目次
- ■ はじめに
- ■ 相続とは
- ■ 相続できる根拠
- ー生前の意思を死後にも尊重
- ー生前の扶養義務の延長
- ー潜在的持分の顕在化
- ■ 民法における基本的立場
- ー財産相続
- ー平等相続
- ー配偶者相続
- ー個人相続
- ■ 親族等
- ー親族の範囲
- ー血族
- ー配偶者
- ー姻族
- ■ 相続の原因
- ー死亡
- ー同時死亡の推定
- ー失踪宣告
- ■ 遺産の分割
- ■ 相続の割合
- ■ まとめ
■ はじめに
相続の定義や相続はいつから始まるのか、などの基本的な概要をわかりやすくお伝えします。
■ 相続とは
人が亡くなると、その人が生前有していた土地や建物(不動産)、自動車や洋服(動産)、預金や借金(債権・債務)等の財産上の権利義務はどのようになるのでしょうか。
民法において生前に配偶者・子供・親・兄弟姉妹等であった人に当然に移転します。
相続とは、ある人が亡くなった場合に、その亡くなった人が保有していたすべての財産や権利・義務を、配偶者や子どもなど一定の身分関係にある人が受け継ぐことを言います。
この相続によって当然に亡くなった人の権利・義務を承継する人を相続人、亡くなった方を被相続人といいます。
「相続は死亡によって開始する」ことになります。つまり被相続人が死亡した時点で相続は開始し、自動的に相続人に移転します
なお、死亡には自然的な死亡のほか、行方不明になって後7年が経過した場合などの「失踪宣告」や、事故や災害などで亡くなった可能性が高い場合の「認定死亡」などの法律上の死亡が含まれます。
■ 相続できる根拠
生前の意思を死後にも尊重
生前、自分の財産を誰に渡そうが自由です。自分がいつ死ぬかをわかっていればいいのですが、誰もわからないのが普通です。
亡くなった方の意思を知ることが出来れば、妻や子供親等、一定の関係にある人に財産をあげたいと思うのが普通だと思います。そこで民法はこの普通の意思を尊重する形で相続を認めているのです。
生前の扶養義務の延長
生前、被相続人の財産で生活をしていた配偶者や子供親等は被相続人の死亡と同時に、今後の生活に困ってしまいます。そこで生前の扶養義務が死後にも継続するものとして、「相続権」という形で考えられています。
潜在的持分の顕在化
生前、築いた財産は夫婦の協力によって築いたものと言えます。では、夫婦の財産は実質的に共有状態である、と言えます。
生前は、夫婦どちらかの名義となっているため、共有であることが顕在化せず、潜在的なものとなっています。
そこで、死亡後にその潜在的な持分が顕在化したものが「相続権」という形となると考えられています。
■ 民法における基本的立場
民法は、相続について基本的立場として次の4点を認めています。
財産相続
旧民法では家督相続が中心であり、戸主権という財産上の権利・身分上の地位を含んだ地位を家督の相続するものが引き継ぐとされていました。
戦後、新憲法の理念により、家制度が個人主義に反するものとして廃止となり、相続は財産関係のみを承継する制度となりました。
平等相続
旧民法では長男が家督を相続しましたが、新憲法の「法の下の平等」にも反することから、長男かどうか、男か女か、婚姻により姓が変更となっているか、などを問わず平等に相続できることになりました。
配偶者相続
旧民法では妻には家督を相続する権利は認められていません。しかし、財産相続へ変更となった新民法では妻の相続権を否定することは相続できる根拠でもお伝えしたとおり、不合理となります。そこで妻の相続権を認めています。
個人相続
旧民法では「家」に認めており、「家」に財産が帰属するとして、戸主が「家」の代表として財産を支配していました。
しかし、新憲法の理念である「個人主義」に反するため、「家」制度を廃止し、「個人」が相続分を承継することになりました。
■ 親族等
親族とは、人と人の関係が法律上他人とは異なる取り扱いをされるものをいいます。
相続では、親族が問題となるなることがありますのでまとめてみます。
親族の範囲
親族=
①六親等内の血族(父母・祖父母・子・孫等)
②配偶者
③三親等内の姻族(配偶者の父母・祖父母等)
血族
