動金利の場合、物価が上がっても、同時に金利も上がった場合、返済額も上がってしまいインフレの恩恵を打ち消してしまいます。
一方、固定金利の場合には 返済額に変動がないため、物価上昇による「お金の価値の下落」がそのまま自分の利益(負担軽減)に直結する形になります。
ただし、一般的に、固定金利は「将来の金利上昇リスクを銀行が負う」ため、変動金利よりもスタート時点の金利が高く設定されています。また、 万一、予想に反してインフレが起こらずデフレ(物価下落)になった場合、変動金利より高い金利を払い続けることになり、変動金利の人よりも多く利息を支払うことになります。
※固定期間の選択を 「全期間固定」ではなく「10年固定」などの期間指定型の場合、その期間が終了する時期の金利が適用されるため、適用される金利リスクは残ります。
変動金利がリスクと言われるのは、なぜか?
1.支払額が物価(賃料)より先に上がる可能性がある
インフレになると、日本銀行は物価を抑えるために金利を上げます。
この場合、変動金利は世の中の金利に合わせて、比較的早いタイミングで返済額が上がります。
また、物価が上がっても、賃料の更新や給与のベースアップには時間がかかるため、収入は増えていないのに、ローンの支払いだけが先に増える、という期間が生じるリスクがあります。
そして、変動金利には5年ルール(5年間は返済額に変動がない)、125%ルール(増額幅を現行の1.25倍までにする)という保護策があり、一見安心に思われますが、金利の急激な上昇時には本来払うべき利息が毎月の返済額を超えてしまう、ということが発生します。
この入り切らなかった利息は「未払利息」として先送りにされ、最終的に一括で請求されたり、返済が伸びるなど負担が生じるることになります。
2. 「借金目減り」の恩恵がなくなる
インフレの最大のメリットは「1,000万円の借金の価値が、実質500万円分くらいに軽くなる」ことです。
しかし、変動金利で金利も上がってしまう場合、借金の価値は減る。しかし、支払う利息の総額が増える、ということになり、差し引きで得をしない、あるいは損をする可能性が生じます。
反対に変動金利が選ばれる理由もあります。
現在の日本では、固定金利より変動金利の方がはるかに低いため、インフレが緩やかであれば、返済総額は変動の方が安く済むケースが多くあります。
これは、予想に反して金利がそれほど上がらない、ということが前提ですが、低金利の恩恵を受け続けることになります。
結論として金利とインフレ率のバランスを考える場合、投資や借入の判断基準となる「実質金利」という考え方が非常に重要となります。
1.「実質金利」を計算してみる
一般的な目安は、以下の式です。
実質金利 = 住宅ローンの金利 - 予想インフレ率(物価上昇率)
例1
ローンの金利が 1.5% で、インフレ率が 2.0% なら、実質金利は-05% です。
これは、お金を借りて不動産を買ったほうが、現金を貯めるより価値が目減りしないことを意味します。
例2
ローン金利が3.0% で、インフレ率が2.0% なら、実質金利は+1.0% です。
この場合、インフレによる借金の目減り効果よりも、払う利息の負担の方が大きくなります。
結果、実質金利が「マイナス」なら借りた方が得であり、実質金利が「プラス」なら慎重に検討する、ということです。
※日本の市場をベースにすると、目安は以下の通りです。
変動金利(0.3%〜0.5%前後)
現在のインフレ率(2%〜3%程度)と比較すると、圧倒的に「マイナス金利」の状態です。支払う利息よりも物価上昇の方が早いため、家計や投資としては非常に有利な状態が続いています。
固定金利(1.5%〜2.0%前後)
インフレ率が2%以上で推移すると予測するなら、固定金利でも十分に「実質マイナス」の恩恵を受けられます。
将来、インフレが加速して金利が3%や4%に上がっても、自分は1.5%で固定できていれば得ということです。
※今までの歴史的な目安としては長期的な金利=インフレ率+1%(成長率)として言われていました。
インフレ率が2% で安定している場合なら、金利は3%程度が適正となり、金利がインフレ率を下回っている場合、有利な金利と言えます。
■ マンションvs一戸建て
よく言われる購入するには「マンション」か「一戸建て」か、インフレ局面での「強み」や「性質」は微妙に異なります。
今までの経験として言うと、売却などの流動性ならマンション、インフレ時のコストコントロールなら一戸建てということが言えます。
