賃貸経営は任せっきりにはしない
賃貸経営を行う場合、ハウスメーカー、金融機関、不動産業者などの任せっきり。というケースを多く見受けられます。
「経営」を行う場合、どのような業種でも、それが中小企業・大企業であろうと、市場を踏まえた商品やサービスを提供することが基本です。
賃貸経営も当然に「経営」です
他業種と同様、市場を意識することが基本になります。
市場が求める賃貸物件、そして入居者が集まる賃貸物件を計画することが大切です。また、賃貸物件が完成した後も変化を続ける市場に常に対応していく必要があります。
目的を考える
他業種と違い、賃貸経営の場合には、その経営者によって目的が違うという特徴があります。
相続税対策を主な目的とした土地活用なのか、収益を重視しての賃貸経営なのかなど、目的を明確にする必要があります。
しかし、どのような目的であっても目先の利回りだけに左右されずに、長期安定経営を目指すのが基本と言えます。
そのためにも市場調査でしっかりとニーズをつかみ、目的に合わせた事業規模で、長期的に満室経営を目指すことができる工夫を考えた経営を行うことが必要です。
賃貸経営を行う場合、その場所にどのような年齢層をターゲットにした賃貸物件を建築するか、ということは大切なことです。
今回のコラムでは、市場調査により人口の推移について、お伝えします。
まず、市場調査の前提として依頼を受けた地域や町がどのような人口の動きを示しているのか、をお伝えいたします。
藤沢市全体上記図1は、過去5年間における藤沢市全体の人口の動きを示したものです。
一般的に0歳~14歳までが、「年少人口」、15歳~64歳が、「生産年齢人口」、65歳以上が、「高齢人口」と呼ばれています、
この3分類のうち、少子高齢化が進んでいる状況を踏まえると、年少人口が減り、高齢人口が増え、年少人口が減ることにより生産年齢人口が徐々に減っていくという構図です。
この3分類を見ただけでは、何か事業を行おうとした場合、大雑把すぎて細かく分析をすることができません。
そこで、5歳階級別人口の推移を使用すると、人口の流れが掴め、どの階級の年代が増減しているのかがわかります。
この5歳階級別人口とは0歳~4歳、5歳~9歳というように年齢別に人口を集計しているものです。
ここでは根本祐二氏が2013年に出版された「豊かな地域」はどこが違う、より
0歳~4歳を乳幼児期、5歳~9歳を小学校期
10歳~14歳を小学校高学年・中学校期 15歳~19歳を高校生・大学生期
20歳~24歳を大学生・就職期 25歳~29歳を就職期
30歳~34歳・35歳~39歳・40歳~44歳子育て世代
45歳~49歳・50歳~54歳を中高年期
55歳~59歳・60歳~64歳を高年齢世代、65歳以上を高齢世代と呼びます。
この5歳階級別人口の集計方法ですが、
2022年と2017年。
2021年と2016年。
2020年と2015年。
2019年と2014年。
2018年と2013年
の各年の10月公表時点の資料を用意し、例として2022年と2017年の場合、2022年の5歳~9歳の人口から2017年の0歳~4歳の5歳下の年代の人口を差し引くのです。
ここで大切なのは同じ年代を差し引くのではなく、5年前の5歳下の年代を差し引くことが大切であり、この5年間に何人が移動してるのかを見るのです。
計算した結果が、5人プラスであれば、この地域に5人が増加であり、反対に5人マイナスであれば、この地域に5人が減少していることになります。
上記図1の藤沢市全体・5歳階級別年齢別人口を見ると、過去5年間同じ曲線で増加しているのがわかるはずです。
また、20歳~24歳の世代の増加がみられ、25歳~29歳の世代ではマイナスではありませんが、増加数が減っております。
これは、藤沢市には、いくつかの大学があるため、20歳~24歳の世代が増加し、卒業後、地元に戻る方、藤沢市以外に住居を移す方による増加数の減少が考えられます。
また、30歳~34歳。35歳~39歳の世代の増加数については建売住宅、新築マンションの供給数に応じた増加数であることがわかります。
このように、世代別の人口の推移を作成すると、その世代で増加・減少など特徴が現れます。そして、その原因を調査すると、必ずどのような理由で増減しているかなどが判明します 。
以前、調査した町では、ある年だけ一部の世代に大きな減少がみられました。理由を探っていくと、企業の社宅を取壊した事実が判明し、そのことにより人口が減少したということもありました。
下の図2は、依頼を受けた藤沢市のまる町の5歳階級別人口の推移を計算したものです。
地域先程の藤沢市全体の5歳階級別人口の推移と比べていかがでしょうか。
20歳~24歳の世代の増加がありますので大学が近くにあることが想定できます。そして25歳~29歳の世代でも増加数がほぼ横這いです。これは、大学を卒業しても大学中と同じアパートなどから就職先に勤務することが想定できます。
30歳~34歳、35歳~39歳、40歳~44歳の世代が藤沢市全体とはことなり、減少していることから、この世代の建売住宅、新築のマンションの供給数が少ない地域ということも想定できます。
これらにお仮説をひとつひとつ解決し、現状を伝えるのが市場分析です。
今回は、市場分析の初歩的な部分をお伝えしましたが、人口の推移を計算するだけでもある程度。この町がどのような町であるのかは理解できます。
この計算のほか、市町村によって異なるようですが、1歳毎の人口を掲載してくれている市町村もあります。(※藤沢市は公表してくれています)この1歳毎の人口の推移も計算すると5年毎とは違うものが見えてくるのです。
この人口の推移の計算を踏まえ、1世帯当たりの人口、5年毎に公表されている国勢調査より居住区分、勤務地などを調べていくと、この場所には、このようなタイプの収益物件が向いているなどが見えてきます。
もし、収益物件の建築が良い、ということになれば近隣のアパート、マンションの空室・設備などを調査していくことになります。
かなり手順を省きましたが市場調査とはこのようなものであり、簡単なものではありません。事業計画を依頼するのであれば任せっきりにはせず、最低限このような資料はもらうようにしてください。
参考までに1年毎の推移を計算しますと次の表のようになります。また違った角度から街を見ることができるのです。
この人口の推移から市場調査を終え、得た答えは、
27歳~32歳をターゲット(8割女性)にしたスタジオタイプのワンルームマンションです。
※間取・仕様・設備については近隣マンションと比較して充実した設備にあらたな仕様を加えたマンションとなりますが、収益性は十分とれている計画となりました。
市場分析(コラムグラフ)-1■記事の投稿者
飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。