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3.292024

賃貸物件の「消防設備点検」は借主に協力義務があるのか、を考える

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 消防設備点検は必須
  • ■ 消防設備点検の期間
  •  ー機器点検
  •  ー総合点検
  • ■ 消防設備点検・報告義務は誰が負うのか
  • ■ 入居者の注意点
  • ■ 消防設備点検の項目
  • ■ まとめ

■ はじめに


賃貸住宅において、「消防設備点検のお知らせ(ご在宅お願い)」という文書がポストに投函されていたり、掲示板に掲示されていると思います。

これは、アパートやマンションなどの建物の規模によって消防設備を設置する義務があり、消防設備の設置義務がある建物では、貸主などの関係者に消防設備点検が義務付けられているからです。

※消防設備点検後、物件がある地域を管轄する消防署に報告する義務が課せられます。

そこで、賃貸住宅において消防設備点検がどのようなものか、借主に協力義務があるのか、について考えてみたいと思います。

■ 消防設備点検は必須


消防設備点検は法令で義務付けられています。

消防設備の設置が義務付けられている建物の消防設備に関しては、点検をする義務があります。

消防設備は火災になった時に、入居者の命を守る大切な設備であり、常に正常に動作しなければならないものです。

常に正常に動作しなければならないために定期的に点検確認し、報告する義務が生じるのです。

消防設備点検を怠ったために火災事故が起きた場合には貸主の責任が問われることがあります。

■ 消防設備点検の期間


消防設備点検には次の2種類があり、期間と実施内容が異なります。

●機器点検

6ヶ月に1回 

消火器・自動火災報知機・避難器具・誘導灯・非常ベル・連結送水管など、消防設備が適切な場所に設置されているかを確認するものです。

●総合点検(機器点検と同時に実施)

1年に1回 

消防設備が正常に作動するかを実際に設備を起動させて点検を行います。
総合点検では室内に設置されている自動火災報知器やバルコニーに察知されている避難はしごの点検も行うため、消防設備点検業者が室内に立ち入って点検を行う必要があります。


※自動火災報知機は消防法ですべての住宅に設置することが義務づけられており、設置数の確認や、熱や煙に問題なく反応するかなどを点検します。
※避難はしごについても、避難時に正常に使用できる状態にあるかどうかの確認をおこないます。

■ 消防設備点検・報告義務は誰が負うのか


消防用設備の点検および報告義務は、消防法 第17条3の3で定められており、点検・報告の義務を負うのは防火対象物の「関係者」となっています。

非常に曖昧な表現なのですが、通常、点検の実施や費用負担の義務は「管理権原者」とされています

管理権原者とは、防火対象物の正当な管理権を有しており、防火対象物の防火管理を「法律、契約または慣習上当然行うべき者」を指します。

具体的には、賃貸住宅やテナントビルの場合は、各住戸・テナントの貸主や契約書(入居者)も管理権原者となります。

また、貸主と借主が同時に管理権を有している場合は、実質的な影響力を持つ借主が管理責任を持つとされています。

たとえば、テナントビルの場合だと、階段・通路・エレベーターといった共用部分については、貸主が責任を負い、各テナントは借主が専有しているので、借主が消防用設備点検の義務を負うことになります。

しかし実際には、管理会社が貸主と相談のうえ、貸主の費用負担にて消防設備点検業者に依頼を行い、入居者側が日時の指定により立会いに協力するのみという形になります。


※入居者の点検の立会いは「努力義務」になり、現在の法律では罰則を受けることはありません
しかし、万が一自分の契約している部屋で火災が起こり、隣接する住戸にも被害が広まってしまった場合、消防点検を受けていないと過失に問われる可能性があります。また、消防点検を受けていないために、火災報知器が正常に作動しなかったことが火災を広めた原因となれば重過失に問われる可能性は高くなり、損害賠償などを請求されることもあるので注意が必要です。そのため、できる限り立会いに協力することが望まれます。

■ 入居者の注意点


消防設備は「警報設備」・「消火設備」・「避難設備」の3つに分類されます。

この3つの消防設備はすべて入居者の命を守るためにとても重要な設備です。この避難設備のうち「避難設備」は入居者の緊急避難・安全に直接関係しますので入居者の注意も必要となります。

例えば、消防設備点検として避難はしごの点検を行います。

この避難はしごの点検の際、降下地点に障害物が置いてある場合があります。賃貸借契約書や管理規約に記載されていると思いますが、バルコニーや共用廊下などには物品等を置くことが禁止されています。
また、消防設備点検を実施しても、留守の場合もあり、室内の点検が出来ずに終わるということもあります。

入室が出来ず、バルコニーの物品等や消防設備の不備を発見できなかったとしても、不備は不備であり、万一の場合には責任問題に発展することになります。

消防設備点検とは緊急避難・安全に直接関係しますので、入居者も安全について意識してもらう必要があります。

■ 消防設備点検の項目


主な点検事項についてご説明致します。

1.消火器

火災が発生した初期段階で活躍する器具となります。消火器が設置されているかを確認し、必要に応じて交換作業を行います。

2.自動火災通知設備

室内の天井に設置してある感知器です。熱や煙などを感知した時に自動で知らせてくれる設備です。

賃貸物件では専有部分に設置、また床面積によって設置する自動火災報知設備の種類が異なります。また電池式感知器の電池寿命は10年程です。既存住宅は2011年以降、全市町村で設置義務となっております。

3.避難器具

避難はしご、救助袋、緩降機などがあります。避難器具は火災があったときにすぐ使用できる状態にしておく必要があります。これらはお部屋に入らないと点検できないこともあるため、消防設備点検の際は入居者への立会協力が必要になります。

4.誘導灯

「EXIT 出口」と書かれた、緑地で人が逃げるマークをしているものです。誘導灯が荷物などで隠れていないかを確認する必要があります。

5.非常警報設備

火災発生時に手動で操作して火災を知らせる設備のことです。非常ベルや自動サイレンなどが正常に動作するかどうかを点検します。

6.連結送水管

火災が起きたときに水を送る設備のことです。日常的に使用される部分ではないため、放っておくと劣化します。10年を経過したら「耐圧性能点検」を実施し、その後は3年ごとの点検が必要となります。

■ まとめ


消防設備は入居者の命を守るためにとても重要な設備であり、消防設備には点検の義務があります。

避難はしごや誘導灯なども、避難設備という種類の消防設備であるため、消防設備点検の対象です。

消防設備点検では、感知器や避難はしごの点検でどうしても室内に立ち入らなければなりません。

入居者も消防設備点検の重要性や避難設備の意義などを理解していただき、貸主と借主(入居者)が協力して行うようお願いします


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

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