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2.242025

不動産売買「違約金」とは何か、を考える

■ 目次

  • ■ はじめに
  • ■ 違約金とは何か
  • ■ 売買契約に記載されている条文
  • ■ 不動産売買における違約金の発生しない解除項目
  • ■ 買主の注意点
  • ■ まとめ

■ はじめに


売買契約には、手付解除の期日と違約金に関する取決めを契約書において定めておきます。

不動産の売買において契約書を確認すると、いくつかの「解除」についての条項が記載されています。

状況や条件によっては、違約金などが発生してしまうおそれがあり、不動産の売買契約は取引の金額が大きく、「違約金」について事前に知っておくことは意義のあることです。

そこで、今回は、不動産の売買契約においてどのような「違約金」が発生するのか、を考えてみます。

■ 違約金とは何か


違約金とは、売買契約において当事者の一方に債務不履行があった場合、その相手方に対し、支払うことをあらかじめ約束する金銭のことをいいます。

不動産売買では、売買代金の10%~20%の一定割合を違約金と定め違約金に関する取決めが行われます。また、重要事項説明書において違約金に関する定めが記載されます。

また、違約金の目的は、売買契約における当事者にその義務を取り決めたとおりに履行させることであり、違約金を取決めたうえで当事者には契約違反が発生することを抑えることです。

■ 売買契約に記載されている条文


売買契約書にはつぎのような条文が記載されているはずです。

(修補の遅滞を含む契約違反による解除・違約金)

第○○条 売主、買主は、第○○条第●項の契約不適合について売主が同条第●項の修補を遅滞した場合を含めて、その相手方が本契約にかかる債務の履行を遅滞したとき、その相手方に対し、相当の期間を定めて債務の履行を催告したうえで、その期間内に履行がないときは、本契約を解除することができます。

2 前項の規定による契約解除において、売主、買主は、その相手方に表記違約金(以下「違約金」という。)の支払いを請求することができます。ただし、本契約および社会通念に照らして相手方の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、違約金の請求はできません。なお、違約金に関し、現に生じた損害額の多寡を問わず、相手方に違約金の増減を請求することができません。

3 違約金の支払い、清算は次のとおりおこないます。

(1)売主が違約した場合、売主は、買主に対し、すみやかに受領済みの金員を無利息にて返還するとともに違約金を支払います。

(2)買主が違約した場合、違約金が支払い済みの金員を上回るときは、買主は、売主に対し、すみやかにその差額を支払い、支払い済みの金員が違約金を上回るときは、売主は、買主に対し、受領済みの金員から違約金相当額を控除して、すみやかに残額を無利息にて返還します。

そして民法での違約金の法的性質は次のような条文があります。

(賠償額の予定)

第420条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。

3 違約金は、賠償額の予定と推定する。

民法において違約金を「賠償額の予定」と推定すると定めています。

このことにより、不動産売買において違約金の条項は、特別な事情のない限り、「賠償額の予定」であると解釈されます。

「賠償額の予定」とは、当事者に債務不履行があった際に、相手方当事者が請求できる損害賠償額を予め取り決めしておくことであり、2項により、民法もこの金額を増減することはできず、実際に生じた損害の多寡(大小)にかかわらず、契約に定められた損害賠償の予定額を請求できることになります。

また、「損害の多寡にかかわらず」とは、売買契約において売買代金が3000万円、違約金の予定が20%と定められた場合、違約金は600万円となります。

実際の損害額が800万円であった場合でも、被害を被った側は相手方に対し、600万円の請求しかできない、と言うことです。

違約金の額を超えた損害の請求に関する特約

違約金を定めた条項が「賠償額の予定」と判断される場合、実際の損害が違約金の額を超える場合、原則として違約金の額までしか損害賠償の請求はできないということになります。

このような説明を行う場合、違約金を超えた損害が発生した場合においても損害額を請求できるよう求めてくる方も少なくありません。

このような場合、特約として

「売主、買主は第○○条(修補の遅滞を含む契約違反による解除・違約金)第2項の定めにかかわらず、売主、買主は、その相手方に違約金を超える損害が発生した場合、別途その損害を請求することができる。」

と定めておく必要があります。

■ 不動産売買における違約金の発生しない解除項目


不動産売買で解除できる項目は、主に以下の5項目があります。この5項目以外にも売主と買主の間にて取り決めした任意の解除規定を設ける場合もありますが、主なものは以下とのとおりです。

1.引渡し完了前の滅失・損傷による解除

2.契約不適合責任による解除

3.手付金放棄による解除

4.融資利用の特約に基づく解除

5.反社会的勢力の排除による解除

    1.引渡し前の滅失

    (引渡し完了前の滅失・損傷)

    第○○条 売主、買主は、本物件の引渡し完了前に天災地変、その他売主、買主いずれの責にも帰すことのできない事由により、本物件が滅失または損傷して、修補が不能、または修補に過大な費用を要し、本契約の履行が不可能となったとき、互いに書面により通知して、本契約を解除することができます。また、買主は、本契約が解除されるまでの間、売買代金の支払いを拒むことができます。

    2 本物件の引渡し完了前に、前項の事由によって本物件が損傷した場合であっても、修補することにより本契約の履行が可能であるときは、売主は、本物件を修補して買主に引渡します。

