
目次
- ■ はじめに
- ■ 運営費とは何か
- ■ 運営費の必要性
- ■ デッドクロスへの備え
- ■ デッドクロスへの対応
- ■ デッドクロスをコントロールする
- ■ まとめ
■ はじめに
投資の中でもアパート投資は人気がありますが、リスクをしっかり確認して行うことが大切です。
空室リスク、家賃下落。そして運営費、金利変動、デッドクロスが主なリスクです。
また、人口減少エリアの物件や、利回りのみ重視し、購入した物件は失敗しやすく注意が必要です。
特に見落としがちなのが、「運営費」と「デッドクロス」です。この「運営費」と「デッドクロス」は、賃貸経営のキャッシュフローを左右する両輪として、非常に密接な手元の現金を奪い合う関係にあります。
そこで、今回は、実質利回りを見るうえでの運営費としてどのようなものが必要となり、減価償却後の残存する融資との間に生じるデッドクロスについて考えてみます。
■ 運営費とは何か
アパート・マンションの賃貸運営費は、実質利回りを左右する重要な要素で、年間家賃収入の15〜20%程度(一棟の場合)が目安です。
主な経費には、管理会社への委託料、固定資産税・都市計画税、修繕費、火災保険料、広告宣伝費、融資の利息、通信費などがあります。
賃貸運営費・ランニングコスト一覧
賃貸経営で必要となる主な経費は以下の通りです。
①管理委託料: 管理会社に支払う費用(目安:賃料の5〜10%程度)。
②租税公課: 固定資産税、都市計画税(毎年発生、必ず計上)。
③修繕費: 共用部の電球交換、故障修理、退去時のリフォーム・原状回復費。
④エレベーター点検: 月額2万〜3.5万円程度(設置されている場合)。
⑤受水槽(貯水槽)清掃・水質検査: 年1回。1.6万〜2万円程度(設置されている場合)。
⑥建築設備定期検査: 年1回、建物の設備(換気や非常照明など)の安全確認。4万〜6万円程度。
⑦共用部清掃・植栽管理: 月数千円〜数万円。定期的な清掃や、庭木がある場合の剪定費用。
⑧損害保険料: 火災保険、地震保険、施設賠償責任保険など。
⑨広告宣伝費: 客付け(入居者募集)の際に不動産会社へ支払う仲介手数料(一般的に賃料の1〜2ヶ月分)。
⑩管理費・共用費: 共用部分の水道光熱費、エントランスの清掃費用。
⑪借入金利息: 融資の返済のうち「利息」部分(元本は経費にならない)。
⑫通信費・接待交際費: 管理会社との電話代や情報収集費、管理会社との打ち合わせ費。
⑬減価償却費: 建物や設備の価値減少分を複数年で分割して計上する経費。
⑩消防設備点検:法的義務であり、建物の規模や設置されている設備によって点検作業が異なる
【運営費の目安と内訳】
全体: 年間家賃収入の15〜20%程度が目安。
管理会社への委託料: 家賃の3〜5%程度、あるいは賃料+共益費の5〜10%が相場。
修繕費: 建物の築年数が経つほど増大するため、長期的な計画が必要。
■ 運営費の必要性
運営費は単なる「支出」ではなく、「収益を安定させ、資産を守るための舵」といえます。
賃貸経営における運営費の重要性は以下の3点に集約されます。
①「支出を除いた利益」を決める指標
賃料収入を得ていたとしても、支出である運営費が多ければ手元に残る現金(キャッシュフロー)は減ることになるため、賃貸経営の成功は売上ではなく、運営費を差し引いた「純利益」で決まることになります。
②物件の「健康状態」を保つ投資
清掃や修繕などの運営費を適切にかけることは、入居者の満足度を高め、空室リスクや今後予想される修繕を防ぐことにつながります。
③戦略的な「節税」の手段
正当な運営費はすべて「経費」となるため、課税対象となる所得を抑え、手残り額を増やすために欠かせない要素です。
■ デッドクロスへの備え
賃貸運営におけるデッドクロスとは、ローンの「元金返済額」が「減価償却費」を上回ってしまう状態を指します。
賃貸運営において新築当初は「減価償却費」が大きく節税になります。しかし建築年数が経つにつれ経費が減り、逆に税金が増える「デッドクロス」という現象が起こります。
原因としては、「経費として認められる金額」が「実際の支出」を下回ってしまうことにあります。ポイントは以下の2点です。
①減価償却費の減少
新築時は建物の価値を毎年減価償却費として計上することが可能です。しかし、年数が経つと減価償却費が減っていきます(※設備部分は15年程)
②利息の減少
ローン返済のうち、経費にできるのは「利息」のみです。
「元本」の返済は経費として認められません。ローンの返済が年数が経過するにつれ、利息の割合が減り、元本返済の割合が増えるためです。
■ デッドクロスへの対応
①繰り上げ返済
余裕がある時に元本を減らし、将来の返済額を抑える。
②借り換え
ローンの期間を延ばしたり、金利を下げて毎月の支出を減らす。
③修繕を行う
適切な時期に修繕を行い、経費を作る(ただしキャッシュアウトも伴います)。
④売却の検討
デッドクロスが来る前に物件を売却し、次の物件へ買い替える。
