目次
- ■ はじめに
- ■ リースバックとは
- ■ リースバックの流れ
- ■ リバースモーゲージとの違い
- ■ メリット
- ■ デメリット
- ■ トラブル
- ■ リースバックを失敗しないための方策
- ■ まとめ
■ はじめに
不動産売買において今、注目を浴びている「リースバック」。
現在、住んでいる不動産を売却して、賃料を支払うことにより住み続けられる売却方法。
しかし、この「リースバック」。実際に問題のない売却方法なのか、どこに注意しながら進めればいいのか、など疑問や不安があるのも事実かと思います。
そこで、今回は「リースバック」について注意点などを考えていきます。
■ リースバックとは
リースバックとは、現在住んでいる不動産を金融機関や不動産会社、リースバック会社などに売却して現金を受け取り、所有権を移転した後、売却した相手と賃貸借契約を結ぶことで住み続けられる売却方法のことをいいます。
ちなみに、リースバックは、「セール・アンド・リースバック」の略称です。
※本コラムでは、金融機関・不動産会社・リースバック会社などをまとめて「リースバック業者」とさせていただきます。
■ リースバックの流れ
リースバックの流れは、次のとおりです。
1.買取価格額の査定
リースバック業者により現在住んでいる不動産の査定を依頼し、買取額(売却代金)を提示されます。
2.売買契約の締結
買取額や賃貸借契約などの諸条件に合意できれば売買契約の締結となります。
3.売買代金の受領と所有権の移転
売買代金の受領と併せて所有権登記の申請により所有者からリースバック会社に移転されます。
4.リースバック会社と賃貸借契約を締結
※賃貸借契約を結ぶ時期については、売買契約と同時に行う場合もあります。
5.賃貸借契約にもとづき月額賃料の支払いが開始
● リースバック終了後
1.買戻す場合
契約時に買戻し特約を合意していた場合、その取り決めていた買戻し額を支払うことにより、買戻すことができます。
※買戻し特約とは、不動産の売買契約から一定期間が経過した後、売主が売買代金と契約の費用を返して、その不動産を取り戻すことができるという特約のこと
※買戻し価格の相場は売却価格の10〜30%ほど上乗せした価格になります。また、買戻し価格の他手数料などが必要となる場合があります。
2.退去する場合
リースバックは、2年以内の定期賃貸借契約が多く、更新を前提としていないため、退去することになります。
■ リバースモーゲージとの違い
リースバック契約と似たサービスとして「リバースモーゲージ」というものがあります。
このリバースモーゲージとは、住んでいる不動産に住み続けたまま担保にしてお金を借りる不動産担保ローンの一種であり、50〜65歳以上の年齢制限があること、借入れ先は金融機関となります。
借り入れた金銭の支払い方法は、毎月、利息のみを支払い、契約者の死亡した時点で、担保としていた不動産を処分して元金を返済することになります。
またリースバックとの違いは、「現在、住んでいる不動産に住み続けながら、売却代金を手に入れることができる」という点で共通しています。しかし、リースバック契約は、売却にて現金が入り、リバースモーゲージは担保提供による借入れで現金が入る、という点で大きく異なります。
■ メリット
リースバックのメリットは以下の2つです。
1.売却代金を受け取った後、引越しせずに済むこと
2.住宅ローンや固定資産税等の支払いがなくなる。
1.売却代金を受け取った後、引越しせずに済むこと
リースバックの最大のメリットは、現在住んでいる不動産を売却し、売却代金を受け取れることと併せて賃貸借契約により、そのまま居住できあるため、引越しする必要がありません。
リバースモーゲージとの違いは、リバースモーゲージは、契約した人が死亡したら契約が終了となりますが、リースバックは、賃貸借契約の契約期間万章により終了となります。また、リバースモーゲージは、資金の使い方に制限を受ける場合もあります。
2.住宅ローンや固定資産税等の支払いがなくなる
住宅ローンや固定資産税等の支払いの負担がなくなります。
売却による売却代金で住宅ローンの残債を完済することができ、所有権が移転するため、固定資産税等の支払い義務もなくなります。
