■「解除」と「解約」の違い
賃貸物件を退去される場合に提出を求められるのが解約通知書(退去届)。
賃貸借契約を終了させる手続として、「解除」による場合と「解約」による場合があることをご存じでしょうか。
賃貸借契約の終了は、解除による場合と解約による場合があります。
原則として、当事者に義務違反がある場合には解除、双方に義務違反がない場合は解約となります。
■解約とは何か
今回は、解約通知書をテーマにしていますので賃借人から見た「解約」についてご説明します。
(1) 期間の定めのない賃貸借契約
期間の定めのない賃貸借契約とは、当初の契約時に期間を定めなかった契約です。
※法定更新(借地借家法第26条)された賃貸借契約も含みます。
期間の定めのない賃貸借契約の賃借人は、いつでも賃貸借契約を解約することができます。
ただし、賃借人が解約の申し入れをした場合でも、賃貸借契約がすぐに終了する。ということではありません。賃借人が解約の申し入れをした日から3か月が経過することによって終了することになります。(民法第617条第1項)
(2) 期間の定めのある賃貸借契約
期間の定めのある賃貸借契約においては、賃貸人と同様、原則として契約期間中に賃貸借契約を解約することができないのが原則です。
しかし、賃貸借契約書に賃借人に不利になることから期間内解約をすることができる旨を合意した特約(解約権を留保する特約)を盛り込んでいることが多いはずです。
この期間内解約をすることができる旨を合意した特約があることにより契約期間中の解約が認められるのであり、賃借人による期間内解約をすることができる旨を合意した特約がない場合には、賃借人が賃貸借契約を中途解約する権利はないことになります。
以上が簡単な説明となりますが、「解約」についての説明です。
■解約通知書とは何か。
解約通知書とは、賃借人が賃貸借契約を解約する場合の意思表示となる書類です。
ここで気を付けていただきたいことは、一度行った解約の申出の取り消しは難しいと考えた方が良いということです。
退去予定日までに解約をキャンセルできるのでは?
と思う方がいるかもしれませんが、通常は解約申出をした時点で賃借人側は新たな入居者の募集を始めます。これは、空いた状態にして遊ばせておいては収益にならないからです。
新たな入居者が決まった場合、その方は引越し手続きなど様々な手続きを行って解約の申出を行った賃借人の退去を待っている状態です。
解約の申出を行った賃借人が解約をキャンセルしたい、と言っても「はい、そうですか。」では済まないのが現実です。
■解約通知書は必要?
解約通知書は、法的に義務付けされている書類ではありません。しかし、ご説明したとおり、解約通知書を提出せず、口頭などで解約の申出を行うことにより、口頭で処理した当事者間の言った、言わない、の議論となってしまいます。まして入居者募集を行う際、その問い合わせをいただいた方に実際に内見可能な日、入居できる日を説明などできるわけがありません。
このような理由により解約通知書の提出を求められる場合が多いはずです。
解約通知書が必要な場合には、賃貸借契約に記載され、契約時に解約の手続きとして説明があります。
また、期間の定めのある賃貸借契約であっても解約通知書は必要です。理由としては、期間の定めのある賃貸借契約であっても賃借人保護の観点から契約が契約期間によって終了することはありません。そのため、期間の定めのある賃貸借契約であっても解約通知書は必要となります。
※普通賃貸借契約の場合、定期賃貸借契約などの普通賃貸借契約以外の場合は説明がことなります。
■解約通知書の提出期限
一般的な建物賃貸借契約書は、居住用建物の場合は1~2か月程度、事業用建物の場合は6か月程度の予告期間をもって、賃借人が賃貸借契約の解約申入れをできる旨の条項が多いはずです。提出期限は、賃貸借契約に記載されていますので必ず確認しておいた方が良いです。。
■解約通知書の提出方法
解約通知書の提出は求められても、提出方法が指定されていることは少ないようです。問題なのは、キチンと賃貸人、不動産管理会社に受け取ってもらう、ということです。
不動産管理会社は営業時間は定められており、「時間内に間に合わないから郵便ポストへ入れておこう」と考えがちですが、万一郵便ポストから紛失してしまうことも考えられます。直接、渡す方法を考えた方が良いです。
■まとめ
今回は、「解約通知書」について簡単にお伝えしました。「法律行為」って怖い。と思われがちですが、賃貸人も不動産管理会社も柔軟に対応してくれるのが実情です。できないことは理由を説明してくれますので、万一が起きた場合には、早めに賃貸人や不動産管理会社に連絡をすることです。
■記事の投稿者 飯島興産有限会社 飯島 誠
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