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9.212026

【相続】なぜ「相続の基本」に真剣なのか?実務家が明かす、手続きの裏に潜むリスクと分岐点

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 遺言書という「劇薬」の取り扱い
  • ■ 戸籍の裏に隠された「人」の真実
  • ■ 財産調査における「見えない」恐怖
  • ■ 10ヶ月というタイムリミット
  • ■ まとめ

■ はじめに


実務において「基本」ほど重いものはない

相続が発生した際、インターネットを検索すれば「相続人が知っておくべき基本ステップ」といった情報が数多く見つかります。

「遺言書の有無を確認する」「相続人を確定させる」「財産を調査する」。

どれも一見すると、実務においては最初の面談でサラリと確認して終わるような、当たり前の作業に思えるかもしれません。

しかし、年間数多くの案件に向き合う相続コンサルタントとして、私はここで断言します。

実務において、この「基本」の確認ほど重く、そして大切な階段はありません。

一般の方が「簡単な確認」だと思っているその裏側で、プロはどのようなリスクを見据え、どこに神経を研ぎ澄ませているのか。本稿では、教科書的な説明の裏にある「実務の真実」を、解説いたします。

■ 遺言書という「劇薬」の取り扱い


相続が始まったとき、最初に確認すべきは「遺言書の有無」です。

実務では「遺言書はありますか?」という一言の確認で済ませることも多いですが、この一言には極めて重大な意味があります。

なぜなら、遺言書は良くも悪くも、法律によって強い効力を持たされた「劇薬」だからです。

もし自筆で書かれた「自筆証書遺言」が見つかった場合、それをその場で開封することは法律で禁じられています。

家庭裁判所での「検認」という手続きを経なければなりません。これを知らずに良かれと思って開封してしまうだけで、他の相続人から「偽造したのではないか」と不信感を抱かれ、その後の遺産分割協議が完全に冷え切ってしまうケースが後を絶ちません。

また、遺言書があるからといって安心はできません。その内容が特定の相続人に偏っていた場合、残された家族の間で「遺留分(最低限もらえる財産の権利)」を巡る泥沼の争いが始まるシグナルでもあるのです。

専門家が一瞬で遺言書の有無を確認するのは、単に手順を進めるためではなく、その後に起きるであろう「親族間の心理戦」のシナリオを頭の中で組み立てるためなのです。

■ 戸籍の裏に隠された「人」の真実


次に、誰が遺産を受け取る権利を持つのか、つまり「相続人の確定」を行います。

実務に慣れたプロであれば、ご家族から家族構成を確認し、「今回はお子様2人ですね」と数分で確認を終えるでしょう。しかし、これはあくまでご家族からの確認に過ぎません。

本当に恐ろしいのは、ここから始まる「戸籍の収集」です。

法律上の相続人を確定させるためには、故人の「出生から死亡まで」のすべての戸籍謄本を遡って集める必要があります。

多くの一般の方は「家族のことは自分が一番よく知っている」とおっしゃいます。

しかし、明治・大正・昭和と時代を遡り、古い原戸籍を読み解いていくと、依頼主さえ全く知らなかった「真実」が浮かび上がることがあります。

先妻との間に子供がいた

認知している子がいた

過去に養子縁組をしていた

これらが発覚した瞬間、それまで平穏だった相続は一変します。

見ず知らずの相続人が一人でもいれば、その人を巻き込まなければ「遺産分割協議」は1ミリも前に進みません。

専門家が最初の面談で静かに家族構成を聞くとき、その視線は「戸籍という客観的証拠が揃うまでは、誰も信用できない」という冷徹な実務家のリスク管理に向いています。

■ 財産調査における「見えない」恐怖


3つ目の基本は「財産の調査」です。

預貯金通帳や不動産の権利書を確認する作業ですが、実務家が最も目を光らせているのは、目に見えるプラスの財産ではなく、目に見えない「マイナスの財産(借金や保証人としての地位)」です。

日本の法律では、相続が始まったことを知った時から「3ヶ月以内」に、相続をするか放棄するかを決めなければならないという、非常にタイトなタイムリミット(熟慮期間)が設けられています。

実務において、この3ヶ月は一瞬で過ぎ去ります。

例えば、亡くなった親に多額の借金があることが、4ヶ月目に発覚したらどうなるでしょうか。

※借金があることを知った時から3ヶ月以内ですので惑わされないようにしてください。

原則として、子供たちはその借金を全額背負わなければならなくなります。「知らなかった」は通用しません。

専門家が財産調査を急ぐのは、この「3ヶ月の壁」があるからです。

自宅のポストに届く督促状はないか、通帳に変な引き落とし跡はないか、信用情報機関への照会は必要か。サラッと財産の一覧を作っているように見えて、その裏では「3ヶ月以内に借金を処理しきれるか」という時間との戦いも行われているのです。

■ 10ヶ月というタイムリミット


相続税の申告・納税が必要な場合、その期限は「10ヶ月以内」です。

10ヶ月と聞くと余裕があるように思えるかもしれませんが、実務の現場では意外に短い感覚です。

前述の通り、戸籍を集めて相続人を確定し、すべての財産を評価し、そこから相続人全員で「誰が何をいくらもらうか」の話し合い(遺産分割協議)を行います。

身内を亡くした悲しみの中で、葬儀や四十九日の法要を営みながら、これらの法的手続きを同時並行で進めるのは、一般の方にとって想像を絶する精神的・肉体的負担です。

もし親族間で一人でも首を縦に振らない人がいれば、あっという間に10ヶ月は経過します。

期限に間に合わなければ、税金上の優遇措置(配偶者の税額軽減や、小規模宅地等の特例など)が使えなくなり、本来払う必要のなかった何百万、何千万円もの税金を負担することになりかねません。

さらに、2024年からは不動産の「相続登記(名義変更)」も義務化され、3年以内に手続きをしなければペナルティが科される時代になりました。

■ まとめ


このように、実務における「相続の基本」とは、単なる事務手続きのチェックリストではありません。

それは、後に発生するかもしれない親族間の紛争、予期せぬ借金の連帯保証、そして税務署からのペナルティという名の膨大なリスクから、ご遺族と財産を守るための「防波堤」を築く作業そのものなのです。

私たち相続コンサルタントが最初の面談で簡単な確認だけで済ませているように見えるのは、これまでの経験から「どこに地雷が問題が潜んでいるのか」の勘所を瞬時に見抜いているからに他なりません。

「うちは家族仲が良いから」「財産も少ないから基本だけで大丈夫」

そう油断しているときこそ、相続は「争族」へと姿を変えます。

基本だからこそ、決して侮らず、実務の裏側を知り尽くした専門家にご相談いただく意義が、ここにあるのです。

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■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)

東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。

コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

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