
目次
- ■ はじめに
- ■ 3つの言葉の違い
- ■ 3つの言葉の意味
- ■ 無料の貸し借りは名前が変わる?
- ■ お部屋の貸し借りでよくあるトラブルと対策
- ■ まとめ
■ はじめに
新生活に向けてお部屋を探しているときや、会社の書類を見ているとき、ふと「あれ?」と思うことはありませんか?
「賃貸(ちんたい)」
「賃借(ちんしゃく)」
「賃貸借(ちんたいしゃく)」
どれも「ちんたい」という響きが入っていて、すごく似ていますよね。「全部同じような意味じゃないの?」と思ってしまいますが、実はこれら、誰の立場で話しているかによって使い分けられている、とっても大切な言葉たちなのです。
この違いを知っておくだけで、お部屋を借りるときの契約書がびっくりするほど読みやすくなりますし、ちょっとした大人の教養としても役に立ちます。
今回は、この似ている3つの言葉の違いについて、考えてみます。
■ 3つの言葉の違い
この3つの言葉の最大の違いは、「だれの視点(立場)で話しているか」、あるいは「契約そのものを指しているか」という点です。
簡単にまとめると、次のようになります。
賃貸(ちんたい):
お金をもらって「貸す」こと(賃貸人の視点)
賃借(ちんしゃく):
お金を払って「借りる」こと(賃借人の視点)
賃貸借(ちんたいしゃく):
「貸し借り」の約束(契約)そのもの
すべての言葉に入っている「賃(ちん)」という漢字は、賃料やレンタル料といった「お金」のことを表しています。つまり、どれも「お金が絡む貸し借り」の話なのですが、その中で「貸す人」「借りる人」「その間の約束」のどこに焦点を当てているかで、名前が変わるのです。
■ 3つの言葉の意味
それでは、それぞれの言葉がどんなときに使われるのか、もう少し詳しく見て考えてみます。
1.「賃貸(ちんたい)」:貸す人(賃貸人)から見た言葉
「賃貸」は、アパートやマンションの賃貸人など、「お金をもらって、物を相手に貸し出す側」の動きを表す言葉です。
普段よく耳にする「賃貸アパート」や「賃貸マンション」は、「所有者が、賃料をもらうために貸し出しているお部屋」という意味になります。
法律での呼び方:
部屋を貸す所有者のことを、法律の世界では「賃貸人(ちんたいにん)」と呼びます。
よくある使い方:
「この街は、一人暮らし向けの賃貸マンションが多いね。」
「賃貸人には、お部屋が壊れたときに直す義務があります。」
私たちが部屋を借りるとき、ついつい「今、部屋を賃貸しているんだ」と言ってしまいがちですが、自分が借りている側なら、実はこの使い方は少しだけ間違いになります。貸す側の表現が「賃貸」です。
2.「賃借(ちんしゃく)」:借りる人(賃借人)から見た言葉
一方の「賃借」は、お部屋を借りて住む入居者さんや、オフィスを借りる会社など、「お金を払って、物を相手から借りる側」を表す言葉です。
普段の会話では「レンタル」や「借りる」と言うことが多いので、ちょっと耳慣れない言葉かもしれませんね。でも、ビジネスや公的な手続きではよく使われます。
法律での呼び方:
お金を払って借りる人のことを、法律では「賃借人(ちんしゃくにん)」と呼びます。
よくある使い方:
「新しいオフィスとして、駅前のビルを賃借することにした。」
「賃借人は、お部屋を出るときに綺麗に戻す義務があります。」
会社の経理の書類などでも、コピー機を借りる費用などが「賃借料(ちんしゃくりょう)」という名前で書かれていたりします。自分が「お金を払って使わせてもらっている」という立場なら、使うべき言葉は「賃借」になります。
3.「賃貸借(ちんたいしゃく)」:貸し借りの「契約そのもの」
「賃貸」と「賃借」の意味が分かれば、この「賃貸借」はすでにお分かりと思います。この言葉は、文字通り「賃貸(貸す)」と「賃借(借りる)」の2つの漢字が合体してできています。
つまり、「賃貸人がお部屋を貸して、賃借人が賃料を支払う」という、2人の間で結ばれるお約束(契約)そのものを指します。
日本の法律(民法)でも、「一方が物を使わせてあげて、もう一方がそれにお金を払うと約束することで、この契約は成り立ちます」と決まっています。
よくある使い方:
「不動産屋さんで、部屋の賃貸借契約書にサインした。」
「2年間の賃貸借期間が終わるから、契約を更新しよう。」
部屋を借りるときに書く書類のタイトルが、ただの「賃貸契約書」ではなく、「建物賃貸借契約書」となっているのは、「貸す側と借りる側の、お互いの約束が詰まった書類ですよ」ということを正確に表すためなのです。
■ 無料の貸し借りは名前が変わる?
ここで、知っておくとちょっと自慢できる「大人の豆知識」をご紹介します。
これまでに紹介した3つの言葉は、すべて「賃(お金)」という漢字が入っている通り、お金を払うことが大前提でした。
では、「無料で貸し借りをする場合」は何と呼ぶのでしょうか?
