目次
- ■ はじめに
- ■ 法人契約と個人契約の違い
- ー入居申込書の記載内容の違い
- ー審査基準の違い
- ー提出書類の違い
- ■ 法人契約の注意点
- ー入居者の入れ替えがある場合の特約
- ー入居者の入れ替えを行わない場合の特約
- ー敷金を借主である法人が支出している場合の確認
- ー入居者が入れ替わる場合の原状回復
- ー電気料金等を入居者が負担する場合
- ー書類等を渡されていない場合のトラブル
- ー修理等の依頼でのトラブル
- ■ まとめ
■ はじめに
賃貸においてお部屋を借りる場合、個人が借主となる個人契約、法人が借主となる法人契約とがあります。
ここ数年、法人が借主となる法人契約が増加傾向にあります。
この法人契約は大きく分けて2つあり、ひとつは物件を借り受けて法人の社員を居住させる社員寮や社宅として使われる場合です。
もうひとつは、個人事業主などが、自宅として使用するため、法人として契約するというものです。
個人事業主が個人契約でなく、法人契約を利用するメリットとして税金の免除という部分が大きく影響しています。
そこで、今回は、この法人契約と個人契約の違い、そして注意点などを考えてみます。
■ 法人契約と個人契約の違い
1.入居申込書の記載内容の違い
お住まいになろうとするお部屋が決まりましたら、入居申込書を通して借りる旨の意思表示を行います。
個人契約の場合、入居申込書に現住所、氏名、生年月日、連絡先、現在の住居形態、転居理由そして勤務先の内容を記載します。
一方、法人契約の場合、名称や所在地、代表者氏名、上場の有無、連絡先、従業員数、業種、資本金、設立年月日、売上高、従業員数、担当者部署、担当者などを記載します。
2.審査基準の違い
個人契約の入居審査を行う場合、主な審査基準は収入や借金の滞納記録などとなります。
これは、申し込みをされたその個人が毎月の家賃を滞りなく支払えるのか、を審査されるということです。
一方、法人契約の場合、個人と同様に信用調査は行います。
しかし、この場合の審査基準は、その法人の事業年数や従業員数、資本金、売上などとなります。
また、法人契約の場合においても法人ではなく個人事業者が申込者となる場合、事業計画書や課税証明、決算報告書などが必要になり、審査の基準が厳しくなります。
※上場企業の法人契約の場合、上場という信用があり、他の法人とは審査が異なります。
3.提出書類の違い
個人契約の場合、提出書類として身分証明書や源泉徴収票など収入証明書、家族全員の住民票などを提出することになります。
一方、法人契約の場合、提出書類として法人の登記簿謄本、法人の印鑑証明書、決算書などの会社関係の書類と併せて入居される個人の証明書類を提出することになります。
※現在の賃貸借契約の場合、連帯保証人ではなく、保証会社を利用することが多数です。また、保証協会の利用を求める物件もあります。
この保証協会の利用は、個人契約だけと言うことではなく、法人契約の場合でも事業規模などによっては保証会社に入らなければならないことがあります。
このため、法人設立後、間もない場合や決算書に問題がある場合、保証会社の審査も厳しくなる傾向にあります。
■ 法人契約の注意点
個人契約、法人契約どちらの契約形態においても、重要事項説明書の説明、賃貸借契約書の読み合わせ、管理規約・使用細則の確認は必ず必要となります。
ただし、個人契約と法人契約では内容や文言が異なる場合がありますので注意が必要です。
例えば、通常の個人契約では、入居申込書に記載した契約者が借主となり、その家族が同居のうえ、入居し、解約の場合には借主とその家族が退去するのが基本です。
一方、法人契約の場合、社宅として借り上げることを了承した場合、複数の従業員が入れ替わりで入居する場合もあります。
法人契約では、事前にどのような形態をとるのかを、確認する必要があり、その確認を怠ると後々のトラブルになる場合があります。そのようなトラブルが発生しないために、用途に応じた契約書を作成することが重要となります。
1.入居者の入れ替えがある場合の特約
(入居者の変更に関する確認)
貸主、借主は、借主が第●●条に定める入居者の変更を行う場合、新たに入居する者の社員証(免許証・保険証)および住民票等貸主の指定する書類と併せて承諾を得ることを確認しました。
2.入居者の入れ替えを行わない場合の特約
(入居者の変更に関する確認)
貸主、借主は、第●●条に定める入居者の変更、入居者の入れ替えは行わないことを確認しました。また、現入居者が退室した場合は本契約も当然に解約となることを貸主、借主は確認しました。
3.敷金を借主である法人が支出している場合の確認
(敷金)
貸主は入居者より預かり中の敷金について、借主に返還するものとします。
4.入居者が入れ替わる場合の原状回復
(明渡し・・・造作および原状回復)
原契約書第●●条(明渡し・・・造作)第●項および第●●条(原状回復)第●項は貸主と入居者との間においては適用しないものとします。入居者の名義変更に伴う「明渡し・・・造作」および「原状回復」の各債務の履行については、貸主と借主とに係る本契約の終了により行うものとします。
5.電気料金等を入居者が負担する場合
(そのほかの費用負担)
第●条の定めにかかわらず電気、ガス、水道、電話等の基本料金および使用料金ならびに町内会費、衛生に要する費用等諸経費はすべて入居者が負担するものとします。
以上のように、用途に応じた契約書を作成することは重要です。このほかにも法人によっては細かいルールや制限が設けられていますので借りる側は社内規定に照らし合わせて事前に伝えることが大切です。
また、法人契約でも法人が依頼したお部屋を斡旋する業者がお部屋を選ぶ場合と従業員が自らお部屋を探して法人へ申請する場合の2通りがあります。
と従業員が自らお部屋を探して法人へ申請する場合に気をつけていただきたいのは、賃料の上限やお部屋の場所や間取りに関する条件が定められている場合があります。そのほか、通勤距離や通勤時間の制限がある場合もあります。
法人の規定に従っていないお部屋を選ぶと、後々問題が生じることがありますので、法人の担当者に確認するなど事前に確認が必要となります。
6.書類等を渡されていない場合のトラブル
法人契約にて賃貸借契約を締結する場合、重要事項説明書、賃貸借契約書、管理規約・使用細則を法人へ郵送し、法人の担当者が法人の記名・押印をして貸主分を返送いただきます。
この際、重要事項説明書、賃貸借契約書、管理規約・使用細則を入居者にも写しを渡す旨を約束しても入居者の手に渡らない場合があり、入居後に他の入居者などとトラブルになる場合があります。
7.修理等の依頼でのトラブル
賃貸借にて入居されていますと、設備の故障など故障などのトラブルが発生します。その際には入居者より管理会社へ連絡を取っていただくことになります。しかし、近隣トラブルや言いがかりなどを管理会社へ行いますと、管理会社は借主である法人の担当者へ説明を求めることになります。結果、入居者が勤務しづらい状態となりますので、担当者と相談をしながら進めることも大切です。
■ まとめ
法人契約は法人の信用力を活かし、従業員の住居を賃貸するための有効な契約形態です。
法人のメリットとして従業員の家賃負担を抑えることや法人の節税効果が挙げられます。
一方、事前にどのような形態をとるのかを、確認する必要があり、その確認を怠ると後々のトラブルになる場合があります。そのようなトラブルが発生しないために、用途に応じた契約書を作成することが重要となります。
管理会社に契約手順や必要書類、注意点をしっかり伝えることによりトラブルを防ぎ、スムーズな契約が進められるはずです。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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