借入期間」と「減価償却期間」のバランスをどう組むかが、賃貸経営のキャッシュフローを安定させる最大の鍵となります。
理想的なのは、「減価償却期間 ≧ 借入期間」という状態です。しかし、実際には建物の構造によって法定耐用年数(償却期間)が決まっているため、そうはいかないケースが多いです。
構造別の法定耐用年数(償却期間)は、木造: 22年、重量鉄骨造: 34年、鉄筋コンクリート造(RC): 47年と定められており、注意すべき例として例えば、「木造アパート(償却22年)」を「30年ローン」で組んだ場合を考えてみます。
1年目〜22年目は、減価償却費が計上できるため、節税効果も手伝って手元残金も発生します。
23年目〜30年目は、減価償却がゼロとなるため、ローンの返済分が残ります。
この23年目〜30年目の8年間が「デッドクロス」の注意期間となり、帳簿上の利益に対して税金がかかり、併せてローン返済をしなくてはならない状況となります。
■ デッドクロスをコントロールする
デッドクロスは「事前のシミュレーション」と「出口戦略」でコントロール可能です。
中古アパートのデッドクロスをコントロールするには、「減価償却費を増やす」か「ローン返済(元金)を減らす」かの2つの方向で調整を行う方法が最善とされています。
中古物件は耐用年数が短く、デッドクロスが早く来やすいため、以下の戦略が有効です。
1.減価償却費を「増やす」コントロール
①追加購入で減価償却費を補充する
新たに減価償却費を大きく取れる物件を追加購入し、ポートフォリオ全体の損益を合算(損益通算)して、現在の物件で不足した経費を補う方法。
②資本的支出による新たな償却
大規模修繕などの「資本的支出」を行うことで、その費用を新たな減価償却資産として数年にわたって計上し、経費を積み増す方法。
※資本的支出(資産価値を向上させるもの)の具体例
一棟物件の運営で、資本的支出とみなされやすい主な項目は以下の通りです。
①避難階段の設置・取り替え
鉄製の階段をアルミ製に変えるなど、材質を向上させた場合。
②用途変更を伴う模様替え
店舗から居室への改装など。
③間取りの変更
3DKを2LDKにリノベーションするなど、建物の価値を大きく高める工事。
④設備のアップグレード
単なる交換ではなく、オートロックや防犯カメラを新設、インターネット無料設備の導入、従来のエアコンを、より高性能な最新モデル(省エネ性能が格段に高いもの)へ一斉交換。
⑤屋上・外壁の防水・塗装(一部)
単なる補修を超えて、耐久性が著しく向上する塗料や工法を用いた場合。
「修繕費(一括経費)」か「資本的支出」かの判断基準
税務上、以下のいずれかに当てはまると「資本的支出」と判定される可能性が高いです。
①価値の増加
その工事によって建物の価値が明らかに高まった。
②使用可能期間の延長
建物の寿命が延びた。
③金額の大きさ
一般的に、一つの修理・改良が60万円以上、または取得価格の10%以上になる場合(例外もあります)。
2. ローン返済(元金)を「減らす」
①繰り上げ返済
手元のキャッシュで元金を減らし、毎月の返済額を圧縮します。これにより、デッドクロスの直接の原因である「元金返済額」を減らすことができます。
②ローンの借り換え・期間延長
他行への借り換えを行い、返済期間を延ばす(リスケジュール)ことで、月々の元金返済額を抑え、デッドクロスの発生を先送りにします。
3.出口戦略による回避
①所有期間5年超での売却
デッドクロスが本格化する前に売却するのが定石です。
ただし、個人所有の場合は「譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年超」(長期譲渡所得)にならないと、売却益への税率が約40%(短期)と高くなるため、このタイミングを待って売却するのが効率的です。
②法人化での運用
個人に比べ、法人であれば売却時の短期・長期の区分がなく、他の事業経費との相殺も柔軟になるため、コントロールがしやすくなります。
※中古アパートの注意点
中古の木造アパートなどは、法定耐用年数を超えていると償却期間が最短4年になる場合があります。この場合、5年目の長期譲渡タイミングを待つ間にデッドクロスが1年間発生するため、その期間を耐えるための納税資金の積み上げも重要なコントロールの一つです。
■ まとめ
運営費とデッドクロスの関係は「手元の現金を奪い合う関係」です。
デッドクロスによって、帳簿上の利益が増え、「税金」という支出が急増します。
運営費は、賃貸経営を続けるための「実費」としての支出です。
この2つが重なると、「収入はあるのに、税金と経費を払ったら手元に現金が残らない」という非常に危険な状態(黒字倒産リスク)に陥ります。
つまり、デッドクロスが来る時期には、いかに運営費をコントロールして手元の現金を確保しておくかが、経営継続のカギとなります。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

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