
目次
- ■ はじめに
- ■ 解体撤去により刑事罰を受けることも
- ■ 解体撤去の必要が生じた場合の手順
- ■ なぜブロック塀の上に設置するのか
- ■ 土地家屋調査士の説明責任はあるのか
- ■不動産売買での問題点
- ■ まとめ
■ はじめに
不動産売買において隣接地との境界石が非常に大切なものであることは誰でも理解されているはずです。
境界石とは、隣接する土地や道路との境界線を示し、地面に埋め込まれた目印(標識)をいい、コンクリート、石材、金属プレートなどが使用され、不動産売買などに土地の範囲(筆界)を明示して、紛争やトラブルを未然に防ぐ重要な役割を持っています。
通常、この境界石は、地面に埋め込まれた目印(標識)というように地面に埋め込まれていますが、中にはブロック塀の上にプレートを設置したものもあります。
例えば、ブロック塀の上に設置されたプレート杭、建物解体と併せてブロック塀を取り壊した場合、どのようなことになるのでしょうか。
そこで、今回は、ブロック塀の上に設置したプレート杭を解体と併せて取り壊した場合の問題点等などを考えてみます。
■ 解体撤去により刑事罰を受けることも
ブロック塀の上のプレート杭を解体撤去した場合、境界不明(境界の認識不能)による法的トラブルに発展するリスクが生じます。
隣接する土地所有者に説明をせず、勝手に境界石を撤去した場合、刑法上の「境界損壊罪」に問われる可能性があり、再設置(復元)を行う場合、隣接地との立ち合いや土地家屋調査士へ依頼を行うため、数十万円単位の費用がかかる場合があります。
■ 解体撤去の必要が生じた場合の手順
解体撤去が必要となった場合、以下の手順で行い、またリスクが生じることになります。
1. 解体した場合に起こる主なリスク
①刑事罰(境界損壊罪)
正当な理由なく、または無断で境界標を損壊・移動・除去した場合、境界を認識することをできない内容にした場合、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる場合があります。
②高額な復元費用
鋲・プレートなどの境界石が撤去された後、再設置することになります。この再設定には法務局に備えつられている地積測量図などに基づき、境界の位置出しが必要となるため、土地家屋調査士への依頼が必要となり、地積測量図などの精度により、30万円以上の費用が発生しることもあります。
③隣地トラブル
無断での撤去は隣接地との信頼関係を損ない、その後の売買や建て替えに支障をきたす原因となります。
2.適切な対応手順
解体工事前に、以下の準備を行うことが一般的です。
①現状の記録(証拠の保存)
広範囲と近距離の両方から、他の構造物との距離がわかるように写真や動画で記録を残すことになります。
②隣地所有者への事前連絡
塀の解体と境界鋲の取り扱いについて、事前に隣接地の所有者へ説明のうえ了承を得ておく必要があります。
③土地家屋調査士との打ち合わせ
測量図等、境界を示す図面等があるか確認し、土地家屋調査士の指導のもと解体前に一時撤去・保管を行い、工事完了後に再度土地家屋調子により再設置するのが最も一般的です。
3. 復元費用の負担について
①解体業者の過失
解体業者が誤って壊した場合、解体業者が復元費用を負担するのが一般的です。
②自身の依頼での問題
計画的な解体に伴う再設置は、原則として依頼主(所有者)の負担となります。
■ なぜブロック塀の上に設置するのか
では、なぜ?ブロック塀の上にプレート杭を設置するのでしょうか。考えられていることは以下の2点です。
①物理的な制約
境界点の真上に既存のブロック塀が築造されており、地面を掘って境界石を設置することができない場合。併せてブロック塀を取り壊して地中に埋めるには多額の費用がかかるため、現実的な妥協案として塀の上に設置される場合があります。
②視認性の確保
地面がコンクリート敷や設置できるスペースが狭い場合、塀の上に置くことで境界の位置をひと目で確認できるようする場合があります。
ここで問題なのは、境界標をどのような場所に設置しなければならない、という法的規制の定めがないということです。よって、関係者が合意すれば塀の上でも有効な目印として認められることになります。
■ 土地家屋調査士の説明責任はあるのか
結論として、土地家屋調査士が境界石を設置する際、「将来的に塀を壊した際に境界がわからなくなるリスク」を説明する実務上の義務(説明責任)はあります。
ただし、これは「法律で定められた義務」ではなく、土地家屋調査士の善管注意義務に含まれると考えられています。
では、どのようなリスク説明が必要となるのか、またどのような場合に問題になるのかは以下のとおりです。
1.専門家としての説明義務
土地家屋調査士が測量し、境界標を設置する場合、以下のような説明を行うのが一般的です。
①設置場所の妥当性
本来であれば地中に杭を設置すべきところ構造物があるためプレートを設置する旨の説明。
②管理上の注意
プレートを設置したブロック塀を将来的に解体等した場合、設置したプレート杭が失われるため、解体等を行う場合事前に相談していただきたい旨のアドバイス。
③図面の重要性
万一、プレート杭が失われた場合測量により得られた座標データがあれば復元可能です。」というフォロー。
注意点
※将来的にトラブルが発生した場合、「そんなリスクは聞いていない」と訴えられる可能性があるため、一般的に土地家屋調査士は必ず説明しているはずです。
※万一、説明を受けずに設置されていた場合やリスクを通知されたいない場合という状況であれば、以下の点を確認する必要があります。
測量当時の測量図(地積測量図など)の備考欄に設置状況や注意書きがないか。
委託契約書に業務範囲などに管理上の助言が記載されていないか。
■ 不動産売買での問題点
1. 「境界明示義務」の不履行リスク
不動産売買契約書には「売主は買主に対し、引渡しまでに全ての境界標を現地で明示する」という義務が課されており、解体等により、境界石がない状態での不動産の引渡しを行うことにより、売主の契約違反(義務不履行)となります。
また、買主から引渡しの拒絶や、再設置費用の請求、さらには引渡し遅延による違約金請求が生じることになります。
2.隣接地所有者から承諾がとれない問題
塀を解体した後、再設置のため、隣接地所有者に立ち合いを求めたところ「前の位置は間違っていた」「勝手に位置をずらした」と主張され、復元への立ち会いや署名を拒否されることがあります。
境界石を再設置するには隣地の承諾が実務上不可欠である、隣接地所有者が承諾しない場合、その境界点は「境界未定(係争中)」となり、買主が住宅ローンを組めなくなる(担保評価がつかない)ということにもなりかねません。
3. 費用負担の問題
解体前の測量、解体後の再設置、隣接地への立ち会い費用の支払いは誰が行うのか、を曖昧なまま進行した場合、問題が生じます。売買契約締結前に土地家屋調査士への費用について、売主と買主の間でまとめたうえで売買契約書に記載する必要があります。
■ まとめ
ブロック塀を解体等し、プレート杭がなくなると所有する土地の確定が証明できなくなり、隣接地との紛争や買主のローン不承認(売買中止)を招く恐れがあります。
これらの問題を招く前に土地家屋調査士に依頼のうえ、解体しても復元できる「予備の印(引照点)」を打ち、隣地所有者と「後で正しく戻します」という書面(合意書)を交わすことが大切です。
また、「誰が費用を出し」「いつまでに復元するか」などを売買契約書に記載し、売主・買主・隣接地の三者が納得する段取りを組むことが大切です。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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