1.マンション
マンションは、インフレの影響をダイレクトに受けやすい物件タイプであり、価格が上昇しやすく面があります。
これは、建築資材や人件費に大きく左右されるためであり、インフレで建築資材や人件費が上昇すると、新築価格に転嫁され、それに引きずられる形で中古価格も上昇しやすくなります。
併せて、マンションは、一戸建てに比べ賃貸需要が高いため、物価上昇に合わせた家賃の値上げが比較的スムーズに進みやすい傾向があり、インフレ時には利便性の高い場所に価値が集中することからも駅近のマンションなどは、インフレ下でも価値が落ちにくい資産となります。
2.一戸建て
一戸建ては、資産価値の維持というより「生活防衛」の面でインフレに強い性質があります。
マンションの場合、インフレで人件費や資材が上がると、管理費や積立金が値上げされるリスクがあります。
一方、一戸建ては管理費や積立金の徴収がないため、修繕などのメンテナンス費用の時期をずらし、自分でコントロールが可能となるため、支出を防くことが可能です。
また、建物は年数が経つにつれ価値が下がります。インフレで「土地」の価格が上昇した場合、資産価値の下支えとなります。
※インフレが激しい局面では、無価値にならない土地=土台を持っている安心感は大きいものです。
その他、再建築コストの上昇も考えられます。インフレで建物建築を行う場合、建築コストが上昇すると中古市場での一戸建ての「割安感」が目立ち、売却おいて有利に働くことがあります。
物件タイプ別の比較まとめ
| 項目 | マンション | 一戸建て |
| 価格の上昇率 | 高い(資材高騰の影響大) | 緩やか(土地値がベース) |
| 賃料の上げやすさ | 上げやすい | やや上げにくい |
| 維持コストの変動 | 管理費等の値上げリスクあり | 自分でコントロール可能 |
| 出口戦略(売却) | 売りやすい(流動性が高い) | 買い手が限られる場合も |
■ 居住用物件と投資物件との違い
居住用の実需とアパート経営などの投資では、インフレに対する考え方は根本的に異なります。その違いは、損益分岐点をどこに置くのか、そして代わりの効かなさ、にあります。以下の3つの視点で比較すると分かりやすいです。
1.「収支」の考え方の違い
①投資の場合
インフレで物件価格が上昇した場合、それ以上に金利、維持費(管理費・修繕)が上昇してしまった場合、賃料に転嫁できなければ収益に問題が生じ、結果投資の失敗となります。
投資を検討している方にとってインフレはチャンスと考える、一方、収支を圧迫するコスト増のリスクとして厳しく評価する考えも必要となります。
②居住用の場合
自ら居住用として不動産を購入するメリットは、将来の家賃上昇リスクから逃れることです。
インフレで回りの賃貸物件の賃料が2倍となった場合nでも自宅購入のための住宅ローン支払いは変わりません。(変動金理の場合、注意が必要です。)
自宅を売却し、利益を得ることより、将来の生活コストを確定させる「保険」としての意味合いが強くなります。
2.「金利」に対する許容度
①投資の場合
金利上昇は経費(利息)の増加を意味し、手元に残るキャッシュフローを直接目減りさせます。そのため、多少の金利上昇でも敏感に反応し、投資判断を中止することに繋がることになります。
②居住用の場合
金利が上昇した場合、住宅ローン控除などの優遇税制により、多少なりともカバーすることが可能です。また、居住する場所は絶対に必要であり、たとえ金利負担が増えても、上昇する賃料を支払っていくよりは良い、という判断が生まれやすくなります。
3.「出口戦略(売却)」の重要性
①投資の場合
投資は、いくらで貸せて、いくらで売却可能か、により投資判断されます。
インフレで価格が上昇したタイミングで売却し、利益を確定させることが投資となります。
②居住用の場合
基本的に長く住み続けることが前提であるため、価格変動に一喜一憂する必要はありません。ただし、買い替えを検討される方は買い替え先の価格も上昇しているため、売却益が生じても買い替え先が購入できない、という資産のインフレ・スライドに巻き込まれる点は注意が必要です。
損益分点の計算方法
1.居住用の損益分岐点
居住用を算出する場合の損益分岐点は、賃貸で住み続けた場合のトータルコストとの比較となります。
【計算式】
(物件購入価格+ローン利息+維持費)- 売却予想価格≦賃貸の総支払額
※物件購入価格+ローン利息: 総返済額。
