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8.182023

空き家対策特別措置法改正①

ニュースなどでも取り上げられているのでご存じの方も多いかもしれません。

このコラムでは空き家対策特別措置法(以下、「空き家法」という。)の一部改正にあたり、改正以前の空き家法の復習および施行後の状況。そして改正点の2回に分けてお伝えします。

今回は、法改以前の「空家等対策の推進に関する特別措置法」を解説します。

空き家法とは、社会問題となりつつある空き家を管理・処理するための法律です。

空き家が放置されることで起こり得る諸問題を解決したうえで、建物自体の再利用や処分を目的とした法律であり、2015年5月に施行されました。

空き家法施行以前では所有者の許可なく敷地への立入・調査、住民票や戸籍などから個人情報の取得が不可能だったものが空き家法施行により確認できるようになりました。

また、現地調査により問題があると判断された空き家は「特定空家」の指定を受け、行政は所有者に対し、不動産管理の助言・指導・勧告・命令を実行できることになりました。

空き家については「空き家法」において、「常に居住やその他の使用がされていない建築物および敷地」と規定されています。

通年で人の出入りがなく、水道・ガス・電気などの使用が確認できなかった場合、空き家と判断されます。

■国土交通省による空き家の定義

国土交通省による空き家の定義とは?

国土交通省は、空き家法において空き家を「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地をいう。」と定義しています。

ここでいう「常態」とは、概ね1年間を通じて、居住やその他の使用、また電気・ガス・水道の使用実績がないことを指すので、以下に挙げる例のうち、①・②・④は国土交通省の定義では「空き家」と考えられます。

①年に一度部屋の空気の入れ替えに来て「使用」している。

②該当する建物とは別の地域に住んでおり、状況確認時に一泊し「使用」している。

③物置として「使用」している。

④賃貸物件であり、入居者が決まれば「使用」する。

③についても、数年間放置しているのであれば、それは「居住その他の使用」に当たらない可能性も十分にあります。

アパートなどの集合住宅における空き家の定義

アパートなどの集合住宅や長屋などの共同住宅は、戸建てとは定義が異なります。

全戸が空室にならないと空き家とはならず、建物自体が老朽化により倒壊の危険等があっても、空き家対策特措法では「空き家」とはみなされないため、対応ができない。というのが現状です。ただし、建築基準法に基づく行政指導は可能です。

なぜ空き家対策特別措置法は施行されたのでしょうか。

主な理由として言われているのが次の5つの理由です

①景観を損なう

庭の手入れがされていなかったり雑草が生い茂っていたりなど、管理が行き届いていない空き家は周囲の景観を損ねてしまいます。景観の乱れは単に心象を悪くするだけでなく、近隣住宅の資産価値にも影響をおよぼします。

②倒壊の危険性

倒壊すれば、周囲の建物に危険が及ぶことは十分に考えられます。

③異臭

放置された空き家は不法投棄の場となるリスクが高く、生ごみによりハエが集まったり動物に荒らされたりするケースも少なくありません。また、ゴミが原因で悪臭が発生する恐れもあります。

④害虫・害獣被害

長い間放置されている家屋は、シロアリやネズミなどの害虫・害獣によってダメージを受けている可能性があります。また、換気が十分にされていないことで湿気が溜まり、屋根や外壁、基礎部分がもろく壊れやすくなっていることも考えられます。

⑤犯罪の温床

空き家に対する犯罪で一番多いものが「放火」になります。延焼した場合は近隣への賠償責任も生じるので、火災保険に加入しておくなどリスクヘッジが重要です。他にも住居への不法侵入や空き家を使用した犯罪、落書きなどによる治安そのものの低下も大きなリスクとなります。

空き家法とは、空き家に関する様々なルールを定めた法律であり、具体的には以下のことが定められています。

①空き家の実態調査

②空き家の所有者へ適切な管理の指導

③空き家の跡地についての活用促進

④適切に管理されていない空き家を「特定空家」に指定することができる

⑤特定空家に対して、助言・指導・勧告・命令ができる

⑥特定空家に対して罰金や行政第執行を行うことができる

空き家法は空き家を「危険度」によって分別するのが特徴であり、危険な空き家を「特定空家」と定義して、行政が介入できるのがポイント。

「特定空家」と定義される空き家は、以下のような条件を持つ住宅となります。

①倒壊の恐れがある

②衛生的に問題がある(ゴミ屋敷化している)

③汚物や落書きで景観に害を与える状況である

■助言・指導から代執行までの流れ

①助言・指導とは、所有者等に対して、特定空家等についての除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置を行うことを求めるもの

②助言・指導を受けた特定空家等の状態が改善されない場合には、その特定空家等の所有者等に対し、繰り返し助言または指導を行うか、または必要な措置を勧告するか、検討される。

③助言または勧告を行っても特定空家等の状態が改善されない場合、市町村長は、相当の猶予期間を付けて、必要な措置をとるよう勧告することができる。勧告が助言・指導と異なる点は、「相当の猶予期限」を付けて勧告すること。