    3 第1項の規定により本契約が解除されたとき、売主は、買主に対し、受領済みの金員を無利息にてすみやかに返還します。

    2.契約不適合責任による解除

    (契約不適合による修補請求等)

    第○○条 売主は、買主に対し、引渡された本物件が品質に関して契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」という。)であるときは、引渡完了日から6カ月以内に通知を受けたものにかぎり、契約不適合責任を負います。

    2 売主が、買主に対し負う前項の契約不適合責任の内容は、修補にかぎるものとし、買主は、売主に対し、前項の契約不適合について、修補の請求以外に、本契約の無効、解除、売買代金の減額請求または損害賠償の請求をすることはできません。ただし、前項の土地の契約不適合により本契約を締結した目的が達せられないときは、買主は、売主に対し、本契約を解除することができます。

    3 買主は、売主に対し、本物件について第1項の契約不適合を発見したとき、すみやかに通知して、修補に急を要する場合を除いて立会う機会を与えなければなりません。

    4 売主は、買主に対し、本契約締結時に第1項の契約不適合の存在を知らなくても、本条の責任を負いますが、買主が本契約締結時に第1項の契約不適合の存在を知っていたときは、売主は本条の責任を負いません。

    3.手付金放棄による解除

    (手付解除)

    第●●条 売主、買主は、本契約を表記手付解除期日までであれば、互いに書面により通知して、解除することができます

    2 売主が前項により本契約を解除するときは、売主は、買主に対し、手付金等受領済みの金員および手付金と同額の金員を現実に提供しなければなりません。買主が前項により本契約を解除するときは、買主は、売主に対し、支払い済みの手付金の返還請求を放棄します。

    4.融資利用の特約に基づく解除

    (融資利用の特約)

    第○○条 買主は、売買代金に関して、表記融資金を利用するとき、本契約締結後すみやかにその融資の申込み手続をします。

    2 表記融資承認取得期日までに、前項の融資の全部または一部の金額につき承認が得られないとき、または否認されたとき、買主は、売主に対し、表記契約解除期日までであれば、本契約を解除することができます

    3 前項により本契約が解除されたとき、売主は、買主に対し、受領済みの金員を無利息にてすみやかに返還します。

    5.反社会的勢力の排除による解除

    (反社会的勢力の排除)

    第22条 売主、買主は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約します。

    • 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋もしくはこれらに準ずる者またはその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
    • 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと。
    • 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、本契約を締結するものでないこと。
    • 本物件の引渡しおよび売買代金全額の支払いのいずれもが終了するまでの間に、自らまたは第三者を利用して、本契約に関して次の行為をしないこと。

    ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為

    イ 偽計または威力を用いて相手方の業務を妨害し、または信用を毀損する行為 

    2 売主、買主の一方について、次の各号に該当した場合には、その相手方は、何らの催告を要せずして、本契約を解除することができます

    ア 前項(1)または(2)の確約に反する申告をしたことが判明した場合

    イ 前項(3)の確約に反し契約をしたことが判明した場合

    ウ 前項(4)の確約に反した行為をした場合

    3 買主は、売主に対し、自らまたは第三者をして本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供しないことを確約します。

    4 売主は、買主が前項に反した行為をした場合には、何らの催告を要せずして、本契約を解除することができます

    ・・・・・・・解除された者には違約金が発生します。5,6,7,8項は本コラム上では割愛します。

    ■ 買主の注意点


    違約金について考えてみました。最後に違約金と契約解除の関係については注意しなければならない部分があります。

    バブル崩壊後など売買代金5000万円の契約において、数か月先の決済までの間に売買価格が30%下落。などと言うことがあった場合、買主は、違約金が売買価格の20%と定められたとしても違約金の売買代金20%を支払っい売買契約を白紙にするメリットを選ぶ場合があります。

    しかし、ここで注意しなくてならないのは、売買契約において債務不履行における違約金の定めがある場合、買主は契約を解除することが可能である、と言うわけではない、と言うことです。

    先述した民法の420条の第2項には、賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。と規定されています。

    (賠償額の予定)

    第420条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

    2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。

    3 違約金は、賠償額の予定と推定する。

    第2項のとおり、契約の履行の請求を妨げるものではないため、このケースの場合、売買契約書に定められた決済日後に売主が買主に対し、残代金の支払いを請求した場合、買主には残代金の支払義務があることになります。

    結論として、「契約の履行」を請求するのか、売買契約の解除を行い「違約金」を請求するのかは、あくまで売主に選択権があるということです。

    ■ まとめ


    不動産売買契約において、事前に「違約金」について確認をしておくべきことは大切なことです。

    手付解除期日までであれば原則売買契約は基本的には解除することは可能です。ただし、鉄系徐期日後の場合、「違約」となってしまう場合があります。

    不動産の売買契約を締結する前に条文の内容は事前に売買契約書を取り寄せて確認を行い、不明な点はかならず確認するようにしていただくことをオススメします。。


    ■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

    私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

    1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
    東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
    コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

    ●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。

    ●ご売却をご検討の方は、こちらをご参照ください。

    ●賃貸をご検討の方は、こちらをご参照ください。

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