
目次
- ■ はじめに
- ■ 借地権とは
- ■ 借地権の相続は土地所有者の承諾は必要なのか
- ■ 土地所有者への連絡は必要
- ■ 分割方法の問題点
- ■ まとめ
■ はじめに
相続において相続人が土地賃貸借契約を継続し、建物の名義変更をする場合、「借地権」と言う権利が生じているため、遺産分割協議を行い、相続人を確定し、貸主に通知しなければなりません。
借地権の遺産分割とは、「借地権」と一体として建物も併せて分割協議することとなります。
理由としては、借地権は建物に付随しているため、相続人間で建物を分割した場合、借地権も分割したことになります。
相続人間全員の協議で分割の方法を決めるのが原則ですが、分割協議が整わない場合には、家庭裁判所の調停・審判で分割することになります。
そこで今回は、借主が亡くなったときの借地権の相続関係について考えていきます。
■ 借地権とは
借地権とは「土地の所有者などから建物所有の目的をもって土地を賃借し、地代を支払うことにより得る権利を言います。
土地の所有者など貸主は、地主や底地権者や借地権者と呼ばれ、借主は、借地権者と呼ばれることもあります。
■ 借地権の相続は土地所有者の承諾は必要なのか
借地権を相続する場合、土地所有者の承諾が必要と考えられている方、少なくありません。
相続の場合、遺言がある場合を除き、相続の発生により、相続人の共有となります。
借地権も相続財産として建物(以下、借地権付建物)と併せて共有となります。
相続人間において遺産分割協議が整い、借地権付建物を相続人のうち一人が相続した場合、他の相続人の持分を譲渡して、相続する相続人に亡くなられた方の持分が相続する相続人に移転します。
難しい表現となりましたが、相続における遺産分割協議は、相続により相続人の共有となった相続財産の各持分を譲渡する、と言うことであり、借地権の相続も同様に共有持分の譲渡となります。
また、民法の規定には次のとおり規定されています。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第612条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
ここまで、お伝えすると、借地権の相続の場合、土地所有者の承諾が必要と思われるはずです。
しかし、相続人の権利は、亡くなられた方の権利を引き継いでいるため、相続人は全くの他人とは言えないはずであり、また、相続により名義が変更しようと土地所有者に不利益になることもないため、承諾は不要とされています。
■ 土地所有者への連絡は必要
相続による土地所有者の承諾は不要とされますが、通知は必ず必要です。
土地所有者との賃貸借契約があっての借地権です。
誰が新たな借主になったのか、報告のうえ、名義変更の覚書を作成することは必要です。
ただし、この場合、変更するのは借主の名義のみとなります。その他地代の値上げなど元の契約書異なることは断ることも必要です。
※更新の場合は異なります。
■ 分割方法の問題点
相続財産の分割方法として現物分割、換価分割、代償分割、共有分割などがあります。
これらの分割方法のどの方法を選択するかは、相続人間での取り決めや裁判所の裁量によって決まります。
遺産分割の方法
・現物分割:現金、土地などの遺産を相続人間で物理的に分ける
・代償分割:遺産を取得した相続人が、ほかの相続人に代償金を払う
・換価分割:遺産を売却し、それで得たお金を相続人間で分ける
・共有分割:遺産を複数の相続人の共有名義とする
借地権付建物を相続する場合、現物分割は注意が必要となります。
理由としては、通常借地権付建物の場合、一つの土地に一つの建物が建築されており、その一つの建物に対し、借地権が設定されています。
この一つの建物を共有ではなく、分割などできません。よって、借地権付建物の相続の場合、現物分割はできない、と言うことになります。
しかし、建物が2棟建つ土地において借地権付建物になっており、実際に土地上において2棟建築されている場合、借地を2つに分割する現物分割が可能な場合もあります。
また、相続人同士が揉めており、家庭裁判所へ調停を申し立てた場合、借地権となる土地を測量のうえ、分割する線を決め、同等の価値となるという証拠を提出しない限り、家庭裁判所の審判では分割はできません。
※測量図のみ提出し、家庭裁判所で分筆線を決めてください。と言うことはできませんのご注意ください。
※測量図に分筆線を入れて土地所有者に不利益になる分割もできません。
※建築基準法において建築基準法に定める道路に間口が2m以上接していない場合建築はできません。
では、共有とした場合はどのような問題があるのでしょうか。
借地権付建物を分割するにも土地所有者の承諾も必要です。これは契約形態に変更が生じるため、土地所有者の承諾が必要となります。
ただし、1つの借地権付建物を共有する遺産分割の場合、原則として土地所有者の承諾は不要とされています。
共有の場合、次のような場合もあります。
建物が2棟建つ土地において借地権付建物になっており、実際に土地上において2棟建築されている場合、借地を共有とし、建物2棟を二人の相続人が各1棟ごとを相続するとした家庭裁判所の調停が成立した事例もあります。
ただし、共有のままというのは、問題の先送りに過ぎず、何の解決にもなりません。
共有状態のまま、共有者の一人が土地所有者に借地権を返還したい場合など問題を多く含んでいます。
※借地契約が2つとなるため、借主、地代、面積が変更となりますので、契約書作成の前に土地所有者へ連絡のうえ、協議し承諾を得たうえで契約書を2つ作成することになります。
万一、共有者の一人が土地所有者に借地権を返還したい場合には共有物の分割を当事者で協議しなければなりまでん。
借地部分を同等の価値に分割することから始め、上下水道・ガス管など土地所有者に返還する借地部分を土地所有者に無利益を生まないようにする必要があります。
■ まとめ
借地権の相続は、相続人のうち一人が相続するのであれば問題はほとんど生じないはずです。
しかし、分割や共有とした場合、様々な問題を含むことになります。
実際、借地上に2棟建築以され、調停にて各1これなどは1棟ごとを相続させる調停も成立しています。
この状態の方の多くが現在トラブルとなっています。
借地権など法的に複雑な話となる場合が多く発生します。万一、相続時において借地でのトラブルは早めに専門家へご相談をいただくことをオススメします。
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■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。


●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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