目次
- ■ 現在の状況
- ■ 供給過多と空室率
- ■ 今すぐに実行してほしいこと
- ■ 具体的に何をすればよいのか
- ー所有している物件を知ること
- ー所有している物件を見直すこと
- ー所有している物件の設備と入居者ニーズの高い住宅設備を比較する
- ー所有している物件の新規賃料を知ること
- ■ まとめ
■ 現在の状況
12月に入りました。賃貸市場では今は繁忙期の真っ只中です。
昨年はコロナ禍の影響も薄れて在学生や法人の移動も活発となり、一部の地域を除き、賃貸市場も活況を呈していました。
しかし、今年は例年とは異なるようでファミリー層を除き、学生(在学生・新入生)の動き出しが遅いようです。
コロナ禍による経済的な影響などによって、市況が変わることもゼロではないので安心はできませんが、先週に比べて今週のインターネットによる閲覧数が大幅に増加している状況から、12月には昨年同様の動きが出てくるのではないか、と予想されます。
このような賃貸市場の状況のなか、貸主(オーナー)が繁忙期以降空室を作らないために、何をすればよいのか、確認したいと思います。
■ 供給過多と空室率
現在の賃貸市場は需要より供給が大幅に多いということ周知の事実。
ポータルサイト「ホームズ」によると、藤沢市の空室率は17.9%であり、満室を目指すには、入居希望者に選ばれる部屋を提供しなければならないということになります。
「入居希望者に選ばれる部屋を提供する」と言っても何をどれだけ対策すればよいのか。難しい判断かと思います。
そこで、対策という前に貸主が所有している物件に対し、何を行えばよいのか、をお伝えさせていただきます。
■ 今すぐに実行してほしいこと
貸主がおこなわなければならない基本は次の4つです。
1.所有している物件を知ること
2.所有している物件を見直すこと
3.所有している物件の設備と入居者ニーズの高い住宅設備を比較すること。
4.所有している物件の新規家賃を知ること。
■ 具体的に何をすればよいのか
1.所有している物件を知ること
貸主は、自分の所有している物件を冷静な目で物件を見ることです。
良いところも悪いところも知ってこそ、物件に最も適した対策ができるはずです。
そこで、下記に掲載した簡易評価チェックリスト(今回は、学生向きアパート用)は、学生の入居希望者やその親族の方がチェックされる項目を評価する方法です。10項目各項目5点の50点満点となります。
・交通(駅からの距離)
・生活利便(店舗・病院等への距離)
・建物印象(外観、エントランス、廊下等の第一印象)
・築年数
・設備(インターネット無料、TVモニター付インターホン、エアコン等設置の有無)
・セキュリティー(オートロック、防犯カメラ、モニター付インターホン等設置の有無)
・間取り(洋室の広さ、向き、キッチンの広さ等踏まえた状況)
・共用施設(ゴミ置き場、駐車場、駐輪場、バイク置場、植栽等の有無)
・建物向き
・管理状況(清掃状況、管理会社へ委託の有無、修繕の状況等)
を再確認することです。
■簡易評価チェックリスト(学生用)
■交通 | ■生活利便性 |
駅徒歩3分以内 (5) 駅徒歩5分以内 (4) 駅徒歩7分以内 (3) 駅徒歩10分以内 (2) 駅徒歩15分以内 (1) ( )内は点数 | コンビニ、ドラッグストア、郵便局・銀行、 買物・スーパー、病院 400m以内にある場合:各1点 |
■建物印象 | ■築年数 |
外観、エントランス、廊下、敷地 (ゴミ置き場・駐車場・駐輪場・バイク置場等) を総合的に判断のうえ、1点~5点にて評価 | 築1年以内 (5) 築5年以内 (4) 築7年以内 (3) 築10年以内 (2) 築15年以内 (1) ( )内は点数 |
■設備 | ■セキュリティー |
インターネット無料 TVモニター付インターホン エアコン トイレ温水機能 宅配ボックス 各1点 | オートロック 防犯カメラ モニター付インターホン センサーライト ホームセキュリティー ( )内は点数 |
■間取 | ■共用施設 |
洋室の広さ、向き、キッチンの広さ、収納の 広さ、ベランダの設置の有無、コンロの口数、 独立洗面所の有無、浴室・トイレ別の有無等 を総合的に判断のうえ、1点~5点にて評価 | ゴミ置き場 駐車場 駐輪場 バイク置場 植栽等 各1点 |
■建物向き | ■管理状況 |
南角 (5) 南向き (4) 北角 (3) 東・西向き(2) 北向き (1) ( )内は点数 | 清掃状況、管理会社へ委託の有無、 修繕の状況等を総合的に判断のうえ 、1点~5点にて評価 |
簡易評価チェックリストをもとに競合物件との比較をレーダーチャートにしてみると、どの項目が劣っているのかが一目でわかります。
貸主だけでチェックしてみるのも良いのですが、ご家族(奥様・ご主人・お嬢様・ご子息)にもチェックしていただき、感想を聞くのもいいのではないでしょうか。
そしてプロの判断として管理会社に意見を聞いて管理会社と自分との考え方が合っているのか、違っているのかをチェックしてみることもおすすめします。
2.所有している物件を見直すこと
貸主は、アパート、マンションが完成すると、その物件に住むことなく、借主に引渡すことになります。
よって、物件の居住性や問題点などを把握することなく、貸し続けるのが一般的かと思われます。