※維持費: 固定資産税、マンションの場合には管理費・修繕積立金、一戸建てなら修繕費(35年で500〜800万円程度が目安)。
※売却予想価格: 現在の時価にインフレ率等を加味して計算
※賃貸の総支払額: 現在支払われている賃料×インフレ率を加味した年数分。
※インフレのため、賃料が年1%上昇とした場合、35年後には家賃は約1.4倍になります。現在の賃料を現状のままとして計算せず、将来上がる賃料と変わらないローン返済を比較することが大切です。
2. 投資用の損益分岐点(収支の分岐点)
投資として考えるなら、「手元に残る現金がマイナスとならないライン」を計算します。
【計算式】
実質利回り =(年間賃料 - 管理費・固定資産税など諸経費)÷ 物件価格
※実質利回りが、ローンの返済比率を上回っているかが分岐点となります。
※インフレで金利が上がった場合を想定し、金利が+1%、+2%になった
場合でも、賃料収入でローンと経費をすべて賄えるかを確認します。
また、インフレが進めば、賃料(収入)は上昇し、ローンの残債(支出の元本)は実質的に目減りします。数年後の「家賃上昇」を見込んで、どこで収支が改善するかを予測します。
3.「売却時」の損益分岐点(出口戦略)
一番重要なのは、「いくらで売れれば、ローンの残高を返して手元に現金が残るか」なのです。
■ インフレ率の指標
インフレ率を把握するために最も一般的で、ニュースや政府の判断基準としても使われる指標は主に2つあります。
結論から言うと、「消費者物価指数(CPI)」をチェックするのが基本です。
1.消費者物価指数(CPI)
私たちが普段買い物をする際の「モノ」や「サービス」の価格がどう変わったかを示す、最も身近な指標です。総務省が毎月発表しています。
さらに細かく、以下の3つの区分で発表されることが多いです。
総合指数
すべての品目を含めた数値。
生鮮食品を除く総合(コアCPI)
天候で価格が激しく動く「生鮮食品」を除いたもの。日銀が最も重視する指標で、ニュースで「物価上昇率2.0%」などと言われるのは、主にこれです。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)
海外情勢に左右される「原油(ガソリン・電気代など)」も除いたもの。その国の中長期的な「本当の物価の勢い」が見えるとされています。
2.企業物価指数(CGPI)
企業同士が取引するモノの価格を示す指標で、日本銀行が毎月発表しています。
特徴
CPI(消費者向け)よりも先に動く傾向があります。
原材料価格が上がると、まずこの指標が上がり、数ヶ月後に消費者の買う商品の価格(CPI)に転嫁されます。
「インフレの先読み指標」として役立ちます。
また、インフレ率の具体的な数字を確認したい場合は、以下のサイトやワードで検索するのがスムーズです。
1.「総務省 消費者物価指数」の最新結果(2025年最新版など)
毎月19日〜26日頃に前月分が発表されます。
2.日本経済新聞(日経電子版)の「物価」カテゴリ
速報性があり、専門家の解説もついています。
3.e-Stat(政府統計の総合窓口)
過去からの推移をグラフや表で詳しく見たい場合に便利です。
不動産を考える上での「もう一つの指標」
不動産については、上記の物価指数に加えて「建設資材物価指数」も重要です。
CPI(消費者物価)が2%の上昇でも、資材価格が10%上がっていれば、新築マンションの価格はそれ以上に上昇することがわかります。
■ まとめ
不動産がインフレに強い最大の理由は、現金と異なり「モノ(現物資産)」だからです。
物価上昇に合わせて資産価値や賃料も上がるため価値が目減りせず、さらに借金の実質的な負担が減るという二重の恩恵があるからです。
物価が上がれば家賃や物件価格もスライドして上昇する一方、ローンの返済額は増えません。
特に固定金利を選べば、住居費をフリーズさせつつ『借金の目減り』という恩恵を最大限に享受できます。
一方、低金利な変動金利は資産運用の効率を高めますが、金利上昇リスクへの備えが不可欠です。
インフレ率と金利の動向を見極め、自分にとっての損益分岐点を把握すること。それが、住まいを負債ではなく価値ある資産に変える鍵となります。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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