全30回連載

第10回:「お兄ちゃんだけずるい!」過去の仕送りや結婚資金(特別受益のお話)
前回の第9回では、親の介護をいくら頑張っても、後から法律でそれを認めさせるのは非常に難しいという、相続の厳しい現実をお話ししました。
今回は、その真逆のケースです。「家族の中で、特定の誰かだけが、生前に親からたくさんお金をもらっていた場合」のお話です。
例えば、2人きょうだいの家庭で、お兄ちゃんだけが私立の医学部に行かせてもらい、さらに結婚するときにマイホームの頭金として親から1,000万円を出してもらったとします。
一方で、妹は地元の公立大学に通い、結婚するときも特に援助はもらいませんでした。
親が亡くなったとき、妹からすれば「お兄ちゃんだけ生前にたくさん得をしてずるい! 今回の相続では、お兄ちゃんの取り分を減らして、私を多くしてくれないと不公平だ!」と言いたくなりますよね。
この「過去のひいき・もらいすぎ」は、法律でどう扱われるのでしょうか。今回は、不公平をなくすためのルール「特別受益(とくべつじゅえき)」について解説します。
生前のもらいすぎをカウントする「特別受益」
法律は、このような不公平をそのままにはしません。ちゃんとバランスを取る仕組みを用意しています。
特定の相続人が、親から生前にもらった特別な財産のことを「特別受益(とくべつじゅえき)」と呼びます。
そして、相続が起きたとき、この特別受益(もらいすぎた分)を一度遺産のなかにガッチャンコと戻し入れて、それを前提に全員の取り分を計算し直すというルールがあります。これを専門用語で「特別受益の持ち戻し(もちもどし)」と言います。
簡単に言うと、お兄ちゃんが過去にもらった1,000万円を「もうすでに受け取った遺産の先払い」とみなして、今回の取り分からその分を差し引く、という引き算のルールです。
これによって、きょうだいたちの間のスタートラインを平等に合わせようとしているのです。
何でもかんでも「ずるい!」と言えるわけではない
ただし、ここでも大人の話し合いでは激しいバトルが起きます。なぜなら、「何が特別受益にあたるのか」のライン引きがとても難しいからです。
例えば、以下のようなものは特別受益と認められやすいです。
結婚するときの「持参金」や、新居の購入資金の援助
家を建てるために、親の土地をタダで使わせてもらっていた(地代の免除)
親からプレゼントされた、明らかに高価な自動車やマンション
一方で、以下のようなものは「普通の親の義務の範囲内」として、特別受益には認められないことが多いです。
常識の範囲内での、大学の学費(きょうだいで私立と公立の差があっても、親の経済力に見合っていればOKとされることが多いです)
日常のお小遣いや、成人式のお祝い金
ここでもやはり、「お兄ちゃんはあのとき100万円もらったはずだ!」「いや、あれは借りただけで、もう返した!」といった、何年も前の「証拠のない言い合い」になりやすく、仲の良かった家族の絆をバラバラにしてしまう原因になるのです。
まとめ:親の「不公平をなくす意思」が家族を救う
この特別受益のトラブルを防ぐためにも、やはり一番大切なのは「お金を出した親本人」の生前の行動です。
法律には、「生前にあげた分は、わざわざ引き継ぐときに引き算しなくていいよ(持ち戻しの免除)」と親が遺言書などで書いておけば、その引き算をパスできるというルールもあります。
親が「2人とも可愛い子どもだから、昔のことは水に流して、今の遺産をきれいに半分こしなさい」と言葉(遺言)に残しておけば、妹もお兄ちゃんを責めにくくなります。
ここまで全10回を通して、相続のキホンと、なぜ家族が揉めてしまうのかというリアルな原因(実家、介護、過去のひいき)が見えてきましたね。
では、これらのトラブルを未然に防ぐための、法律上「最強の書類」とは一体何でしょうか。
次回は第11回:家族でもめるのを防ぐ最強の書類「遺言書」(その種類と役割)をお届けします。これがあれば、家族のケンカのほとんどを予防できるという、魔法のような書類のひみつに迫ります!
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■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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