どの家庭でも問題となる高齢者の財産管理。
高齢者の財産を本人以外が管理する方法として、「信託」と「成年後見制度」の2つの制度があります。
この2つの制度はどのような違いがあり、どのように使い分けるべきでしょうか。
ここでは信託と成年後見制度の違いや、検討すべき人などを比較表を簡単に掲載しておきますのでご確認ください。
1.要約
信託と後見制度はどちらも高齢者の財産を管理・保護できる方法です。
信託は柔軟で使い勝手が良いが、認知症に完全になってしまった後は難しい制度です。
後見制度は使い勝手が悪いが、認知症に完全になってしまった後でも利用可能な制度です。
2.目的
信託と成年後見制度では目的が大きく異なります。
信託の目的は、
子どもや孫など信頼できる家族に財産管理や処分、運用などを任せること。
後見制度の目的は、
判断能力が低下した人が生活上で不利益を受けないように、後見人が財産管理や身上監護の面でサポートすること。
3.財産管理者の権限
家族信託と成年後見では、財産管理者やその権限も異なります。
●受託者
①財産管理
②信託口座からの出入金・使用
③収益物件の管理・保守・修繕など
④信託財産を担保にした借入
⑤信託財産の売却などの処分
⑥株式など投資・運用
⑦財産の承継先の指定
⑧二次相続以降の承継先の指定
●法定後見人
①本人の預貯金の管理や解約
②年金の受け取り
③施設入所や退所などの手続き
④介護保険関係の手続き
⑤病院の入退院の手続き
⑥本人が行った法律行為の取り消し
●任意後見人
①本人の預貯金の管理や解約
②自宅の売却などの処分
③年金の受け取り
④施設の入所や退所などの手続き
⑤介護保険の手続き
⑥病院の入退院の手続き
4.相違点・比較表
信託とは、
信頼できる家族に財産を預けて管理処分してもらうための信託契約です。
生前の財産管理だけではなく死後の財産の受け継がせ方なども指定できます。
後見制度とは、
判断能力が低下して自分では適切に財産管理できなくなったときに、後見人に代わって財産管理方法や身上監護を決定してもらう制度です。
認知症にかかった後の財産管理や身上監護などを後見人にしてもらえます。
成年後見制度には
法定後見と任意後見があります。
法定後見は判断能力が低下した後に裁判所で後見人を選任してもらう制度、任意後見は被後見人が元気なうちに自分で後見人を選べる制度です。
比較表でまとめてみましたので家族信託と成年後見(法定後見・任意後見)の違いを確認してみてください。
5.どのような場合に利用するのか
信託を検討すべき人
①自由度の高い方法で財産管理を任せたい
②死後の相続方法についても指定したい
③事業承継に活用したい
④障害のある子どもがいる
⑤頼れる家族や身内がいない
後見制度を検討すべき人
①信頼できる任意後見人を選任したい
②本人の判断能力が低下してしまった
③頼れる家族や身内がいない
④親族間のトラブルを避けたい方
※信託・後見制度を件すべき人を記載しましたが、家族構成・目的等により選択が異なります。信託・後見制度の利用を検討される場合、必ず専門家へご相談ください。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。