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3.162026

賃貸物件の貸主は事業者としてどのように借主(消費者)に対応するべきなのか、を考える

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 民法、借地借家法と消費者契約法の賃貸借契約の関係性の違い
  • ■ 「事業者」とみなされる主な判断基準
  • ■ 事業者とみなされた場合
  • ■ 消費者契約法による注意点
  • ■ まとめ

■ はじめに


賃貸借契約において貸主と借主の関係は、民法や借地借家法が適用される、ということは広く認知されていると思われます。

賃貸借契約における貸主と借主との関係は、民法や借地借家法のほか、事業者と消費者の関係として定義され、特に居住用物件においては、借主を守るため、消費者契約法が適用されることになります。

そこで、今回は、事業者と消費者との関係における消費者契約法のどのようなところに注意が必要か、を考えてみます。

■ 民法、借地借家法と消費者契約法の賃貸借契約の関係性の違い


1.民法、借地借家法での関係(貸主と借主)

貸主の義務

借主に物件を使用・収益させる義務があり、必要な修繕を行う義務も負う。

借主の義務

賃料を支払う義務、契約終了時に原状回復を行って明け渡す義務がある。

借地借家法による保護

借主の居住権を守るため、貸主からの解約には「正当事由」が必要とされるなど、借主が強く保護されている。 

2.消費者契約法での関係(事業者と消費者)

消費者の定義

事業としてではなく、個人の私生活のために契約する個人を指す。

事業者の定義

法人だけでなく、個人であっても事業として賃貸を行っている大家さんも含まれる。

不当な条項の無効化

消費者(借主)の利益を一方的に害する条項(例:過大な違約金、不当な更新料、借主に不利すぎる特約など)は、消費者契約法により無効と判断される可能性がある。

※消費者契約法では、事業者と消費者の情報の格差や交渉力の差を埋めるための関係となります。 

■ 「事業者」とみなされる主な判断基準


1.事業者とみなされる場合、次の要素を総合的に考慮する。 

規模の大きさ

複数の物件を所有・管理している場合、事業者性が認められやすくなる。

反復・継続性

一時的な貸し出しではなく、長期間にわたって繰り返し入居者を募集し、契約を結んでいる実態があるか。

営利目的の有無

利益を得る目的で組織的に活動しているか。

社会的な実態

職業として不動産賃貸業を営んでいる、あるいは不動産賃貸業として確定申告を行っているなどの状況。 

2.「事業者」と判断されているケースと判断されていないケース

事業者と判断されている例

アパート、マンションを1棟所有し、経営している。

区分マンションを複数所有のうえ、継続的に賃貸収益を得ている。

サブリース(一括借り上げ)契約を締結のうえ、一定規模での運用をしている。

消費者(非事業者)と判断されていない例

転勤の間だけ、自分のマイホームを一時的に貸し出している。

相続した実家を1軒だけ、特定の知人に貸している。 

★消費者契約法による「事業者」の定義は、一定の数値による一律かつ正式な基準は定まっていません。

なぜ?一定の基準の定めがないのか、それは、

「情報の格差」や「交渉力の差」を個別に判断するためであり、賃貸している賃貸物件が1部屋のみであっても、その貸主が不動産業の知識があれば、借主との間に大きな知識の差が生まれます。

そのため、一律に基準で区分けするのではなく、「ケースバイケースで司法が判断する」という仕組みになっているのです。

ただし、現在、実務上では税務規定となる「5棟10室ルール」が目安にされており、消費者契約法のトラブルにおいても、この「5棟10室ルール」の基準を超えていれば「特段の事情がない限り事業者である」と判断されています。 

5棟10室ルールとは、

① 戸建住宅なら5棟以上

② アパート・マンションなら10室以上 

注意点:サブリース(一括借り上げ)の場合

個人が所有物件を不動産会社に一括で貸し出す「サブリース契約」の場合、その個人の知識や契約規模によっては「消費者(借主側)」ではなく、対等な「事業者」とみなされ、消費者契約法の保護を受けられない場合もあります。 

■ 事業者とみなされた場合


貸主が「事業者」と認定された場合、借主との契約は「消費者契約」となります。

消費者契約法のルールが適用された場合、貸主に厳しい制約がかかります。 

貸主が注意すべきポイントは以下の3点です。

1. 「借主に一方的に不利な特約」は無効になる

事業者(貸主)と消費者(借主)との間で締結された契約では、双方が合意して印鑑を押していても、借主の権利を不当に制限する条項は無効と判断されます。

①修繕費の全額負担

「経年劣化分も含めて退去時に全額借主が負担する」といった特約は無効とされる可能性が強い。

②高額な違約金

解約時に相場を大きく超える違約金を設定した場合、裁判では認められないケースが多い。

2. 「不実告知」や「不利益事実の不告知」の禁止

事業者は、契約の判断に影響する重要な情報を伝えなくてはならない義務があります。

①隠れた欠陥

雨漏りや過去の事故(心理的瑕疵)などを知っていながら「問題ない」と言ったり、意図的に隠し、契約を締結した場合、契約の取り消しを主張されます。

②断定的判断の提供

「将来必ず値上がりする」「絶対に損はしない」といった不確かな説明も禁止されています。

3. 管理委託先(管理会社)の不適切な対応も貸主の責任

管理会社に業務を委託した場合、法律上は「貸主(事業者)の代理人」として扱われるため、管理会社の担当者が借主に対し、強引な勧誘または不適切な対応を行った場合、その責任は貸主に及ぶことがあります。

