
■ 目次
- ■ はじめに
- ■ 鍵交換を行う必要性
- ■ 鍵交換の負担は誰が負うべきものなのか
- ■ 売主が鍵交換をしなければならない注意点
- ■ 分譲マンションの注意点
- ■ まとめ
■ はじめに
賃貸物件の募集図面を見ると、鍵交換の負担が貸主の負担の負担なのか、借主に負担なのか、記載されています。
しかし、売買の販売図面を見る限り、売主の負担なのか、買主の負担なのか、記載がありません。
そこで、今回は売買における鍵交換費用は、売主、買主どちらの負担となるのか、について考えてみます。
■ 鍵交換を行う必要性
不動産の売買、特に中古物件の売買での鍵交換を行う必要性は、防犯対策です。
売主が合鍵を所持している可能性、鍵を紛失している可能性、鍵の経年劣化による不具合も疑われるため鍵の交換は行う必要性があります。
また、鍵の交換を行うことにより、鍵について何らかの不安がある場合、不安を払拭して安心して暮らせることもあります。
これらの事情により、鍵の交換を行う必要性があります。
■ 鍵交換の負担は誰が負うべきものなのか
賃貸物件では、鍵校の負担は原則、貸主の負担となります。これは、国土交通省の定めたガイドラインで示されています。ただし、法的拘束力はなく、特約で借主負担となる場合が多数を占めています。
一方、不動産の売買の場合、賃貸とは契約の性質が異なるため、国土交通省の定めたガイドラインでの考え方を適用することはできません。
不動産の売買の場合、買主が自己の判断と責任において鍵交換を行うことが前提となります。
これは、売買契約において売主、買主の合意により鍵交換は、売主の負担とする、旨の特約が合意されていれば売主の負担となります。
しかし、この特約の合意を除き、売主が買主に対して設備などの不具合を補償する義務があります。
そのため、購入の時点で経年劣化などによる不具合が生じているのであれば、売主が費用を負担する必要があります。
そのため、買主が何ら支障のない鍵の引き渡しを受けるにもかかわらず「なにか、防犯性が気になる」など、買主の都合によるものは理由となりません。
■ 売主が鍵交換をしなければならない注意点
売買契約を締結する際、売主から買主に対し、鍵の紛失があり、合意を得ようとする場合が考えられます。
例えば、鍵は本来5本である、とした場合、そのうち1本を紛失してしまい4本を引き渡します。という場合です。
これは、本来は5本ある鍵が1本を紛失してしまい、4本しかない。
この4本を引き渡すことにより不動産売買の引渡しをすることが」前提となります。
ただし、この段階では買主の合意があるわけではありません。
買主がその意味を理解のうえ、同意をし、売買契約書での特約、または覚書きなどにより合意したのであればともかく、合意しない場合、売主は買主に対し、4本の鍵を引き渡したからと言って、不動産の引渡しをしたことにはなりません。
これは、不動産売買において「物件の引渡し」というのは、売主から買主に対し、本来あるはずの鍵を引き渡すことにより行うものであり、その鍵が不完全(1本紛失)した状態である場合、その債務の履行(物件の引渡し)は完全な履行とはいえず、債務不履行(不完全履行)となるのです。
ここで注意していただきたいのは、スペアーの鍵を売主の負担にて作成することを提案した場合、これも本来あるはずの鍵を引き渡すことにはなりません。
万一、買主が本来あるはずの鍵の引き渡しを求めた場合には、売主の負担において鍵交換を行い、新しい5本の鍵をもって引渡すというのが本来の鍵の引き渡しとなります。
■ 分譲マンションの注意点
分譲マンションの場合、管理規約により鍵交換する際の規約が定められている場合がありますの注意が必要です。
管理規約を読めば鍵交換についての定めが記載されていますが、規約に記載されていない場合もあります。
この場合には、必ず事前に管理会社や管理組合へ確認を行い、鍵交換をする必要があります。
管理規約にて「鍵を交換する場合には管理組合の許可が必要」と定められているにも関わらず、交換してしまった場合、入居前からトラブルに発展する場合も考えられます。
また、鍵交換の場合、管理組合を介して指定の業者に鍵交換をしなければならない場合もありますので注意が必要です。
■ まとめ
鍵の引き渡しについては不安が残るものだと思います。
本来5本あるのに紛失のため4本しかない、この場合には売主の責任となります。
しかし、不動産の売買では鍵の不安というものは払しょくできないものがあります。
買主は鍵の交換を行うことにより、鍵について何らかの不安がある場合、不安を払拭して安心して暮らせます。
不動産の売買では、鍵交換は絶対、という意識をもって購入前から予算に含めおくべきです。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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