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1.192024

コラム

賃貸物件の「賃借権」は相続されるのかを考える

目次

  • ■ はじめに
  • ■ 賃借権は相続財産
  •  ー貸主側から退去請求や承諾料の請求はできない
  •  ー賃料の支払い
  • ■ 賃貸借契約を継続する場合
  •  ー貸主側から退去請求や承諾料の請求はできない
  •  ー賃料の支払い
  • ■ 賃貸借契約を継続する場合
  •  ー遺産分割協議で相続人を確定する
  •  ー賃借権の相続人を貸主へ通知する
  • ■ 賃貸借契約を解約する場合
  •  ー相続放棄する
  • ■ 相続されない賃貸物件
  • ■ 内縁の配偶者は相続できるのか
  •  ー借主に相続人がいない場合には居住権が認められる
  •  ー借主に相続人がいる場合でも賃借権を援用できる
  • ■ まとめ

■ はじめに


賃貸物件に居住している方が亡くなったとき、賃貸借契約はどうなるのでしょうか。

賃貸借契約にもとづき賃借権が発生していますので相続財産として相続の対象となります。また、相続人が賃貸借契約を継続し、居住する場合、遺産分割協議を行ったうえ、相続人を確定し、貸主に通知しなければならず、賃貸借契約を解約する場合には相続人が手続をしなければなりません。

今回は、借主が亡くなったときの賃借権の相続関係について考えていきます。

■ 賃借権は相続財産


相続というと、不動産や預貯金などが相続財産と考えがちですが、賃借権も財産権の一種のであり、相続財産として相続の対象になります。

亡くなった方が賃貸物件に居住していた場合、賃貸借契約にもとづき借主の地位は「法定相続人」へ引き継がれます。

※法定相続人が複数いる場合、相続人全員が法定相続分にて賃貸借契約を引き継ぎます。この場合の権利関係は法律上「準共有」となると考えられています。

※賃貸物件が居住用か事業用かを問わず賃借権は相続の対象になります。

※相続人は、貸主の同意を得なくても貸主に対して賃借権を主張できます。

●貸主側から退去請求や承諾料の請求はできない

借主が亡くなったとき、貸主から相続人に対し、賃貸物件の退去請求を行う場合があります。しかし、賃借権は相続人へと当然に承継されるため、貸主からの退去請求はできません

また、貸主から「名義変更の承諾料」を請求される場合もあるようですが、賃借権が相続人へ相続されるため、貸主の承諾は不要です。よって承諾料の請求も認められません

●賃料の支払い

相続人は、賃料支払義務も分割承継しますので相続人は、貸主に対しては家賃全額を支払う義務があります。

相続人の誰かが家主に家賃全額を支払ったときには全額の家賃を払った相続人は、その法定相続分に応じて他の相続人に、負担すべき家賃分を請求することが可能です。

【不払い賃料について】

生前に不払い賃料がある場合には取り扱いが異なります。

生前の不払い賃料は、相続人は貸主に不払い賃料全額を支払う義務はありません。各相続人の法定相続分の割合に応じた金額についてのみ貸主に支払う義務があるということです。

■ 賃貸借契約を継続する場合


被相続人の賃貸物件を引き継ぎ居住する場合、相続人は賃借権の相続についての手続きが必要になります。

①遺産分割協議で相続人を確定する。

不動産や預貯金などの相続財産と同様に、賃借権についても相続人を確定する遺産分割協議が必要となります。

※遺言がある場合には遺産分割協議は不要となる場合があります。

②賃借権の相続人を貸主へ通知する。

賃借権の相続人が決まったら、新借主を貸主や不動産管理会社に伝えます。

賃貸借契約を引き継ぐため、新借主として貸主と賃料の支払い、敷金の返還・原状回復などを引き継ぐ覚書を締結します。

※従前の契約内容が新借主へそのまま引き継がれます。

※相続に伴い遺産分割協議の成立によって賃貸借契約が引き継がれるため、新たに賃貸借契約を締結する必要はありません。但し、若干の覚書作成費用はかかる場合があります。

■ 賃貸借契約を解約する場合


相続人が賃貸借契約を引き継がない場合は、解約手続きを行う必要があります。解約手続きを行わず、貸主に通知せずいると賃貸借契約はそのまま効力が継続されますので賃料を支払い続けなければならなくなります。
賃貸借契約には、契約期間中において解約可能な中途解約の条項が入っていますので、賃貸借契約条項を確認のうえ、解約手続きを行うことをオススメします。

※原状回復義務と敷金返還請求権

賃貸借契約を解約する場合には、原状回復義務を負います。自然的な経年劣化分については問題となりませんがこの自然的な経年劣化分以外の故障・破損があれば相続人原状に戻して貸主へ賃貸物件を返還する必要があります。原状回復義務についても相続人全員が引き継ぐことになりますので原状回復に係る費用は、法定相続分に応じて負担することになります。

また、賃貸借契約を解約しますと貸主は借主へ預かっていた敷金を返還します。

この敷金返還請求権も相続人全員に引き継がれますので法定相続分に応じて敷金を分配する必要があります。

●相続放棄する

相続放棄を行うことにより相続人の地位がなくなるため、賃借権を相続することはありません。よって、相続放棄をすれば、賃料の支払い義務や賃貸借契約を解約する必要はなくなります。

■ 相続されない賃貸物件


賃貸物件の借主が亡くなられた場合、その賃借権は相続財産として相続されるの原則です。しかし、賃貸が公営住宅の場合には相続されません

平成2年10月18日の最高裁判決によると「公営住宅法」にもとづく公営住宅の入居者が死亡した場合、公営住宅に居住する権利は相続人に承継されないと判断されています。 

裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

公営住宅法は、困窮状態にあって居住場所を取得できない低所得者に対し、安価な家賃で住宅を賃貸するための法律であって、「低所得者層の保護」「国民生活の安定」という目的のもと入居者は一定条件を満たす人に限定のうえ入居者を選考する必要があるためです。

よって公営住宅では相続が発生した場合、相続人は退去しなければならないのです。

■ 内縁の配偶者は相続できるのか


内縁関係の場合、戸籍上は夫婦ではありませんので相続人ではないということです。
しかし、その内縁関係でも、次の場合には内縁の配偶者が賃借権を引き継ぐことができるのです。

●借主に相続人がいない場合には居住権が認められる

借主に相続人がいない場合には、内縁の配偶者は、賃借権を引き継ぐことができます。これは借地借家法第36条において内縁の配偶者が追い出されることを防ぐため、保護されています。

●借主に相続人がいる場合でも賃借権を援用できる

借主に相続人がいる場合は、相続人が賃借権を引き継ぐことになるので、内縁の配偶者が賃借権を引き継ぐことはできません

ただし、内縁の配偶者が追い出されることがないよう判例において内縁の配偶者は、相続人が持つ賃借権を援用する形で賃貸物件に住み続けることができるとされています。内縁の配偶者には賃借権の権利はありませんが、賃借権を主張することが認められているためです。

裁判では内縁の配偶者が住み続ける権利を保護する傾向にあります。

■ まとめ


賃貸借契約の契約期間中に借主が亡くなることも考えられます。

賃借権の相続は意外と知られていないのが現状であり、また手続きも複雑です。

相続人が引き継ぐのか、引き継がないのか、それぞれの手続をどのようにすればよいのかなど、状況に応じて対処する必要があります。

また、賃借権の相続は、賃料や敷金の処理、紛争防止のための覚書締結、対抗要件の具備など、専門的な対応を要するプロセスが多数発生します。

万一、もし困ったことがあればすぐに専門家にご相談してください。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

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