 ※「相当の猶予期限」とは、勧告された措置を行い、周辺の生活環境への悪影響を改善するのに通常要すると思われる期間です。

④具体的には、対象となる特定空家等の規模や措置の内容等によって異なりますが、おおよそ「物件を整理するための期間や工事の施工に要する期間を合計したものを標準とする」とされています。

⑤勧告がされると、固定資産税等の住宅用地特例の適用が除外されます。

※修繕など必要な措置が完了し、特定空家等が是正された場合は、勧告が撤回され、住宅用地として要件を満たせば改めて住宅用特例の適用を受けられる。

⑥勧告を受けた者が、正当な理由なく勧告された措置をとらなかった場合、特に必要があると認めるときは、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置を講じるよう命令することができる。

 ※命令は行政処分であり、所有者等は、命令に係る措置を行う法律上の義務を負うことになる。

 ※市町村長は、この命令をした場合には、第三者に不測の損害を与えることを未然に防止するため、命令が出ている旨を公示する標識を設置し、市町村の広報誌やホームページ等で公示する。

 ※命令に違反すると、50万円の過料に処されます

⑦必要な措置を命じても、命じられた者が措置を履行しないとき、又は履行しても十分でないとき、履行しても命令で定めた期限までに完了する見込みがないときは、市町村長は、行政代執行の規定にもとづき、代執行を行うことができる。

以上が空き家法の内容となります。

内容的にはかなりの強制力がある法律です。では、このような強制力のある法律の施行後どのように空き家の効果が表れているのか、お伝えいたします。

国土交通省より2022年3月31日時点調査での「空き家対策に取り組む市区町村の状況について」の集計結果で公表されておりますので、その効果を測り知ることができます。

助言・指導 30,785件

勧告 2,382件

命令 294件

行政代執行 140件

略式代執行 342件

合計33,943件 ※2015年の法律施行から2021年度末までの合計。

「特定空家」に指定されたのは合計である33,943件と、かなりの数字になりました。

そのうち、固定資産税の住宅用地の特例措置が除外されてしまった空き家は2,382件、50万円の罰則金が発生したのが294件。そして、強制的に空き家を破壊されてしまったのは140件という結果です。

「特定空家」に指定されたのは33,943件あるにもかかわらず、実際に何らかの処理されたのは10分の1以下という結果になっています。

この結果を見ると、空き家対策特別措置法の施行後、特定空家に指定されても、実際に何らかの処理されるわけでは無いというのが結果となります。

やはり空き家も財産であり、勝手に撤去できず「財産権の侵害」になるのがネックなのでしょう。

せっかく法律が施行されたのに、空き家問題解決がなかなか先に進まないという状態になっています。

報道発表資料:空き家対策に関する計画 8割の市区町村で策定!<br>~空き家対策に取り組む市区町村の状況について(令和4年3月31日時点調査)~ – 国土交通省 (mlit.go.jp)

■固定資産税の住宅用地の特例措置

宅用地および市街化区域農地については税負担を軽減するために次のような特例措置です。(ただし、特定空き家として認定され、勧告を受けた家屋の敷地の用に供されている土地を除く。)

 固定資産税都市計画税
小規模住宅用地
(200平方メートルまでの部分)
評価額×1/6評価額×1/3
一般住宅用地
(200平方メートルを超える部分)
評価額×1/3評価額×2/3
市街化区域農地評価額×1/3評価額×2/3

例えば、土地200㎡、評価額1800万円、住宅用家屋が建築されており、居住用として利用している場合

■住宅用地の特例措置の土地の固定資産税・都市計画税は、

【固定資産税】

土地評価額1,800万円×1/6=300万円(課税標準額)

課税標準額300万円×1.4%=42,000円

【都市計画税】

土地評価額1,800万円×1/3=600万円(課税標準額)

課税標準額600万円×0.25%=15,000円 

※税率は上限0.3%、藤沢市適用税率0.25%として計算

【合計】

57,000円

■特定空家として認定され、勧告を受けた土地の固定資産税・都市計画税は、

【固定資産税】

土地評価額1,800万円×0.7=1,260万円(課税標準額)

課税標準額1,260万円×1.4%=176,400円

【都市計画税】

土地評価額1,800万円×0.7=1,260万円(課税標準額)

課税標準額1,260万円×0.25%=31,500円 

※税率は上限0.3%、藤沢市適用税率0.25%として計算

【合計】

207,900円

差額は、150,900円であり、3.64倍の支払いとなります。

空き家法が施行された後、どんな効果をもたらしているのか紹介しましたが、空き家を劇的に減らすまでの力は発揮していないようです。

空き家法が施行されたにもかかわらず、空き家問題が改善されていないわけですから、空き家問題が解決されるまでには時間がかかると思われます。

しかし、このまま空き家問題に時間をかけているわけにもいきません。空き家に困っている方当社へご相談ください。何かできる事を一緒に考えさせてください。

総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」によると空き家の数は、調査の度に増加し、1988年に394万戸だったところ、2018年では848万戸と、この30年間で2倍強になっています。 

総務省統計局・空き家件数の推移グラフ

統計局ホームページ/平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果 (stat.go.jp)

■記事の投稿者 

飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

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