実は法律では、お金が発生しない無料の貸し借りのことを、賃貸借とはハッキリ区別して「使用貸借(しようたいしゃく)」と呼びます。
例えばこんなケースです
賃貸借(有料):毎月家賃を払って、他人のマンションに住む。
使用貸借(無料):親が持っている土地や家に、子どもが「タダで使っていいよ」と言われて家賃なしで住む。友達から車や本をタダで借りる。
「お金を払うか・払わないか」で何が変わるのか
「無料で借りるんだからラッキー!」と思うかもしれませんが、法律の世界では、お金を払っているかどうかで「守られ方」が全然違います。
家賃を払う「賃貸借」の場合、借りている人は毎月ちゃんとお金を払っているので、法律でとても強く守られます。
賃貸人の気まぐれで「来月から出て行って!」と言われても、断ることができるのです。
しかし、タダで借りる「使用貸借」の場合、借りている人はお金を払っていません。
いわば「相手の優しさに甘えさせてもらっている状態」なので、有料のときほど強い権利はもらえません。
例えば、貸してくれていた親さんが亡くなって相続が発生したり、貸主から「どうしても返してほしい事情ができた」と言われたりした場合は、お部屋や土地を返さなければならないことが多くなります。
家族の間であっても、後からのトラブルを防ぐために「有料の賃貸借」なのか「無料の使用貸借」なのかをハッキリさせておくことは、とっても大切です。
■ お部屋の貸し借りでよくあるトラブルと対策
部屋の賃貸借は、何年もの長いお付き合いになることが多いので、ちょっとした勘違いからトラブルになってしまうこともあります。よくある代表的な3つのトラブルと、その対策は、次のとおりです。
1.「退去時のお金」のトラブル(原状回復)
部屋を引っ越すときに、「敷金が思ったより返ってこない!」「壁の修繕費をたくさん請求された!」というトラブルは、実はとても多いです。
なぜ起きるの?:
部屋の傷や汚れが、「普通に生活していて自然にできたもの(経年劣化)」なのか、「うっかりこぼしたジュースのシミなど、自分の不注意でできたもの」なのかの線引きが難しいからです。
対策は?:
部屋に引っ越してきた初日に、少しでも気になるキズや汚れを見つけたら、スマホで写真を撮って日付付きで保存しておきましょう。「最初からあったキズですよ」と証明できれば安心です。
2.「内緒のまた貸し」トラブル(無断転貸)
自分が借りているお部屋を、大家さんに内緒で他の人に貸してしまうことです。最近では、ネットを通じて旅行者に勝手に部屋を貸し出すようなケースが問題になっています。
なぜ起きるの?:
法律や契約書では、大家さんの許可なく勝手に部屋を別の人に貸すこと(転貸)は絶対にダメと決まっています。これがバレると、大家さんから「今すぐ出て行ってください」と言われても文句は言えません。
対策は?:
万一、「友達と同居することになった」「会社の一室をグループ会社と分けて使うことになった」という場合は、必ず事前に大家さんや管理会社に相談して、お許しをもらうようにしましょう。
3.「エアコンが壊れた!」トラブル(修繕義務)
「夏なのにエアコンが動かない!」「雨漏りがしてきた!」といった、お部屋の設備が壊れたときのトラブルです。
なぜ起きるの?:
困った入居者さんが、大家さんに連絡せず自分で勝手に修理業者を呼んでしまい、後から「修理代を払ってください」「いや、勝手にやられても払えません」と揉めてしまうケースがあります。
対策は?:
お部屋の設備が自然に壊れた場合、直す費用は基本的に大家さんが持ってくれます。壊れたらまずは自分で業者を探すのではなく、すぐに管理会社や大家さんに「エアコンが壊れちゃいました!」と連絡して、対応をお願いするのが一番の近道です。
■ まとめ
最後に、今回ご紹介した「ちんたい」にまつわる言葉たちを、分かりやすく表でおさらいしてみましょう。
| 言葉 | だれの視点? | 意味 |
| 賃貸(ちんたい) | 貸す人(賃貸人) | 賃料をもらって貸し出すこと |
| 賃借(ちんしゃく) | 借りる人(賃借人) | 賃料を払って借りること |
| 賃貸借(ちんたいしゃく) | 互いの関係 | 賃料を払って貸し借りするお約束(契約) |
| 使用貸借(しようたいしゃく) | 互いの関係 | 賃料をもらわない「無料」での貸し借り |
一見すると、漢字の順番が入れ替わっただけのややこしい言葉に見えますよね。
しかし、それぞれの言葉が「誰の立場を言っているのかな?」という視点を持つと、契約書を読んだときの中身のすんなり度合いがガラリと変わります。
「この文章は、賃貸人のことを言っているんだな」「ここは賃借人(自分)が気をつけなきゃいけないルールだな」と、仕組みが見えてくるはずです。
これからお部屋を借りる方も、お仕事で契約書に触れる方も、ぜひこの「言葉の視点」を思い出して、安心して素敵な新生活やビジネスを進めていってください。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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