お問い合わせ・お見積りはこちらから

0466-82-5511

NEWS

6.72024

コラム

不動産売買の注意点(諸経費の負担)

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 費用負担の原則
  • ■ 売買契約に関する費用の確認
  • ■ 売買契約書に記載されている条文
  • ■ まとめ

■ はじめに


不動産売買において、いくつかの売買契約に関する諸経費が発生します。

例えば、印紙代・登録免許税・測量代などです。

これらの費用は、売主と買主のいずれが負担すべきものなのか。これらの費用の負担については、通常は、売買契約締結以前に費用負担の合意をしていることが多いと思います。

しかし、売買契約締結以前に合意していない場合、本来はどちらが負担すべき費用なのかを認識しなければなりません。

そこで、今回は「売買契約に関する諸経費の負担」の注意点を紹介いたします。

■ 費用負担の原則


民法では、このような売買契約の締結に際して発生する諸経費については、売買契約に関する費用と、弁済に要する費用とに分け、売買契約に関する費用は当事者が等しい割合で負担することとされ(民法558条)、弁済に要する費用については、別段の意思表示がないときは債務者の負担とするものとされています (民法485条)。

(売買契約に関する費用)

第558条 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

(弁済の費用)

第485条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

民法上では以上の取決めとされています。しかし、何が「売買契約に関する費用」で、何が「弁済に要する費用」に該当するのかということが問題として残るところです。

■ 売買契約に関する費用の確認


では、何が「売買契約に関する費用」で、何が「弁済に要する費用」に該当するのかという点について考えてみます。

不動産の売買契約に関する費用については以下のものが挙げられます。

印紙代・登録免許税(所有権移転・住所変更・氏名変更・抵当権抹消など)および司法書士報酬額・測量費用・売買代金授受における小切手作成費用および振込手数料

(1)印紙代

不動産の売買契約書を締結した場合、売買契約書を作成します。その作成した契約書には、必ず収入印紙を貼る必要があり、保有する者が負担することになります。

よって印紙代は、民法上定められた「売買契約に関する費用」として、当事者が平等に負担することになります。

(2)登録免許税と司法書士手数料

登録免許税(所有権移転登記)と司法書士の報酬額については、いずれが負担するかについては説が分かれています。

●登記は対抗要件を完備するもので契約を確実にするために契約に関する費用とみて折半とする説

●買主が権利を確実にするための費用として買主負担であるという説

●所有権の移転登記は売買契約を履行するための費用として「弁済に要する費用」に該当して売主の負担であるという説

の3つに分かれています。

実際の取引では所有権移転の登記費用を買主負担とすることが多く、その理由として登記によって利益を受けるものに負担させるのが通常である、との考えに基づくものです。

また、所有権移転の登記費用には、登録免許税のほか登記手続を依頼する司法書士の報酬も含まれています。

不動産売買に伴う登記費用には、所有権移転の登記費用のほか、売主の金融機関等からの借り入れ金が設定されている場合の抵当権の抹消登記費用、その他買主の所有権を妨げる登記が設定されている場合の抹消登記費用、売主の住所が登記と異なっているときの住所変更登記費用があります。

抵当権等の抹消費用、住所変更費用は、民法上定められた売主の「弁済の費用」であるため、売主が負担し、抵当権設定費用は、民法上定められた買主の「弁済の費用」であるため、買主の負担となります。

(3) 測量費用

測量費用は、売買契約に関する費用に該当するとされています。

しかし、不動産の売買契約の性質上、売買の対象となる土地の範囲を確定しなければならないのは売主の責務となり、民法上定められた売主の「弁済の費用」であるため、売主が負担することになります。

(4)売買代金授受における小切手作成費用および振込手数料

不動産の売買代金を支払うことは、買主の責務となります。そのため、民法上定められた買主の「弁済の費用」であるため、買主が負担することになります。

ただし、売主の都合によりいくつかの口座に分けて振込む場合、または相続による売却など売主が複数人いる場合などにそれぞれの口座へ振込むケースについては、すべて買主の負担とすることは疑問符がつきます。

そのような場合には、1口座の場合は買主負担とし、2口座目からは売主の負担とするなど対応を考えるべきと考えます。

なお、「売買契約に関する費用」・「弁済に要する費用」ともに強行規定でなく任意規定となっています。

よって、費用負担者や負担割合を自由に設定することができます。ただし、当然ながら売主・買主の合意に基づくものであることは言うまでもありません。

■ 売買契約書に記載されている条文


(1)印紙代

(印紙の負担区分)

第●条 売主、買主は、各自が保有する本契約書にその負担において法令所定の印紙を貼付します。

(2)登録免許税と司法書士手数料

(所有権移転登記等)

第●条 売主は、買主に対し、売買代金全額の受領と同時に本物件について、買主の名義に、所有権移転登記申請手続きをします。

2 前項の登記申請に要する費用は、買主の負担とします。ただし、本物件に関する所有権登記名義人の住所、氏名の変更登記を要する場合の費用は、売主の負担とします。

(抵当権等の抹消)

第●条 売主は、買主に対し、本物件について、第6条の所有権移転時期までにその責任と負担において、先取特権、抵当権等の担保権、地上権、賃借権等の用益権その他名目形式の如何を問わず、買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を除去抹消します。

(3) 測量費用

第4条 売主、買主は、本物件の売買対象面積を測量によって得られた面積とします。ただし、売主は、測量の結果得られた面積と登記簿記載の面積とに差異が生じたとしても、地積更正登記はおこないません。

2 売主は、買主に対し、残代金支払日までにその責任と負担において、隣地所有者等の立会いを得て、資格ある者の測量によって作製された本物件の確定測量図を交付します。なお、同測量図には、表記清算の対象となる土地(以下「清算対象土地」という。)の範囲およびその測量面積も記載することとします。

3 売主、買主は、前項の測量の結果得られた清算対象土地の面積と表記清算基準面積とに差異が生じたとき、売買代金清算に関する覚書を締結して、残代金支払日に表記清算単価により売買代金を清算します。

(4)売買代金授受における小切手作成費用および振込手数料

※売買契約書の条文には記載がありませんが、以下のような特約を記載したほうが良いと思われます。

(売買代金の支払いの時期、方法等に関する特約)

第●条 売主および買主は本契約書第●条(売買代金の支払いの時期、方法等)の定めにかかわらず、買主は残代金を売主名義の金融機関に振込をもって支払うものとします。なお、この振込に要する費用は買主の負担とします。

■ まとめ


以上のように売買契約に関する経費の売主と買主の負担は民法に定められた「売買契約に関する費用」と「弁済に要する費用」とに分けて考えるのが妥当であり、根拠とする強みがあります。

ただし、所有権移転の登記については、その移転により利益を受けるのは買主であり、受益者負担が公平だとの考慮から、買主負担の特約をしているのが圧倒的に多くなります。

また、仮に売買契約書の作成を弁護士に依頼する場合、その弁護士費用については当事者の合意で弁護士の作成した契約書を使用するということであれば売買契約に関する費用に該当します。

当事者が了解して弁護士に依頼をしたということであれば、契約に関する費用として当事者折半となります。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。

●ご売却をご検討の方は、こちらをご参照ください。

●賃貸をご検討の方は、こちらをご参照ください。

#不動産 #売買 #不動産売買 #手付金 #内金 #残代金 #現金 #預金小切手 #振込 #不動産売買の注意点 #瑕疵担保責任 #契約不適合責任 #設備表 #物件状況等説明書  #経費 #諸経費 #印紙代 #登録免許税 #司法書士報酬額 #測量代