目次
- ■ はじめに
- ■ 又貸し=転貸が禁止されている4つの理由
- ー契約違反になる
- ー貸主、借主双方にリスクがある
- ー借主が責任を負うリスクがある
- ー信頼関係が壊れる
- ■ 又貸し=転貸が発覚した場合
- ー違約金を請求される場合がある
- ー強制退去命令を受ける場合がある
- ー賃貸保証会社との関係
- ■ その他の注意点
- ■ まとめ
■ はじめに
賃貸住宅において「転勤が決まったので、その転勤の間だけ知り合いに住んでもらおう」と、考えたことありませんか。
このように転勤の間だけ知人に住んでもらい、知人から賃料を受取り、自分が貸主に賃料を払う。といったことは、「又貸し」=転貸であり、賃貸借契約では禁止とされています。
では、このような又貸しがなぜ禁止されており、又貸しをした場合どんなリスクがあるのか、
について考えてみたいと思います。
■ 又貸し=転貸が禁止されている4つの理由
●契約違反になる
・民法に規定されている
【民法612条】(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
1 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
・国土交通省賃貸住宅標準契約書に定められている
(禁止又は制限される行為)
第8条 乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の全部又は一部につき、賃借権を譲渡し、又は転貸してはならない。
2 乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の増築、改築、移転、改造若しくは模 様替又は本物件の敷地内における工作物の設置を行ってはならない。
以下省略
※民法612条にもとづき無断転貸の禁止が規定されており、賃貸契約書の参考様式である国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」においても、禁止事項として又貸しが記載されているためです。
ただし、貸主に無断での又貸し=転貸を禁止しているため、貸主の許可を受けた又貸=転貸は法律的に問題はありません。
※賃貸借契約書に又貸しの禁止事項が記載されていない場合にも又貸しが許可されているということではありません。民法では「賃貸人の承諾を得なければ、賃借物を転貸することはできない」とされており、賃貸契約書の参考様式である国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」においても無断転貸が禁止事項として規定されています。
したがって、貸主に許可なく又貸しをした場合、契約解除の対象となり、場合によっては、強制的に契約を解除され、転借者だけではなく契約者も退去される場合があります。
●貸主、借主双方にリスクがある
賃貸物件において賃貸借契約上の借主と貸主のトラブルであれば双方で話し合えば解決できることも多いとはずです。
しかし、又貸しをしてトラブルが発生した場合、貸主の相手は当事者の借主ではない第三者(転借人)となります。
例えば又貸し=転貸をしている間に何らかのトラブルが起きた場合、借主は居住していないため早急な対処が難しくなります。転借人が間に入ることで、事態をより複雑化してしまうことが予想されます。
●借主が責任を負うリスクがある
転借人が起こしたトラブルでも、又貸しをしていればすべての責任を当事者である借主が負うことになります。
例えば、転借人が部屋の設備を破損させた場合や火事や漏水など物件全体に迷惑行為を起こしたりした場合、そのような損害賠償の請求は借主本人が対象となります。
●信頼関係が壊れる
賃貸借契約は貸主、借主が一定のルールを確認しあって締結する契約であり、信頼関係という土台があるからこそ成り立つものです。
事前の同意もなく又貸し=転貸をしていたとなれば信頼関係が損なわれてしまうことになります。
■ 又貸し=転貸が発覚した場合
●違約金を請求される場合がある
又貸し=転貸は、契約違反行為および信頼関係を損なう行為に該当するため、契約解除が可能であり、借主側の契約違反となります。よって、違約金を請求され、場合によっては訴訟を提起される場合もあります。
●強制退去命令を受ける場合がある
民法612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)第2項には、
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
と規定されており、民法にもとづく違反行為であり、契約解除や退去命令が出る可能性があります。
●賃貸保証会社との関係
賃貸借契約を締結する場合、連帯保証人を立てずに賃貸保証会社に加入している場合、又貸し=転貸が判明すると自己居住用にて賃貸保証会社と契約しているにもかかわらず、契約内容が異なるため、賃貸保証会社より契約の破棄や違約金等を請求される場合があります。
■ その他の注意点
カップルの同棲やルームシェアなどにより二人で入居されている方も注意が必要です。
二人のうち契約となっている方が退去された場合に契約者以外の方がそのまま入居をする場合には、管理会社へ連絡をして新たな契約手続きや必要書類、年収などの審査が必要であり、連帯保証人の内容賃貸保証会社への審査も必要となります。
万一、契約者が退去されている事実が判明した場合には又貸=転貸と判断される場合があります。
■ まとめ
又貸し=転貸とは、賃貸借契約にもとづき借主が自己居住用目的にもかかわらず貸主の許可を得ないままの状態で第三屋へ貸してしまうことです。
又貸し=転貸は民法および国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」においても無断転貸が禁止事項とされています。
トラブルが起きた場合には事態が複雑化し、即急な対応ができない可能性があります。
また、貸主との信頼関係が損なわれるなどの理由により又貸し=転貸禁止されています。
又貸しが発覚した場合には、違約金が請求されたり、契約解除・強制退去処分が下されたりする場合もあります。
万一、不明な点はかならず管理会社に確認してください。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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