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12.272024

LPガス料金 上乗せ禁止を含めた法改正

令和6年7月29日 令和6年12月27日再掲

■ 目次

  • ■ はじめに
  • ■ なぜ?改正されたのか
  • ■ 改正事項の内容
  • ■ どのような変わるのか?
  • ■ まとめ

■ はじめに


2024年7月2日、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律にもとづく改正省令が施行されました。

この省令の改正は、プロパンガスの販売方法に関する新たな規制が公布され、賃貸住宅を所有している方、借主(入居者)、管理会社に影響を与える改正となっております。

今回は、この改正省令がどのように改正され、どのような影響があるのか、を規制の概要、施行時期などについてわかりやすくご紹介していきます。

■ なぜ?改正されたのか


借主(入居者)が支払うLPガス(プロパンガス)の料金には、ガスの利用と関係のない費用が上乗せされており、その商慣習化(以下、「プロパンスキーム」という。)されていた商慣行を全面的に禁止する狙いがあります。

このプロパンスキームは主に投資目的の賃貸物件や建設会社が経営する賃貸物件とされています。そして、このプロパンスキームの構図とは、

● LPガス会社が賃貸住宅の所有者に電気エアコンやインターホン、Wi-Fi機器、給湯器等などの設備を無償での提供・貸与する

● 建設時にガス管を設置したLPガス会社が、ガス管の所有権を持ったままガスを供給する「貸付配管」を行う

以上の結果、

● 設備を無償での提供・貸与する代わりに借主(入居者)とLPガスを契約させてもらう

● 無償で行った提供・貸与の費用はLPガス会社が借主(入居者)へのガス料金を値上げして回収する

とガス使用料金とは関係のない設備費が上乗せされていました。

LPガスの料金は各LPガス会社独自で定めることができるため、

● 設備を無償提供する

● 借主(入居者)と契約させてもらう

● その借主(入居者)からガス料金の中に設備費を含めて回収する

という流れが慣習化していました。

この慣習化していた「プロパンガススキーム」の問題点は、賃貸住宅の所有者が受けた利益を借主(入居者)が負担しているという点です。

また、アパートなど集合住宅の場合、借主(入居者)がLPガス会社と直接締結しますが、そのアパートなどの建物を一括で所有者がLPガス会社と契約しているため、借主(入居者)が単独でLPガス会社を変更するのは不可能となります。

そのため、消費者センターには「ガス料金の苦情」について多くの苦情が寄せられていたようです。

■ 改正事項の内容


主な改正事項は以下の3点となります。なお、施行時期については下記1.及び3.は2024年7月2日施行、下記2.は2025年4月2日施行となります。

1.過大な営業行為の制限

LPガス事業者が、不動産・建設関係者等に対し、設備貸与や紹介料などの形で過大な利益供与を行うなどの営業行為を抑止するため、下記の措置を講じる。

① 正常な商慣習を超えた利益供与の禁止

② 消費者の事業者選択を阻害するおそれのある、LPガス事業者の切替えを制限するような条件付き契約締結等の禁止

2.三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)

消費者に不透明なかたちで、LPガスとは関係ない費用等がLPガス料金として上乗せ回収されている現状を是正するため、下記の措置を講じる。

① 基本料金、従量料金、設備料金からなる三部料金制(設備費用の外出し表示)の徹底

② 電気エアコンやインターホン、Wi-Fi機器等、LPガス消費と関係のない設備費用のLPガス料金への計上禁止

③ 賃貸住宅向けLPガス料金においては、ガス器具等の消費設備費用についても計上禁止

(注)上記①は新規契約・既存契約ともに適用。上記②および③は新規契約のみ適用(既存契約は早期移行努力義務)。

3.LPガス料金等の情報提供

賃貸住宅の場合、入居後は事実上LPガス事業者を変更できないといった実態を踏まえ、入居前にLPガス料金等の情報を入手できるよう、下記の措置を講じる。

① 入居希望者へのLPガス料金の事前提示の努力義務(入居希望者に直接又はオーナー、不動産管理会社、不動産仲介業者等を通じて提示)

② 入居希望者からLPガス事業者に対して直接情報提供の要請があった場合は、それに応じることを義務付け

■ どのような変わるのか?


1.これからは「設備料金」の根拠を提示することが義務化・・・2025年4月2日施行

2025年4月2日施行によりLPガス事業者は下記3つの料金を契約者に明示することになります。

● 基本料金:検針費用など、基本的に変わらない固定の料金

● 従量料金:ガスの使用量に応じて発生する料金

● 設備料金:ガス警報器など関連設備の契約料金

いずれの料金も「算定根拠」とともに通知しなければいけないため、改正以前の不透明な内訳での請求はできなくなるはずです。

2.設備料金には電気エアコンやインターホン、Wi-Fi機器等無関係な費用の請求は禁止

「設備料金」について、電気エアコンやインターホン、Wi-Fi機器等無関係な費用の計上が禁止となり、プロパンガス会社が無償提供していた費用の回収は借主(入居者)からできなくなるはずです。そのため、LPガス事業者が回収できていない部分を放棄するか、または所有者に対し、残価で買い取ってもらうことになるはずです。

万一、所有者が電気エアコンやインターホン、Wi-Fi機器等を残価で買い取った場合、家賃の値上げになる場合も想定できます。ただし、家賃を値上げするにことは一方的にできないため、実質賃料は据え置きとなり、借主(入居者)の負担は少なくなる可能性が高くなるはずです。

3.違反した事業者には罰金や登録取消の罰則を受ける

省令改正によりLPガス事業者には、30万円以下の罰金や販売免許の登録取消などの罰則が科されます。経済産業省も立ち入り検査も積極的に行う方針を示しており、隠れてプロパンスキームを用いた取引を行うこともできなくなるはずです。

4.入居希望者が賃貸借契約を締結する前にプロパンガス料金などの情報を提示する

入居希望者から不動産管理会社・不動産仲介業者などを介して要請要請された場合、または入居希望者から要請された場合は直接提示することになるため、プロパンガス料金を予め把握することができるはずです。

■ まとめ


現在、問題となっている電気料金を含めたエネルギー価格の値上がりに加え、プロパンガスには政府の補助金がなく、都市ガスと比較したプロパンガス料金の高さが課題となっています。

そのような状況下においてプロパンスキームの問題が表面化してきました。

今回の省令改正により、プロパンスキームの是正により所有者とLPガス事業者との関係は大きく変わるはずです。

借主(入居者)にとっては大きなメリットのある改正となるはずです。しかし、省令改正間もない状況ですのでデメリットが発生する可能性も否定できず、今後の動向に注目していく必要があります。

※プロパンスキームは、主に投資目的の賃貸物件や建設会社が経営する賃貸物件と言われています。すべてのプロパンガスの供給を受けている賃貸物件というわけではありません。

【国土交通省】LPガスの商慣行是正に向けた制度見直しの周知について | お知らせ | 全宅連 (zentaku.or.jp)


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。

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