
■ 目次
- ■ はじめに
- ■ 売主のリスク
- ■ リスクを回避する方法
- ■ まとめ
■ はじめに
不動産の売買において、売買物件の所有権移転および引き渡しを買主が受ける前に、内装工事を行い、引き渡し時期以降にスムーズに入居したいと考えることは、無理からぬことです。
ただし、当然にこれは例外的であることは言うまでもありません。
また、売主にとってリスクが生じなければ問題ないのでは?ということもいうまでもありませんが、売主にリスクが生じないようにするには、どのような方法があるか。予想されるトラブルには、どのようなことが考えられるか。などを今回は考えてみます。
■ 売主のリスク
売買物件の所有権移転および引き渡しを買主が受ける前の内装工事は、売主のリスクになるため、トラブルを避けるには決済完了後に入居・工事を行うことが一般的です。
では、売主にはどのようなリスクがあるのでしょうか。考えられるリスクとリスク回避の方法については以下のとおりです。
売主にとってのリスク
・内装工事中の火災や建物の損傷など、不測の事態が発生した際のリスクを売主が負う可能性があります。
・所有権移転および引き渡し前に内装工事を行うことは、売買契約に違反する可能性があります。この場合、買主による契約解除や、それに基づく損害賠償責任が発生する可能性があります。
・買主が内装工事を理由に所有権移転および引き渡し前に売買物件を使用することは、占有権の移転が完了していないため、売主の許可なく行われると契約違反となります。
■ リスクを回避する方法
リスク回避として内装工事は、所有権移転および引き渡しを完了してから行うことが最も望まししい方法です。
そこで買主が所有権移転および引き渡し前に内装工事を行いたい場合、売主・買主は書面で合意を確認する必要があります。
所有権移転および引き渡し前に買主が内装工事を行う場合の特約
第1条 売主は、本契約書第〇条の定めにかかわらず、買主が令和〇年〇月〇日から令和〇
年〇月〇日までの間、本物件建物の一部(又は全部)の内(改)装工事(床舗装、畳張替、塗装等をすることを了承するものとします。
第2条 本契約書第〇条の定めにかかわらず、令和〇年〇月〇日以降の危険負担は買主が負うものとします。
第3条 本契約が本契約書第〇条、第〇条および第〇条により解除された場合、買主の責任と負担において原状に回復するものとし、また別途協議により、改装後の状態のままとする場合も価値が付加された部分について、買主は売主に対し、費用の請求は一切しないものとします。
第4条 原契約第11条(公租公課等の分担)に定める公租公課、管理費等および水道、電気料金等の負担については宛名名義の如何を問わず第1条の引渡日をもって区分し、その前日までの分を売主、その日以降の分を買主の負担とします。
■ まとめ
買主が住宅ローンを利用する場合、通常売買契約の締結前に金融機関が事前審査を行い、その後、売買契約締結後に正式な審査を行うことになります。
しかし、住宅ローンの本審査が下りたからと言って、それは絶対的なものではありません。
したがって、ローン解除なども想定し、特約を作成する必要があります。
買主の内装工事の着手は、所有権移転および引き渡し後となるのが基本であるため、慎重に取り扱う必要があることは言うまでもありません。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

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