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1.82024

不動産売買の注意点(手付金の意義と種類)

目次

  • ■ 手付金の趣旨
  • ■ 手付金の性質と効力
  • ■ 手付解除と損害賠償の違い
  • ■ 手付解除の期日
  • ■ 手付金の額
  • ■ まとめ

■ 不動産売買の注意点(不動産取引における手付金の意義と種類)


不動産の売買契約を締結する場合、手付金が必要になります。

しかし、多くの場合、手付金が必要と理解していても手付金がどのようなものかわからないという人も多いのではないでしょうか。

手付金とは不動産売買契約において大切な意味を持つものです。

■ 手付金の趣旨


まず、売買契約書には以下の条文が記載されているはずです。

(手付金)

第●条 買主は、売主に対し、表記手付金(以下「手付金」という。)を本契約締結と同時に支払います。

  2 売主、買主は、手付金を表記残代金(以下「残代金」という。)支払いのときに、売買代金の一部に無利息にて充当します。

(売買代金の支払いの時期、方法等)

第●条 買主は、売主に対し、売買代金として、表記内金(以下「内金」という。)、残代金を表記支払日までに現金または預金小切手をもって支払います。

買主は、売主に対し、手付金➡内金➡残代金という順に支払っていきます。

ところが、法的に内金と残代金は、売買代金の一部であることは、明確になっていますが、手付金は、法的にいつかの効力をもつ手付契約にもとづいて支払われる金銭であり、売買代金の一部とは考えられていないのです。

※売買契約は口頭により成立する「諾成契約」。手付契約は手付の交付によって効力が生ずる契約ですので、法的には「要物契約」に該当します。

※要物契約=当事者の合意のほか、物の引き渡しなどの給付があって初めて成立する契約。

そのため、上記手付金の条文の第2項に「売主、買主は、手付金を表記残代金(以下「残代金」という。)支払いのときに、売買代金の一部に無利息にて充当します。」という条文が必要になってきます。

※売買契約締結時に支払われた金銭の名目が申込金・内金であろうと売主・買主が手付金と同様とみなしたとき、手付と解される場合があります。このことを防ぐため、売微契約書では手付金・内金・残代金と区別しているのです。

■ 手付金の性質と効力


手付金を交付することに対し、次の4つの効果があると言われています。

●契約が成立したことの証として交付される証約手付としての手付金

●売主・買主が契約の履行に着手するまでの間はお互いに解除権を留保しており、買主が解除したときは、買主の手付金の放棄。売主が解除したときは、手付金の倍返しで清算するという趣旨で交付される解約手付としての手付金

●債務不履行(違約)があったときには違約罰として損害賠償とは別に没収されるという趣旨で交付される違約手付としての手付金

●前項の債務不履行が生じたときに損害賠償として手付の没収。手付倍額を支払う趣旨で交付される損害賠償の予定を兼ねる手付金

民法では、解約手付を原則としており。売買契約書にも以下の条文が記載されているはずです。

(手付解除)

第●条

売主、買主は、本契約を表記手付解除期日までであれば、互いに書面により通知して、解除することができます。

●手付解除する場合

民法・売買契約書において解約手付が原則となる手付金ですが、売買契約を締結後に売主・買主の一方が解約手付によって留保された解除権を行使して、実際に契約を撤回したいと考えるケースになったとき、売主・買主はどのような対応をすればよいでしょうか。

●買主からの手付解除

買主が手付解除を行う場合、買主は、売買契約締結の際に売主に支払った手付金を放棄することで契約を解除することができます。

●売主からの手付解除

売主が手付解除を行う場合、売主は、手付金を放棄のうえ、手付金と同額を買主に支払うことによって、手付解除ができるとされています。

■ 手付解除と損害賠償の違い


手付解除は、債務不履行を理由とする解除ではないため、債務不履行解除の場合のような損害賠償請求はできないことになります。

解約手付の交付があったとき、相手方に債務不履行があるときには、債務不履行を理由とした契約解除やこれにともなう損害賠償請求は可能となります。

■ 手付解除の期日


売買契約において解約手付が交付されたとき、いつまでも契約解除ができるというわけではありません。手付解除には、民法や売買契約書により一定の行使期限が定められています。

民法では、解約手付が交付された場合の売買契約の手付解除は、当事者の一方が「履行の着手」をするまでは可能であるとしています。

では、「契約の履行に着手する」とは、どのような意味なのでしょうか。

判例では、「客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし、または、履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたこと」が契約の履行の着手にあたるとされています。

具体例を挙げると、次のような行為と考えられます。

売主による建物を取り壊した行為

売主による売買物件の境界確定作業

売主が売買物件の抵当権を抹消した行為

農地売買において、農地法の許可申請を申請した行為

ただし、不動産売買では手付解除の期日を定めてから契約を締結することになります。

■ 手付金の額


個人間売買においては、手付金の額に制限はありません。しかし、手付金が高額となれば買主が手付金を準備することが難しく、低額となれば解約時や違約が発生した場合、簡単に契約解除しやすくなり、売買契約の効力を弱める結果になってしまうのです。

実務的に手付金の額は、売買代金の1割ほどとなる場合が多いようです。

売主が宅地建物取引業者の場合、売買契約の手付金は「売買代金の20%を超えてはならない」と宅地建物取引業法で定められています。たとえば、買主が売主に対し、売買代金の30%を売買契約時に支払った場合、20%を超える部分は前金として扱われます。

■ まとめ


不動産の売買では契約締結後に予期せぬ事情により契約が解除となることもあります。

そのような事態になってから手付金の扱いが分からないと困ることになります。

売買契約締結前に手付金の扱い等をチェックしてから売買契約の締結に臨むよういていただきたいと考えます。


■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠

私は、予想を裏切るご提案(いい意味で)と、他者(他社)を圧倒するクオリティ(良質)を約束し、あなたにも私にもハッピー(幸せ)を約束し、サプライズ(驚き)パイオニア(先駆者)を目指しています。

1965年神奈川県藤沢市生まれ。亜細亜大学経営学部卒業。(野球部)
東急リバブル株式会社に入社し、不動産売買仲介業務を経て、その後父の経営する飯島興産有限会社にて賃貸管理から相続対策まで不動産に関する資産管理、売買仲介、賃貸管理を行う。
コラムでは不動産関連の法改正、売買、賃貸、資産管理について、実務経験をもとにわかりやすく発信しています。

●資産管理(相続・信託・後見制度)につきましては、こちらをご参照ください。

●ご売却をご検討の方は、こちらをご参照ください。

●賃貸をご検討の方は、こちらをご参照ください。

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