■ デメリット
リースバックのデメリットは以下の4つです。
1.売却価格が安くなる
2.家賃が高く設定される
3.売却される場合がある
4.賃貸借契約の期間は制限がある
1.売却価格は安くなる
売却価格は、一般的な売却とは異なり安くなります。ここで注意が必要なのは住宅ローンの残債がある場合、売却価格が住宅ローンの残債額を下回り完済できなくなることがありますので抵当権の抹消ができるか否かも確認が必要となります。
※住宅ローンの完済が難しい場合、金融機関と抵当権の抹消の条件を個別に交渉のうえ、任意売却を選択することも必要となります。
2.家賃が高く設定される
リースバックの賃料は、周辺相場よりも高く設定されます。これは、リースバック業者の収益性のためです。賃料は次のような計算式で求められます。
リースバックの賃料=買取価格 × 期待利回り ÷ 12カ月
※期待利回りとは、投資した費用に対して1年間にどれだけ収益が見込めるかという収益額であり、売却価格が上がれば賃料も高くなり、価格が下げれば賃料も低くなります。
3.売却される場合もある
賃貸借契約期間内に第三者へ売却される場合もあります。
万一、売却されても賃貸借契約は継承されるため、退去しなければならない、ということはありません。
ただし、契約内容が変更されるケースもあり、賃料の値上げなどの問題が生じる場合があります。
4.賃貸借契約の期間は制限がある
売却した後も長く住み続けたいものですが、残念ながらそうはいかない可能性が高いです。
リースバックでは、賃貸期間が無制限ではありません。多くの場合制限が設けられ、2年以内の契約期間で、「定期賃貸借契約」という更新のない賃貸借契約となる場合が多いようです。
■ トラブル
リースバックにはメリット・デメリットがあります。リースバックにはトラブルの話も聞きます。トラブルについては以下のようなことにご注意ください。
1.賃料を値上げされた
2.買い戻しができない
3.修繕費の負担があいまい
4.リースバック契約ができない
5.相続人とのトラブルになった
6.退去を迫られる
1.賃料を値上げされた
リースバックの契約期間内中に賃料家賃が値上げされたことケースがあります。
契約時に口約束で「賃料の値上げはしません。」と言われていたのに値上げを要求されたケースです。
また、売却した先のリースバック業者が第三者へ転売し、所有の変更に伴い、賃料が値上げたケースもあるようです。
2.買戻しができない
買戻しが出来る条件でリースバック契約を締結したはずなのに買戻しができなくなるケースがあります。
この原因の大きく2つあるようで1つ目は、リースバックの契約時に買戻しに関する取り決めを契約書に記載していない場合です。そして次に買戻しの価格が想定より高くなったため、支払いが難しくなってしまったケースです。買戻し価格の相場は売却価格の10〜30%ほど上乗せした価格に設定され、別途手数料等が発生する場合します。
※リースバック契約期間中に賃料を滞納した場合、契約不履行となり、買戻しの権利を失うことになります。
3.修繕費の負担があいまい
リースバック契約は一般的な賃貸借契約と同様に借主の過失や故意による損傷については借主負担になります。
リースバック契約は、リースバック契約を締結以前から居住しているため、損傷の原因がいつのものか判明しづらく契約時に特約で修繕費を借主負担とする特約を設定することが多いようです。この特約を知らずに想定外の修繕費がかかりトラブルになるケースもあります。
4.リースバック契約ができない
そもそも論として、リースバック契約を締結するには処理しなければならないことがあります。たとえば、住宅ローンの残債が売却価格を上回っている場合、住宅ローンを完済できなければ、抵当権を抹消することができないため、契約自体が出来なくなります。
5.子どもなどとのトラブルになった
親族への相談なくリースバック契約をしたことで、後にトラブルになるケースもあります。
リースバックでは、契約時に想定相続人の同意は必要ありません。そのため、特に高齢の方が子どもなどの同意を得ず、単独で契約を決めるケースが多く見られます。