■ 消費者契約法による注意点


消費者契約法にもとづきここ数年ではクリーニング費用、家賃保証会社費用について問題が生じている場合が多く、注意する必要があります。

1. クリーニング費用(退去時)

自然消耗による汚れは貸主負担(賃料に含まれる)が原則です。しかし、特約により借主負担にすることが可能です。

ただし、以下の条件を満たさない場合、「無効」と判断される場合があります。

①明確な金額の提示

「清掃費用は借主負担とする」ではなく、「清掃費用金〇〇,〇〇〇円(税込)」と具体的な金額を契約書に明記する必要があります。

②内容の限定

専門業者による通常清掃の範囲であること。タバコのヤニ汚れや故意の破損などの「原状回復」とは異なることを明記しておく必要があります。

③暴利でないこと

相場からかけ離れた金額(例:ワンルームで10万円など)は、消費者契約法第10条(不当な条項)により無効とされる可能性があります。

2. 家賃保証会社の費用

事業者が指定する保証会社の費用について以下の点に注意が必要です。

契約前の説明義務

保証委託料(初回・更新料)が発生することを事前に重要事項説明等で明示する必要があり、万一記載していない場合、後々の問題が生じることになります。

②過剰な更新料の回避

1年ごとに数万円といった更新料は、借主から「不当な負担」として問題となる場合があります。

③代位弁済時の強引な取立て

保証会社が不適切な取り立てを行った場合、貸主の選任責任や管理責任を問われる場合があるため、信頼できる会社を選ぶ必要があります。

★トラブルを防ぐため、以下の対応をおすすめします。

①ガイドラインの遵守

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」に合わせた特約を作成する。

②特約への署名捺印

クリーニング特約など借主に負担を求める条項には、特に重要事項説明で十分な説明を行い、了承した記録を残す必要が生じます。

③消毒費用、害虫駆除費用の問題

ここ数年、あたかも「義務」であるかのように誤認させて「消毒費用」や「害虫駆除費用」を徴収している場合があり、トラブルが急増しています。

貸主(事業者)として以下の点には必ず注意してください。

1. 「強制」か「任意」かの明示

① 問題になる場合

契約条件として強制的に「入居にあたって必須の付帯サービス」と説明し、断る選択肢を与えない場合。

②問題とならない場合

契約条件でなはく、任意のサービスである旨を伝え、借主が納得して申込を行う場合。

2. 消費者契約法におけるリスク

貸主が「事業者」となる場合、管理会社やお客様を紹介してくれる客付会社の勝手な行為であっても「貸主の行為」とみなされる可能性があります。

これは、借主から見れば「貸主の指定した窓口」となり、管理会社の不適切な販売行為について、貸主も共同不法行為者として責任を問われる可能性があります。

また、消費者契約法にもとづき、付帯サービスの契約だけでなく、賃貸借契約の取消しや損害賠償を主張される火種になりますので注意が必要です。

■ まとめ


貸主は、事業者として大きく次の責任と注意が必要となります。

1. 消費者契約法に基づく法的責任

事業者である貸主には、借主との情報格差を考慮し、公正な契約を結ぶ義務があります。

不当条項の無効

「退去時のクリーニング代全額負担」や「高額な違約金」など、借主に一方的に不利な特約は、たとえ合意があっても法的に無効とされるリスクがあります。

説明義務と誠実義務:

契約に際し、借主が負担する費用の内容や任意性を正しく伝える義務があります。

2. 管理・仲介会社に対する監督責任

実務上、最も注意すべきは「管理会社や客付け会社(仲介会社)の行為は、対外的に貸主の責任とみなされる」という点です。

連帯責任のリスク

客付け会社が貸主に無断で「消毒費用」などの不透明な項目を上乗せし、借主に強制した場合、貸主も「使用者責任」や「不法行為責任」を問われ、返還請求や損害賠償の対象となる可能性があります。

「知らなかった」の非通用:

事業者には適切な業者を選定し、その募集実態を監督する義務があるため、業者の暴走を放置することは貸主自身の過失と判断されかねません。

3. 実務上の注意点と防衛策

トラブルを防ぎ、健全な資産運用を継続するためには、以下の対策が不可欠です。

費用の透明性の確保:

クリーニング代や保証会社費用などは、具体的な金額を契約書に明記し、二重請求や不明瞭な加算を排除しなければなりません。

募集プロセスの透明化:

管理会社のホームページや募集図面に「不当な付帯費用の請求禁止」を明文化して掲載し、仲介会社による独自の利益上乗せを牽制することが重要です。

借主の信頼維持

借主が他社に相談するような事態は、経営上の大きなリスクです。不信感を抱かせないよう、貸主自らがコンプライアンス(法令遵守)の姿勢を明確に示すことが、長期的な安定経営につながります。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

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