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6.102024

コラム

賃貸物件での「ハウスクリーニング」は誰の負担なのか、を考える

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 「原状回復」と「ハウスクリーニング」の違い
  • ■ 原状回復の原則
  • ■ ハウスクリーニングの原則と例外
  • ■ まとめ

■ はじめに


賃貸住宅において退去する際、「原状回復」と「ハウスクリーニング」を行うことになります。
この「原状回復」と「ハウスクリーニング」は、同じ原状回復として捉えられているようですが、意味合いが違います。

これら2つの用語をしっかり理解できていないため、トラブルとなることも少なくありません。
そこで今回は、「原状回復」と「ハウスクリーニング」の違いと貸主・借主のどちらが負担となるのか、特に「ハウスクリーニング」に焦点を当てて考えてみたいと思います。

■ 「原状回復」と「ハウスクリーニング」の違い


●原状回復

原状回復とは、物件を入居前の状況に戻す作業のことを指します。
退去するときに必ず行う作業であり、経年劣化した室内の損傷を修復します。
ただし、経年劣化の範囲内の損傷は原状回復義務を負いません。

●ハウスクリーニング

ハウスクリーニングとは、専門業者が物件を清掃することを指します。
つまり、原状回復とは異なり「入居前の状態に戻す」ことを前提とした作業ではありません。
念入りに清掃するため、綺麗な状態で引き渡しができます。

■ 原状回復の原則


賃貸借契約が終了して借主が物件を明け渡す際に、その物件を契約当初の状態に戻すことを「原状回復」と言います。

入居中に、借主が「壁に穴をあけてしまった」など故意・過失があった場合、原状回復義務を負うというのは誰でも理解できる思います。

しかし、「原状回復」が借主の責任でその物件を契約当初の状態に戻すことを言うのであれば、「畳や壁クロスが日焼けによって変色した」、「冷蔵庫を置いていた壁が汚れてしまった)」といった場合、借主は畳や壁のクロスを交換しなければならなくなります。

そこで、平成17年に最高裁判決が、

①通常の損傷、すなわち、賃借人が通常の使用をしていても生じる損傷や、時間が経つことで自然に生じる劣化については、賃借人は原則として原状回復義務を負わない。

②上記のような通常の損傷について賃借人が例外的に原状回復義務を負うのは、賃貸借契約等で、賃借人が負担すべき範囲が具体的かつ明確に定められている場合のみである。

という判断をしました。

この最高裁判例の判断をもって国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、

「原状回復」を、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」

と定義しました。

また、2020年4月1日に施行された改正民法において、賃借人の負う原状回復義務の範囲について、つぎのように改正されています。

(賃借人の原状回復義務)

第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

■ ハウスクリーニングの原則と例外


ハウスクリーニングは、物件内の清掃のことで、通常は専門の清掃業者によるクリーニングを指します。

このように、ハウスクリーニングはあくまで清掃作業のことですから、厳密な意味での「原状回復」とは、異なります。

それでも、物件の明け渡しに伴って必要となる作業であるため、その費用負担のあり方については、ハウスクリーニングについても、原状回復の一環として、同様に論じられることが少なくありません。

国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、借主が「通常の清掃」を行い退去した場合、貸主は借主に対してハウスクリーニング費用を請求できないことが定められています。

よって、通常の清掃を行っていた借主に対しはハウスクリーニング費用を請求することは原則できません。

ただし、故意または過失によって汚損した場合などは借主に修繕する義務がある、通常の清掃を行えば、ハウスクリーニング費用は負担しなくて良い、ということではありません。

●ハウスクリーニングの例外

借主がハウスクリーニング費用を負担しなければならない場合が例外的に2点あります。

①通常の掃除を行っていない場合

国土交通省のガイドラインでは、借主は通常の清掃を行い退去することが定められており、通常の清掃を行っていなかった場合、借主はハウスクリーニング費用を支払わなければなりません。

「通常の清掃」とはどのような内容なのか、疑問に思われると思います。

国土交通省が定める原状回復のガイドラインには、

「通常の清掃(具体的にはゴミの撤去、掃き掃除、拭き掃除、水回り、換気扇、レンジ周りの油汚れの除去等)」

との記載があります。

また、国土交通省による原状回復のガイドラインとは別に、そもそも借主には善管注意義務というものが要求されており、借主は社会通念上要求される程度の注意を払って賃借物を使用しなければならず、通常の清掃を行わないことは善管注意義務違反に該当すると考えられています。

②賃貸借契約において特約が成立している場合

特約で「借主は、本物件退去時にハウスクリーニング費用を負担するものとします。」などと定めて賃貸借契約を締結すれば、借主の負担になります。

賃貸借契約では公の秩序や強行法規に反しない限り、特約を設けることは当事者の自由とされており、このことを「契約自由の原則」といいます。

特約が有効となる場合

裁判所の判例から、ハウスクリーニング特約が有効となるポイントとして

①賃借人が負担すべき内容や範囲が明示されているか

②本来は賃借人負担とならない費用であるが、例外的に負担をお願いする趣旨であることが明記されているか、または口頭で説明しているか

③その物件のハウスクリーニング費用として妥当な金額かどうか

という点が挙げられます。

■ まとめ


退去時のトラブルを避けるためには、賃貸借契約書へハウスクリーニングの範囲を明記してあるのか、入居前に確認しておくことが大切です。

本来は通常の清掃を行っていれば入居者は、クリーニングの費用を負担する必要はありません。しかし、特約を設けることにより、借主にハウスクリーニング費用を負担する内容を加えることが可能です。

国土交通省のガイドラインでは下記のように定めています。

①特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること

②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を越えた修繕等の義務を負うことについて認識していること

無用なトラブルを避けるためには、貸主・借主ともに原状回復やハウスクリーニングの費用負担に関する正確な知識を得たうえで、賃貸借契約を締結するようおススメします。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

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