しかし、親族へ相談なく自宅を売却したことにより、家を相続するつもりだった親族から抗議を受け、後にトラブルに発展したケースもあります。
リースバック契約は、第三者に知られずに売却することができます。しかし、子供などの相続人へ相談なく売却したことにより、その不動産を相続するつもりだった子供などの相続人との間でトラブルになるケースもあります。
6.退去を迫られる
リースバックで自宅を売却後、2-3年単位での「定期借家契約」を履行することが多いですが、「再契約可能」と聞いていたのに、契約満了時に再契約を断られ、トラブルになることがあります。
定期借家契約の再契約を断られるケースは多くはありませんが、借主を退去させて早めに転売したいと考えている買取会社もいます。
定期借家契約は、貸主に正当事由がなくても再契約を拒否することができ、そうなれば借主は退去せざるを得ません。
トラブルを避けるためにも、リースバックの取引実績が多く、賃貸借期間設定の相談がしやすい買取会社に依頼することを検討しましょう。
リースバック契約の賃貸借契約には「定期建物賃貸借契約」と「普通建物賃貸借契約」の2種類があり、その選択により入居できる期間が異なります。
「定期建物賃貸借契約」の契約期間は2~3年が多く、更新はできません。
一方、「普通賃貸借契約」は更新が可能です。また、借主の申出により同条件で更新することが可能であり、長く住み続けることができます。
※リースバック契約の多くは「定期建物賃貸借契約」となります。
■ 失敗しないための方策
リースバックを利用するためには確実に押さえておきたいことがあります。
リースバック契約で失敗しないためには売却の契約前に押さえておきたいのは以下の4つです。
1.複数のリースバック業者で確認する
2.賃貸借契約においての支払いを算出する
3.契約内容を確認する
1.複数のリースバック業者で確認する
リースバックを利用する場合、1社のリースバック業者のみでの査定で済まさずに、いくつかのリースバック業者の査定を依頼するが必要です。
いくつかのリースバック業者の査定を利用することにより、売却価格の相場と適正価格を把握できます。
2.賃貸借契約においての支払いを算出する
リースバック契約を締結する前に賃貸借契約を締結した後、賃料を含めて退去までの実際の家賃などの支出額を算出してもらうことは大切です。
修繕費なども含めて費用負担の見通しを立て、資金計画を立てるようにしてください。
3.契約内容を確認する
リースバック契約の前には、プランや契約内容をよく確認することが重要です。
特に確認が必要なポイントは次のとおりです。
・契約は更新できるか、いつまで更新可能か
・買戻しできる期間の交渉は可能か、期間を契約書に記載できるか
・リースバック業者が転売する可能性があるか、ある場合は賃貸借契約の内容が維持されるのか
・そのほかにも、不明なこと、疑問点を確認したうえで契約を締結してください。
国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」
■ まとめ
リースバック契約は、メリットがある反面デメリットもあります。また、トラブルも多く気をつけなければならないこともあります。
これらのことを十分に把握し、リースバック契約の問題点と利用のポイントを押さえたうえで、リースバック契約をするリースバック業者選びが重要となります。
決して1人では決めずに誰か頼れる方に相談してから決めることが大切なのかもしれません。
また、売却する不動産の条件や所有者の支払い能力などにより、リースバック契約が最善の解決策ではないかもしれません。
そのため、リースバック契約に限定せず、状況により買取や仲介などほかのサービスも提示してもらえる方が、所有者にとっては最の選択となる場合もあります。
不動産を売却する場合、最善の方法を選択してくれる会社に依頼されることをおススメします。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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