
目次
- ■ はじめに
- ■ 共有名義とは
- ■ 共有のメリット・デメリット
- ■ 共有者が滞納した場合のリスク
- ■ 競売になった場合
- ■ 共有名義の解消方法
- ■ 共有にしても良い場合、悪い場合
- ■ まとめ
■ はじめに
相続において相続財産を相続人が分ける場合、揉めないように「共有」とされる場合があります。
「仲良く揉めないよう共有」と言われますが、共有にはメリットもありますが、デメリットはメリットよりも多くあります。
そこで、今回は、相続財産の共有とは何か、デメリットはどのようなものか、を考えてみます。
■ 共有名義とは
相続する不動産(土地や建物)の一つを、複数の人で出し合って所有している状態のことをいいます。
例えば配偶者がいない場合、亡くなれた母親名義の自宅を長男・次男・長女の3人で各1/3の持ち分を持つといったケースです。
共有を知るには仕組みを理解する必要がります。仕組みについては以下の3つのポイントがあります。
1.「場所」を分けるのではなく「割合」を持つことになる。
共有名義というのは自宅に例えるならば「長男は1階、次男は2階」というように物理的に場所を分けるわけではありません。
3人の共有であればその3人が「自宅全体の1/3という権利(持分)」を持つということです。
よって、その自宅を使用する場合にも住む部屋、場所使用方法、利用方法によって意見の食い違いが生じる場合があります。
2.「可能なこと」と「可能でないこと」
相続した持分の割合に応じてできることに制限が生じます。
単独でできることは、壊れた箇所の簡単な修理などの保存行為であり、賃貸として賃貸募集を行うこと、リフォームをする、賃貸借帰依役を解除するなどの管理行為は、過半数の合意が必要なことになります。
また、不動産全体の売却、建て替え、大規模な改修、抵当権の設定などの処分行為は、共有者全員の同意が必要となります 。
3.持分は単独で売買・譲渡ができる
共有者のうち一人の共有者は、持分(例えば1/3の権利)を他の共有者の許可なく売却、または贈与することができます。
ただし、「1/3のみの権利」を売却した場合、持ち分を取得した第三者とそのほかの共有者との間でトラブルとなることが生じることがあります。
■ 共有のメリット・デメリット
1.メリット
①公平な分割が可能
不動産を物理的に分ける(分筆)ことなく、持分(1/2、1/3など)で分けるため、相続人間で公平に分配できます。
②迅速な手続き
遺産分割協議がまとまっていない場合にも法定相続分で登記することは可能であり、一時的な争いを避けて手続きを完了することができます。
③節税効果(売却時)
居住用不動産を売却する場合、「3,000万円の特別控除」が各共有者に適用されるため、単独名義よりも全体の譲渡所得税を抑えられる可能性があります。
④固定資産税等の分散
固定資産税や維持費を共有者間で分担することになり、各共有者一人の経済的負担を軽減することができます。
2.デメリット
①売却や資産活用において承諾が必要
不動産全体の売却や建替え、大規模な修繕。そして賃貸により収益を確保することなど共有者全員の同意が必要であり、共有者の一人でも反対するとできなくなります。
②将来の権利関係の複雑化
共有者が亡くなると、その持分はその共有者の相続人へ相続され、共有者の数が多くなります。相続が発生するにつれ共有者が増え、面識のない者と共有状態になるなど、意思決定がさらに困難となります。
③管理トラブル
固定資産税の支払いや管理費用の支払いにおいて共有者間で揉める場合もあります。
④差押さえのリスク
共有者のうち一人が借金などにより、その共有者の持分が差し押さえられる問いた場合や、競売にかけられたりする場合があります。
■ 共有者が滞納した場合のリスク
固定資産税を滞納した場合、延滞金の発生から最終的には財産の差押さえへと流れていきます。
共有状態の場合、連帯納税義務があり、自分一人が支払っていても他の共有者が滞納した場合、リスクを負うことになります。
1.共有名義特有の注意点
共有名義の不動産には「連帯納税義務」があり、以下の点に注意が必要です。
共有者すべてに全額支払い義務が生じる
自分の持分が1/3としても、その持ち分割合を支払えばよいというわけではありません。各市区町村に対し、共有者全員が全額を支払う義務を負っていることになります。
また、共有者の一人がその共有者の支払い分を払わない場合、各市区町村は支払能力のある他の共有者に対し、全額支払いを請求を行い、その人の預金などを差し押さえたりすることが可能となります。
※固定資産税等の納税通知書は、代表者に通知が届くため、他の共有者が滞納の事実に気づかない、ということもあります。
2.対処法
万一、支払いが困難な場合、あるいは他の共有者が支払ってくれない場合にはそのまま放置せず、早急に各市区町村の税務窓口へ相談することが大切となります。
支払いについて分納(分割払い)などの相談に乗ってもらえるほか、立て替えて支払った場合、後から他の共有者に対して自分の負担分を請求する「求償権」を行使することも可能です。
■ 競売になった場合
共有者のうち特定の共有持分に抵当権が設定され、その抵当権が競売にかけられた場合、不動産全体ではなくその持分のみが競売の対象となります。
競売によって、投資家や専門の不動産業者が落札します。その結果、見ず知らずの他人が不動産の共有者となります。