そこで、入居前と退去時にそれぞれアンケート調査をすることによって、物件の強みや弱みを知ることができ、弱みを指摘された場合には、改善する余地が十分に残っているので、対応次第では人気物件になることも可能です。
●入居アンケートからわかること
入居アンケートで分かることは、「物件を知ったきっかけ」「契約の決め手」「入居していた部屋についての感想」等を把握することができることです。
これらは、入居者から聞かないない限り、なかんかわからない情報です。アンケートを行うことによって、今後の集客および改善を検討することができます。
入居される方は、必ず決め手となる部分があるから入居されているのです。その決め手を知ることは、賃貸経営にとって非常に重要なことです。
●退去アンケートからわかること
「退去」は、必ず発生するものです。退去される方は必ず理由があって退去されます。
例えば、転勤や転職、不動産の購入による住み替えなどの理由もあれば、「入居者間のトラブル」「騒音トラブル」等によって退去される場合もあります。
「入居者間のトラブル」「騒音トラブル」等は、他の入居者にとっても問題となることです。これらの理由での退去は、今後の賃貸経営にとってマイナスになります。至急対応することが重要となります。
3.所有している物件の設備と入居者ニーズの高い住宅設備を比較する
昨年末に全国賃貸新聞社が発表した全国の不動産会社を対象に「賃貸住宅における人気設備アンケート」を実施し、回答を得た「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」と「この設備がなければ入居が決まらない」の各トップ10の結果から、最新の傾向を確認してこの辺りの設備を見直すことも必要となります。
前述しました1.所有している物件を知ること
【この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる】
<単身者向け>
1位 インターネット無料
2位 エントランスのオートロック
3位 高速インターネット
4位 宅配ボックス
5位 浴室換気乾燥機
6位 独立洗面所
7位 システムキッチン
8位 24時間利用可能なゴミ置き場
9位 防犯カメラ
10位 追い炊き機能
<ファミリー>
1位 インターネット無料
2位 追い炊き機能
3位 エントランスのオートロック
4位 高速インターネット
5位 システムキッチン
6位 宅配ボックス
7位 浴室換気乾燥機
8位 ガレージ
9位 ホームセキュリティー
10位 24時間利用可能なゴミ置き場
【この設備がなければ入居が決まらない】
<単身者向け>
1位 室内洗濯機置場
2位 TVモニター付きインターホン
3位 インターネット無料
4位 温水洗浄便座
5位 独立洗面所
6位 エントランスのオートロック
7位 備え付けの照明
8位 宅配ボックス
9位 高速インターネット
10位 ガスコンロ
<ファミリー>
1位 追い炊き機能
2位 室内洗濯機置場
3位 TVモニター付きインターホン
4位 独立洗面所
5位 温水洗浄便座
6位 インターネット無料
7位 システムキッチン
8位 ガスコンロ(2口・3口)
9位 エントランスのオートロック
10位 宅配ボックス
4.所有している物件の新規賃料を知ること
管理会社に依頼して『査定書』などを用いて現行のまま募集した場合の賃料を算出します。
よく聞く話として、「いままでは賃料●万円でしたから同じ賃料でいいですね。」と安直に賃料を決めて募集を始めるケースもあるようです。ただし、賃料というのは生ものです。常に周りの相場や競合賃貸物件の設備の改善など確認しておく必要があります。そのため、新たに募集を始める際には査定書で賃料を決めることが大切です。
次に、前記しました
1.所有している物件を知ること、2.所有している物件を見直すこと、3.所有している物件の設備と入居者ニーズの高い住宅設備を比較すること。
で改善しなければならない箇所がある場合には、その改善に係る費用を確認し、その改善した場合の賃料の査定書を作ってもらう必要があります。
万一、改善しても空室ができる場合があれば改善せずに賃料を安くするか、改善して満室が想定できるのであれば改善して賃料をあげればよいのです。
■ まとめ
これから本番を迎える賃貸市場の繁忙期を前に実行していただきたい基本を4つご紹介させていただきました。
繁忙期だから特別なことをやらなければいけない。ということはありません。
普段の空室時と同様に、対策を積み重ねていくことが大切と思います。また、3月末までに入居者が決まらなくても、諦めず、行動し続けることが大切です。確かに、4月になると入居希望者は少なくなりますが、ゼロになる訳ではありません。
人の移動が多くなる繁忙期だからこそ、少しの工夫で入居は決まりやすくなります。その工夫も4つの基本を行って初めてわかることです。
「所有している物件を知ること」、「所有している物件を見直すこと」、「所有している物件の設備と入居者ニーズの高い住宅設備を比較すること」、「所有している物件の新規家賃を知ること。」は、是非とも常に実践していただき、入居者が決まるのをじっと待つのではなく、積極的に空室対策を行い満室稼働を目指してはいかがでしょうか。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。