血縁のあるもの(自然血族)及びこれと同視できるもの
配偶者
婚姻により結合した男女のことを互いに配偶者といい、正式に婚姻届けを提出したものに限られます。
※内縁の夫婦は該当しません。
姻族
配偶者の一方と他方の血族を相互に姻族とします。
■ 相続の原因
死亡
相続では、いつ亡くなられたかが重要な意味を持つことがあります。
通常の死亡の場合は医師の診断書に記載されている死亡日時が高い証明力を持ちます。
同時死亡の推定
子供がいない夫と妻が温泉旅行に出かけた際、不運にも交通事故に遭い、救急車が到着したときには二人とも亡くなったとします。
この場合、夫が先に亡くなったことが証明されれば妻が夫を相続し、その後妻の両親がその財産を相続します。
反対に妻が先に亡くなったことが証明されれば夫が妻を相続し、その後夫の両親がその財産を相続します。
そして、どちらが先に亡くなったかを判断することが難しい場合があります。この場合には両者ともに同時に死亡したものと推定することになります。
よって、夫と妻との間には相続が生じないことになります。
失踪宣告
不在者の生死が不明なままの状態が続いていると家族やその周囲の人は不安定な状態での生活を続けなければなりません。
そこで一定の要件によりその人に失踪の宣告を行い、死亡したものとみなすことになります。
■ 遺産の分割
相続人が複数いるときは、誰がどの財産をどれくらいの割合で相続するかといった話し合いをして、遺産の分け方を決めなければなりません。
この遺産の分配を「遺産分割」といい、その割合を「相続分」といいます。
遺産分割には3つの基本的なルールがあります。
① 遺言書による指定
② 遺産分割協議による遺産分割
③ 遺産分割調停
相続においては、被相続人の遺した遺言書による指定が最優先されます。
遺言書がない場合、あるいは遺言書による指定のない財産については、相続人同士の遺産分割協議により分割することとなっています。
その協議がまとまらない場合には、裁判所で遺産分割の調停を行うことになります。
遺産の分割には決まった期限はありません。ただし、相続税の申告までに分割が決まらない場合、配偶者の税額軽減の特例などが受けられなくなるため、申告期限に併せて分割する必要が生じます。
遺産分割が確定できれば遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書の作り方には決まったルールはありませんが、後にもめ事を起こさないためにも、次の2点には注意が必要です。
① 相続人全員が名を連ねること
② 印鑑証明を受けた実印を押すこと
さらに、相続人に未成年者がいる場合は、家庭裁判所で特別代理人の選任を受けた代理人が協議を行うことになります。
■ 相続の割合
民法で定められた相続分を法定相続分といいます。
① 相続人が配偶者と子の場合→配偶者2分の1、子2分の1
② 相続人が配偶者および被相続人の直系尊属の場合→配偶者3分の2、直系尊属3分の1
③ 相続人が配偶者および被相続人の兄弟姉妹の場合→配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
相続人が被相続人より前に死亡したり、相続権を失ったりした場合には子や孫が、本来相続人になるべきであった人の相続分をそのまま受け継ぎます。
子、直系尊属、兄弟姉妹が複数いる場合は、それぞれの相続分を頭割りにします。
※嫡出子と非嫡出子は同等の法定相続分です。
■ まとめ
相続と言うと、「相続税がいくらかかるか」「どうやって分割すればよいの」など申告まで10ヶ月と期限を区切られているため、焦ってしまいます。
そこで、新シリーズとして「相続の基礎知識」として「相続とは」から基礎をお伝えしてまいります。
いざ、と言うときに慌てないため、ある程度の予備知識をもって準備をしておき、専門家への相談をしておくことをおすすめします。
参考文献:相続法に強くなる63の知識 財団法人大蔵財務協会
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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