競売の落札者は持分比率に応じた権利を得るため、敷地内への出入りが可能になります。※法的に認められた権利であり、妨害などを行った場合トラブルの元となります。
1.発生する主なリスク
落札者以外の強者がその不動産に居住している場合、落札者から持分に応じた「家賃相当額」の支払いを請求される場合があります。
また、落札者は不動産全体を単独所有が目的であるため、そのほかの共有者の持分を低価で買い取りを提案したり、反対に落札者の持ち分を高く買い取ってほしい旨の交渉を仕掛けてくることが一般的です。
※交渉が決裂した場合、落札者は裁判所に「共有状態の解消(共有物分割請求訴訟)」を申し立てることができます。
※建物は物理的に分割ができないため、裁判所の判決により、不動産全体が競売にかけられるリスクがあります。
2. 他の共有者の対抗策
競売にかけられた場合、共有者は競売でその持分を落札することが可能です。
資金があれば、共有者自身が落札することにより、第三者の介入を防ぎ、不動産を単独所有にまとめられます。
※競売が実行される前に差押さえられた共有者や債権者と交渉し、他の共有者がその持分を適正価格で買取ることで競売を取り下げてもらう方法もあります。
■ 共有名義の解消方法
共有名義を解消する方法は、大きく分けて2種類の方法があります。まずは、話し合い(協議)で決める方法。そして裁判手続きにより共有物分割の方法です。
共有名義にしてしまった以上、将来的な問題を防ぐため、以下のいずれかの方法で共有を解消されることが必要です。
1.話し合いによる解消(協議)
共有者全員が合意できる場合、以下の4つの手法が一般的です。
①現物分割
土地などを物理的に線引きして切り分ける方法です。建物がある場合は困難です。
②代償分割(持分の譲渡・売買)
一人が他の共有者の持分を買い取り、単独名義にする方法です。もっとも円満な解決策ですが、買い取るための資金が必要です。
③換価分割
不動産全体を売却し、その現金を等分する方法です。誰も住む予定がない場合に有効です。
④共有持分の放棄
自分の持分を無償で他の共有者に贈与する方法です。ただし、受けた側は、贈与税がかかる場合があるため、事前に贈与税の対象となるかは確認が必要です。
2. 裁判による解消(共有物分割請求)
話し合いがまとまらない場合、裁判所に「共有物分割訴訟」を起こすことができます。共有者の一人からいつでも請求可能です。
判決の種類
基本的には「現物分割」か「代償分割(全面的価額賠償)」が検討されます。しかし、不動産自体の問題や解決の目途が立たない場合など、裁判所が競売を命じることもあります。
※競売の場合、市場価格より低価となるため、各共有者の取得金額が低くなる場合があります。
3. 持分のみの売却
他の共有者の同意が得られない場合でも、自分の持分のみを第三者(専門の不動産業者など)に売却することは法的に可能です。
ただし、買い手は「訳あり物件」として扱うため、価格は相場より大幅に安くなります。また、残された共有者と業者の間でトラブルになるリスクが非常に高い最終手段です。
■ 共有にしても良い場合、悪い場合
相続した不動産を「共有にしても良い場合」と「共有にしては悪い場合」があり、その分かれ目はその不動産の出口(将来どうするか)、を明確にしていく必要があります。
1.共有にしても良い場合
①将来的に「不動産をなくす(現金化する)」ことが決まっている場合、一時的な共有は検討することは問題ありません。
②例えば、母と長男の共有で、将来母が亡くなった場合、長男が相続することが確実であればリスクは限定的となります。
③明確な活用事業を行う(事業用)
共有者全員により収益物件として賃貸経営などを行う場合です。
ただし、この場合も管理規約などをしっかり決めておく必要があります。
2.共有にしてはいけない場合
「誰かが住み続ける」、あるいは「将来どうするか決まっていない」なら、共有は避けるべきです。
①居住している共有者と居住していない共有者は、トラブルになります。
居住していない共有者にとっては、何ら利用していないにもかかわらず税金や責任だけ負う羽目になり、居住している共有者とは真逆の考えが生じるからです。
②売却を行う場合、共有者全員の同意が必要となります。共有者のうち一人でも連絡が取れなかったり、感情的に反対したりする人が出た場合、売却ができない不動産となります。
③とりあえず共有にしておこう、とうことが一番危険です。
共有者の死亡により、亡くなられた共有者の相続人に相続されるため、相続が発生しるたびに共有者が増え、将来的には面識もない人との共有という状態になり、処分が不可能になります。
■ まとめ
共有名義の場合、共有者全員の承諾がなければ不動産全体の売却や建替えはできません。
一方、共有者のうち一人が固定資産税を滞納した場合、ほかの共有者が支払い行わなければならない事態になる場合もあり、さらに預金が差し押さえられる場合もあります。
相続では、誰か一人の単独名義にする、または売却を行い現金にて分割するかが基本となります。
相続における共有は、公平という建前ではよい分け方ですが、将来的に売れない・貸せない・揉める、という大きな火種を残す持ち方と言えるのです。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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