■ 目次
- ■ はじめに
- ■ 借地権とは何か
- ■ 借地権の売却方法
- ■ 売買契約に伴う費用
- ■ 借地権の売却に係る費用と税金
- ■ 借地権割合
- ■ まとめ
■ はじめに
不動産の売買において「売却物件」と言えば「所有権」と思われるケースは多いはずです。
しかし、不動産を売却するケースは、「所有権」とは限らず、「借地権」の売買もあります。
借地権の売却は、所有権の売却と違い、土地所有者(地主)との調整など複雑な手続きが必要であり、専門的な準備と正しい知識が求められます。
今回は、この借地権の売買についてどのような土地所有者(地主)との調整など複雑な手続きが必要なのかなどをお伝えさせていただきます。
■ 借地権とは何か
借地権とは、建物を建てる目的にて土地の所有者から土地を借りることにより生まれる権利のことです。
借地権=自分の建物を建てる目的で土地を借りる場合にのみ生じる権利
借地権の種類には「賃借権」と「地上権」の二つがあり、「賃借権」の場合は、第三者に建物を売却する時は地主の承諾が必要となり、「地上権」の場合は自由に売却や転貸することが可能です。
ただし、「賃借権」と「地上権」の売却方法が異なることに注意も必要です。
【地上権】
①土地所有者の承諾なく、譲渡、売却が可能
②地所有者の承諾なく、増改築・建替えができる
③土地所有者に対し、地代の支払いが生じる。地代は土地所有者との定めによる
④土地所有者に土地に対し、地上権の登記の義務がある
※一般的に地主の承諾なく、賃借権を売却できるため、借地権の契約では地上権が設定されるケースは稀なケースとなります。
【賃借権】
①土地所有者の承諾がなければ貸借権の譲渡・売却はできない
②地代の支払いが生じる
③建物に抵当権設定をする場合には土地所有者の承諾が必要となる
④土地所有者に土地に対し、賃借権の登記の義務がない
※住宅ローンを借り入れる場合、金融機関より土地においても抵当権の設定を要求されます。ただし、賃借権による土地所有者は任意の承諾となるため、土地所有者の承諾が取れない場合、住宅ローンを借り入れることができない場合があります。
■ 借地権の種類
借地権の種類には、「借地法」(旧法)と、1992年8月1日に施行された「借地借家法」(新法)の大きく2つがあり、「旧法借地権」や「普通借地権」と呼ばれています。
借地権の契約を交わした日付が1992年の8月1日を境にその日より前か、その日以降かによって旧法と新法に分かれます。また、借地借家法では、借りられる期間を定めた定期借地権も設けられています。
旧法と新法の違いは次のとおりです。
■ 借地権の売却方法
借地権には賃借権と地上権の2つがあり、一般的に地主の承諾なく、売却できるため、借地権の契約では地上権が設定されるケースは稀なケースです。そのため、賃借権を中心にお伝えします。
賃借権を売却する場合、借地人は地主の承諾なしに借地権を第三者へ売却することができます。
ただし、賃借権は売却の場合、土地所有者に対し、「譲渡承諾料」を支払う必要があり、譲渡承諾料の相場は借地権価格の1割程度となります。
借地権を売却する方法として次の方法が挙げられます。
①土地所有者から底地を買い取る
②土地所有者に借地権を買い戻してもらう
③土地所有者に許可を得て、底地と借地権を共同にて売却する
④第三者(一般ユーザー)に売却する
⑤第三者(不動産会社)に売却する
⑥土地所有者と等価交換する
⑦借地権の売却に係る費用と税金
所有権の売却同様、借地権の売却にも税金や費用がかかります。借地権の不動産を売却する場合にかかる費用については次のとおりです。
■ 売買契約に伴う費用
①仲介手数料
仲介業者に支払う手数料 売買代金の3%+6万円と消費税および地方消費税
②印紙税
売買契約書に貼付する収入印紙にかかる税金
③登録免許税等
借地として賃借した土地上の建物を解体する場合、建物登記の抹消費用
※建物を借権者の費用負担にて解体する場合、その建物解体費用
※抵当権を設定している場合は、その抹消にかかる費用
④譲渡承諾料
売却する場合、土地所有者に対し、「譲渡承諾料」を支払う必要があります。譲渡承諾料の相場は売却価格(成約価格)の1割程度となります。
⑤譲渡所得税
不動産を売却する場合、売却時と購入時の費用の差額(利益)に対し、課税されることになります。
※所得税と住民税が課税されます。
「譲渡所得」は、不動産の売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いて計算します。
譲渡所得=譲渡価格ー(取得費+譲渡費用)
取得費とは、不動産の購入価格に仲介手数料などの諸費用を加えたものから、建物の減価償却費用を差し引いた金額です。
※借地権の場合、取得費には借地契約料や更新料、増改築の承諾料などがあり、毎月支払う地代は取得費にはなりません。
■譲渡所得税
所有期間:5年以内 区分:短期譲渡所得 税率:所得税30.63%+住民税9%=39.63%
所有期間:5年超 区分:長期譲渡所得 税率:所得税15.315%+住民税5%=20.315%
※上記税率には特別復興税が含まれています。
■3000万円特別控除
マイホーム(居住用財産)を売却したときの特例として、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円までが控除できます。
また、この特例は借地権を売却したときにも適用されます。
課税譲渡所得金額=不動産の売却代金-(取得費+譲渡費用)-3,000万円
つまり、譲渡所得が3,000万円以下の場合、納税額はゼロとなります。
特例の適用を受けるには確定申告が必要です。
■ 借地権割合
借地権割合は、相続税や贈与税の計算する場合、重要な指標となります。
借地権割合とは、土地に対する借地権の割合を数値で示したものです。
借地権は、一つの土地に土地所有者(底地権)と借地権者(借地権)の二人の権利が存在することになります。
この一つの土地の評価額に対して借地権がどの程度の割合を占めるかを示しており、この割合は国税庁によって地域ごとに定められているのが借地権割合となります。
この借地権割合について勘違いされている方が多いようですが、借地権割合は、あくまで税務上の借地権評価額を算出するための割合です。
実際に売買などするときの借地権の市場価格の算定は、借地権割合は当てはまりませんので注意してください。
■ まとめ
借地権の売却は、所有権の売却と違い、土地所有者(地主)との調整など複雑な手続きが必要であり、専門的な準備と正しい知識が求められます。
各種税金や費用の詳細も把握し、専門家と協力し、売却過程をスムーズに進めることが大切です。
また、不動産の譲渡において、印紙税、登録免許税、譲渡所得税、仲介手数料といった費用も発生しますので、これらを適切に把握しなければならないため、専門家へ相談のうえ、進めることをおススメします。
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■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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