目次
- ■ はじめに
- ■ 相続税対策になぜ?アパート建築なのか
- ■ アパート建築のメリット
- ■ 相続税対策でのアパート建築注意点
- ■ まとめ
■ はじめに
アパート建築をすれば相続税対策になる、と言うことは耳にされると思います。
確かにアパート建築は相続税対策になることは間違いではありません。
では、アパート建築がどのようにして相続税対策となるのか、ご存じでしょうか。
そこで今回は、アパート建築が相続税対策にどうしてなるのか、または注意しなければならないことなどついて考えていきます。
■ 相続税対策になぜ?アパート建築なのか
相続税対策にはアパートを建築することを勧められるケースが多くあります。では、なぜ相続税対策になるのか、簡単にいうと、メリットがあるからです。
現金や預貯金は、相続などで分けることは簡単です。
相続の際には遺産分割や納税資金用に、一定の額の現金の用意が必要となります。
しかし、相続税に目を向けた場合、現金・預貯金だけとなると、評価減や特例等を利用し、相続税を安くすることが出来ません。
一方、現金・預貯金以外に不動産を所有している場合、特例や評価減を適用できる場合があり、節税効果が見込むことが出来るのです。
その節税対策の1つがアパートの建築なのです。
■ アパート建築のメリット
アパートの建築が、どのように評価減され、メリットがあるのかをまとめてみました。
1. 土地の評価減
相続税額の計算において土地の評価を行う場合、土地の大きさや形、高低差、利用状況などの個別事情により、国税庁が定めた基準のもとづき評価額を下げることができます。
土地にアパートが建築された場合、その土地はアパート建築後、所有が自由に使用できず制限を受けるため、アパートが建築された場合には、「貸家建付地」という評価が適用されます。
土地上に自宅や月極駐車場など制限を受けないものは「自用地」として評価され、「貸家建付地」などの評価減も適用を受ける土地とは大きく評価額を下げることができます。
※借地権割合に借家権割合を乗じた金額分差し引くことができ、普通住宅地でおおよそ20%控除されます。
2. 建物の評価減
アパートは貸家なので、相続税における評価額は、借家権(一律30%)の評価額を差し引いて計算します。そのため「固定資産税評価額」からさらに3割ほど安くなります。
3. 控除の増加
アパートを建築する場合、自宅を建築する場合など金融機関から借入れを行うと、その借入金を債務として控除することができます。
※貸家建付地の評価額は以下の算式となります。
貸家建付地の評価額=相続税評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)となります。
例えば、相続税評価額が1億円、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合80%の場合
1億円 ×(1-0.6×0.3×0.8)= 8560万円となり、相続税評価額1億円の場合より1440万円評価額を下げることが可能と言うことです。
※「借金をすると相続税対策になる」と言われます。これは、相続税額を計算するときに遺産の総額から借金など負債を控除できるため、「借金をすると相続税対策になる」と言われる所以です。
しかし、相続税対策になるからといって借金だけをすれば、その借金分の現金が増えるだけで相続税の対策にはなりません。
これは、現金を1億円所有しており、1億円の借金をした場合、現金1億円を所有していることには変わらないからです。
【参考】
■ 個別的要因
相続税額を計算するにあたり、評価する土地ごとに個別要因に違いが生じています。そのため、大きく分けて土地の形状、土地の立地条件、土地に付着する権利の3つに分けられます。また、その3つにおいても細かく個別要因に応じて減額してくれる仕組みがあります。個別要因は、以下の9項目ほどとなります。
1.土地の形状
2.前面の道路幅が4mに満たない宅地
3.道路に面していない宅地
4.騒音のある宅地
5.墓地などの嫌悪施設に隣接する宅地
6.崖のある宅地
7.借地権
8.貸宅地
9.貸家建付地
など
■ 6つの控除制度
相続税額を計算するにあたり、相続人の条件に応じて減額してくれる控除の仕組みがあります。控除制度は以下の6項目となります。
1.基礎控除
2.配偶者の税額軽減
3.未成年者の税額控除
4.障害者の税額控除
5.相次相続控除
6.贈与税額控除
■ 2つの特例
相続税額を計算するにあたり、利用できる主な特例は以下の2つとなります。
1.小規模宅地等の特例
2.納税猶予の特例(農地等の納税猶予制度)
※控除制度と特例の詳細については今後コラムでご紹介してまいります。
■ 相続税対策でのアパート建築注意点
アパートの建築を行い、相続税対策を行う場合に注意しなければならないこともあります。
1.アパートの入居率が下がると、賃貸割合が下がり、評価減の効果も下がります。
2.アパート建築は投資目的であることは否定できません、そのため、入居予測から資金収支を計算したうえで損失のないアパート運営が可能なのか、判定しなければなりません。
3.アパート運営にすべて現金を使って行うことが可能であれば別ですが、大半の方は借入金を行い、アパート建築を行うはずであり、金利の上昇を考えた計画が必要です。
また、建築後のメンテナンス等の必要となる修繕計画を立てる必要もあります。これらの負担にも耐えられる計画が大切です。
■ まとめ
このような「貸家建付地」などを使うことで、相続税の負担を減らすことができます。
しかし、アパート建築は相続税の節税だけが目的ではありません。当然、運営自体の収支などの事業計画を定めていく必要があります。
その他、相続が発生後、相続人がアパートを相続してからは、相続人に安定的な収入が供給されなければ意味がありません。
相続対策にアパート建築を否定することはできませんが、専門家とキチンと相談を行い実施していただくことをオススメします。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)のパイオニア(先駆者)を目指しています。
1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。
●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。
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